第二十三話
嘉乃は、
清原王と嘉乃の後から、
音楽が鳴り、
本来はこの場で文字をしたためるのが習わしだが、病であるため、長歌は予め書かれ、用意されたものだった。
遊びたり
春べには花咲きをりて
秋されば
その声は弱弱しく、ときに掠れ、誰もが最後まで詠唱出来るのかと、不安になるほどだった。しかし、無事に詠唱は終わり、その場からは安堵の声が漏れた。
次は清原王の番だった。
清原王は美しい白い和紙に、筆を滑らせた。そして、反歌を詠唱する。
よく通る声が響いた。
心に通る、その言の葉。
それは天にも届き、天からは光が射した。
清原王の
見ると、
清原王の
「
嘉乃は、月原が清原王だと知ったとき、彼のさみしげな様子の理由が、分かったと思った。皇太子としての重圧と、責任感の強さと生来備わった優しさ――この方こそ、今までどれほどの苦労をしてきたのだろう?
「いいえ、清原王。あなたと共にいられるのなら」
嘉乃は優しく微笑んだ。
「
「……はい、……月原さま」
「嘉乃。――愛している。あなただけだ」
「月原さま。わたしも、あなただけ」
もう、家族とも会えない。――だけど、いい、これで。
わたしはこの人と生きていくのだ、と嘉乃は思った。
清原王は嘉乃に口づけをした。
嘉乃は清原王の唇を指をぬくもりを感じながら、目を閉じた。
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