第9話 神巫まなかの想い①
俺とまなかのお母さんはまなかの病室に入った。
「あ、お母さん。今日は晴人と一緒にきたの?」
「そう。さっきすれ違ってね、一緒に行こうって話になったの。それでねまなか今日は大事な話があるの」
その言葉を聞いた後、まなかの表情が一気に暗くなった。おそらく何を話されるのかおおかた察したのだろう。だってまなかの体のことはまなか自身が一番わかっているのだから。
「なに?」
「あのねまなか、落ち着いて聞いてね」
「うん」
「まなかの人生はもう長くないみたいなの。もって20歳行くか行かないくらいだとさっき医師の人に言われたの」
「そっか、教えてくれてありがとうお母さん。晴人もその話一緒に聞いてたの?」
「うん、聞いた。まなか聞いていいか」
「なに?」
「なんでそんなに冷静でいられるんだ?簡単に言えば今まなかは余命宣告されたようなものなのに」
「自分の体のことは自分が一番よくわかっているからね。痛みを感じる頻度が少なくなってきたあたりからなんとなく多分私は長く生きられないのかなって察してた。でも20歳迎えられるかわからないって言われたらちょっとショックかな。正直もう少し長生きしたかったなって思ってるよ」
まなかは暗い表情をしつつも笑顔で俺の問いに答えてくれた。そしてまなかはこう言葉を続けた。
「晴人くん、今まで通りお見舞い来てくれないかな。私の寿命が尽きちゃうまで」
「当たり前だろ。行くに決まってる」
まなかは俺の言葉を聞いて嬉しそうに笑った。だが俺はそれをみてもう命が長くないのになんでそんなふうに笑えるんだと思っていた。まなかがさっき俺の問いに答えてくれていたが俺はまだ納得はいっていなかった。ただまなかの話を聞いて俺はまなかのために今後も尽くしていこうと決めた。
みんなが帰った後、私はなぜか勝手に涙を流していた。あれなんで涙が止まらないんだろう。ずっとわかっていた。自分がこの先の人生長くないこと。体が不自由になっていく感覚も全部わかっていた。なのにいざこうやって本当に断定されるとこんなに辛いことなんだと私は思い知った。私は今後どうしていこう。どうやって二人に接していこう。晴人にはさっき咄嗟にあの返答をしたけれどちょっと強がっていた部分もあった。本当は死ぬのは怖い。死にたくないとすら思う。でもしょうがないと思ってしまう自分もいる。正直私の心はごちゃごちゃだった。でも一つだけわかっていたことがあった。私は晴人が好きで、もっと晴人とお話がしたい、もっとたくさん遊びたい。そう思っていたことだった。
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