第4話 大魔法×2・1
アルフィムとジュニス、2人ともに掛け声を発して、その場にたたずむ。
どちらも自分の周辺に魔力を集めているようだ。ただ、それだけに集中しているわけではない。お互いに視線を向けて、どう動くか思案しながら魔力を集めている。
「ど、ど、ど、どうなるの!? めっちゃやばそうなんだけど!」
シルフィ・フラーナスが焦った声を出す。
魔術学院学長を母にもつファーミルが説明を始める。
「……2人ともとんでもない魔道力を持つことは分かりましたから、まず、どの性質の魔道を使うかによりますね」
2人が同じエレメンタルを呼び出した場合は場にある魔力の奪い合いとなるから、この場合は集積力の高い方が圧倒的に有利だ。
もし、違うエレメンタルを使う場合、重複はしないから、互いの魔力量やその使い方が鍵となる。
相手が対処できない方法で使った側が、勝ちである。
30秒ほど経過したが、どちらも変わることなく様子を探っている。
お互いの魔力集積に干渉はないようで、ということは、両者のエレメンタルは違うようだ。
「どちらが勝つにしても、この周辺は二年くらい極端な環境をもつ空間になりそうですね」
のんびりした様子のファーミルが一歩、二歩と下がった。
ツィアも素直に従うことにした。
どちらも引くつもりがなさそうだし、とんでもないことをしでかしそうである。
先に動いたのはジュニスの方だ。
「ここまでの力を貯めたのは初めてだ。手加減はできん。悪く思うな」
舌なめずりをして、アルフィムの方に右手を向ける。
一方のアルフィムは、真剣な視線を向けながらも笑みを浮かべる。
「大丈夫よ。手加減したら、後で後悔すると思うわ」
ジュニスは「フッ」と微笑を浮かべる。
「行くぞぉ!」
アルフィムに向けた右手が赤く輝きだした。掌を上に向けた途端、大きな鳥のような炎が浮かび上がる。
「うわぁぁ!? 何なの、あれ!?」
シルフィが叫んだ。
その炎の鳥がまっしぐらにアルフィムを目指す。
「あんなのよけられない!」
シルフィが叫ぶとともに轟音があがり、直径20メートルはありそうな炎の柱が空まで届くのではないか、というくらいに浮き上がった。
「まだ終わりじゃないぞ!」
ジュニスの叫び声とともに二羽目、三羽目と同じ大きさの炎が同じ場所に直撃し、炎の柱が更に高く伸びていく。
四羽、五羽、六羽まで激突した頃には近くの山頂を超えるのでは、というくらいまで炎の柱が浮き上がった。
「あわわわ、お姉ちゃんが、お姉ちゃんが……」
シルフィが震える声を出す。
さすがのツィアも足下に震えを感じる。
最初の直撃から二分以上経過している。さすがに柱というような炎ではなくなったが、まだかなりの高さで燃えている。
とんでもないだろうと思っていたが、予想以上だ。
(こんな奴が戦場に出たら、一発だけで戦況が変わってしまうな……)
一つの鳥で数百人は吹き飛ぶだろう。全てが直撃したら3000人ほどが影響を受けるかもしれない。
(これはさすがに……)
直撃した地点では燃え跡すら残っていないのではないか。
シルフィやファーミルはもちろん、相手側にいるルビアと呼ばれた女性を含む面々も顔面蒼白となっている。
(ここまで魔力を使えば、無理は効かないはずだ。この場で仕留めた方が、ビアニーのためにはなるのかもしれない)
ツィアはシルフィを見た。この状況ならアルフィムの仇討ちということで一致団結できるだろう。
「おっ、仲間の仇討ちか? いいぞ、やろうぜ」
ジュニスも気づいたようだ。息は大分荒いし、両膝に手をついていたが、姿勢を直してダガーをクルクルと二回ほど回した。
「陛下を守りなさい!」
ルビアも叫んで、兵士達が思い出したかのように高台から降りてジュニスのところに走ろうとするが。
「うん……?」
誰ともなく声をあげた。ひらひらと白い羽毛のようなものが空を舞っている。
「乱入はまだ早いわよ。私とジュニスの決着はついてないんだから」
炎の中から、凛とした声が聞こえた。
「お姉ちゃん!」
シルフィが喜色を露わにし、ルビアは「そんなはずは!」と叫んだ。
ツィアもルビアに同意した。あれだけの炎が直撃したのに、生きているということ自体が信じられない。
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