第16話

フラン「えっ?一織ちゃん?」


一織「とぼけても無駄ですよ、フランさん。あなたが、今回の殺人事件の真犯人なんですよ」


フラン「ちょ、本当に何言ってんの!?」


私は、ふざけたことは言っていないつもりです。フランさんが犯人だという確証が、心の奥にあったのです。とは言っても、証拠の一つもないのにそんなことを言われて、簡単に認めるような人はあまりいないと思いますけどね。


葉月「どういうことだよ…。なんでフランさんが犯人だっていいきれるんだよ!」


カンナ「そうだよ!フランが人殺しなんてするわけないでしょ!」


フラン「二人とも…」


カンナさんも葉月さんも、フランさんを庇ってしまいました。フランさんとは仲がいいみたいですし、犯人だと思いたくないというのも当然のことでしょう。


そんな人たちの前で犯人であるという事実を突きつけるのは心苦しいのですが、私にとって、探偵の役割というものは果たさねばならないものなのです。特に、今回のような殺人事件では、被害者の方が報われない結末も起こりうるので。


涼「一織さん、どうしてフランさんが犯人だって思ったんだ?」


竜二「は!?お前はそいつの言うことを信じるのか!?」


涼「信じるか信じないかの問題じゃない。仲間が三人も殺されたんだ。あんなクズの集まりでも、確かに仲間だったんだ。だから、犯人の正体を掴みたいってだけだ」


一織「涼さん…。分かりました。それじゃあ、今からお話ししましょう」


フラン「待って待って!勝手に私が犯人だってことにしないでよ!」


一織「…フランさん。もう諦めてください。私は、今からあなたが犯人であるということをさらにはっきりとさせていきます」


嫌だ。私だって信じたくない。優しかったあの人が犯人だなんて、嘘であってほしい。そんな気持ちでいっぱいでした。しかし、そんなことに甘えてはいられないのです。事件の真相を暴くことは、他でもない、探偵の私に課せられた使命なのです。


そして、私は、フランさんの部屋から持ってきたものを見せました。


純「一織さん?なんだそれは」


一織「これは見たまんまのペットボトルですよ、純さん」


純「ペットボトル?それがどうしたんだ?」


一織「このペットボトルがどこから持ってこられたものか、分かりますか?」


カンナ「え?一織ちゃんのものじゃないの?」


一織「もし、これが私のものなら、こんなことはわざわざ聞きませんよ。それだけ、大事な証拠なんですよ」


葉月「もったいぶらないで教えてくれよ、それがどうフランさんが犯人だってことに結びつくんだよ」


一織「そんな大したことではありません。ただ、『フランさんの部屋にあったペットボトル』を持ってきたというだけですよ」


フラン「…ッ!?」


カンナ「入ったの!?」


一織「ドアが開いていたので、入りましたよ。そこで見つけたんです。しかも、ラベルがとってあるのに、ゴミ箱にないんですよ」


カンナ「それがどうしたの…?」


一織「つまり、これが殺人に使われた凶器の役割を担っているのです」


竜二「凶器って、それをどう使えば凶器になるんだよ」


一織「それでは、今からそのトリックを説明しますよ」


このペットボトルが使われたのは、大雅さんが殺されたときでした。私が彼の死体を見つけたとき、廊下にまで血が流れていました。しかし、目立った外傷はなかったのです。見落としていたのではなく、本当に外傷がつきにくい殺し方だったのです。


大雅さんの死因は毒殺だったのです。そして、ここからが大事なのです。それは、「どうやって毒殺したのか」ということです。ペットボトルの話をしていたので、察した方もいるでしょう。これが、毒薬を入れていた容器だったのです。


そして、これで毒殺を飲ませた後で、窓の外に残りの毒薬をこぼします。こうすれば、雨がふるということもあり、証拠隠滅ができたはずです。もしシャワーに行かなければ、私も気づいていなかったでしょう。

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