第15話

ほんの少し前まで、確かに生きていました。生きていて、話をしていました。しかし、目の前にいた彼女は、間違いなく変わり果てていました。死んだのだと、その死体を見て、すぐに理解しました。


それは、他の人たちも同じでしょう。それほどまでに、私たちの目に入ってくるものが、残酷なものだったのです。彼女の体がバラバラになっていないことは、本当にせめてもの救いだったのでしょう。


そのような姿のめいさんの方へ、涼さんは駆け寄りました。本当は、まだ生きているのだと信じたかったのかもしれません。しかし、そんなことをしても、かえって現実を突きつけられるだけでした。


涼「なあ、めい!しっかりしろよ!めい、めい!」


一織「涼さん、残念な話ですが、めいさんはもう助からないと思います」


涼「そんな…どうして…」


こんな悲しんでいる人がいるすぐそばで告げていいことなのかは分かりませんでしたが、ずっと黙っているよりも状況が良くなると思い、私は真実を告げることにしました。


一織「どうしてかは分かりませんが、確実に言えることはあります」


涼「どうしたんだ、一織さん。まさか…」


一織「そのまさかですよ、涼さん。めいさんを殺した真犯人は、ここにいるのです」


不幸中の幸いというべきでしょうか。建物内にいた全員がめいさんの死体の近くまで集まっていたので、話をすることは簡単でした。


そして、一度、一階まで降りてもらいました。降りたのを確認して、証拠となるものを回収しました。そして、私も急いで一階の方まで降りました。当然ですが、その途中でめいさんの死体を、更に近い距離で見ることになりました。視界に入ってくる大量の血が、余計に悲惨な印象を与えました。


やはり、私は犯人を許せない。そう思っていました。それだけ、私の心の中には犯人に対する怒りが込み上げていたのです。どうしてそこまで彼女のことを大事だと思ったのか、さっぱり分かりませんでした。さらに言えば、一生分からないことでしょう。


どうしても見ていられなくなり、その死体を、部屋の中に隠しました。現場が崩壊してしまうので捜査としてはいけないことなのではと思いますが、この時点で犯人もトリックも検討がついていたので、必要ないと思っていました。


そして、遅れて一階に着きました。誰かも分からない殺人鬼に怯えて、互いに顔も合わせられなくなっていました。当然、会話なんてものはなかったです。どう考えても状況を悪化させるだけですが、私は、その沈黙を破りました。


一織「今から、皆さんに大切な話があります」


カンナ「どうしたの?そんなにかしこまっちゃって」


竜二「あんたは話を聞いてなかったのか?そこの女が犯人を見つけて、今からそいつを俺たちの前で晒すんだよ」


言い方…。あながち間違いでもないですが、そこまで酷い言い方しなくてもよくないですか?


カンナ「じゃあ、教えてよ、一織ちゃん。誰なの、犯人は」


フラン「そうだね。どうせなら、私も早く知りたいかも…」


一織「フランさん…カンナさん…」


どうしましょう。事件の真相を伝えようにも、ここで、あの人たちの前で、そんなことをしていいのか。そんな疑問が浮かび上がってきます。真相を伝えるべきだとは思いますが、そんな勇気がなかったのです。そんな私を励ましてくれたのが、純さんでした。


純「一織さん、あんたがそんな調子でいいのか?あんたは真犯人が分かっている。本当に探偵を名乗るなら、そのことを黙ってはいけないんじゃないか?真実を告げるというのも大切なことだ」


一織「純さん…。そうですね、悩んでいたところで、どうしようもありません。私は覚悟を決めましたよ」


純「よし。じゃあ、ここからは頼んだぞ」


一織「はい。任せてください」


月影 一織、自分のことを信じるのよ!


一織「今から、皆さんに事件のことを話します。犯人は、皆さんの中の一人の人物です。その人物は、フラン研究所という建物と、それにまつわる人造人間の噂を利用して殺人事件を起こした人物です。そして、その正体は、『腐乱研究所殺人事件』の真犯人、『人造人間』の正体は、あなたですよ!」





















フランソワ・オクトバー!

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