4.卒業試験と長き友情
第1話 卒業試験・1
7月20日、朝。
アルテイラが緊張した面持ちで教室に入ってきた。
とはいえ、その雰囲気は教室内も変わらない。サルキア、ネミリー、セシエル、エリアーヌ、ジオリス、エディス、コスタシュ。全員、緊張した顔つきだ。
「それでは、これから卒業試験を行います。既に説明している通り、午前中に筆記試験を90分、午後は実技試験を行います。それぞれ100点満点ではありますが、特に優秀と認められたものについては150点までの加点がありえます」
アルテイラはそこまで言って全員を見渡す。
「その成績によって席次を決めることになりますが、二つ合わせて60点に満たない者については一週間の補講が課せられることになります。そのような成績になる人はいないと思いますが、気をつけてください。また」
視線が険しくなる。
「これも、そのような人はいないと思いますが仮に何らかの不正行為を行った場合もは0点になりますので、くれぐれもそのようなことはしないようお願いします」
そこまで説明すると早速、職員が試験用紙を持ってきた。
「それでは、これより試験用紙を配布します」
宣言して、用紙が配られる。
とはいっても、7人しかいないのであっという間に配り終わる。
「それでは、開始」
アルテイラの言葉とともに、運命の試験が幕を開けた。
「……3、2、1……終了です」
時間が経過し、職員達が用紙を回収する。
「それでは1時間の休憩とします。その後、解答と結果の発表を学長の方から行ってもらいます」
この後の予定を告げ、アルテイラが職員とともに部屋を出た。
たちまち、ふう〜という溜息が教室内に広がった。
「どうだった?」
エリアーヌがエディスに問いかける。
「半分くらいはできたと思うけど……」
「じゃあ、実技で何かやれば大丈夫ね」
「だと、思う……」
自信はないようだ。
様子を聞いていたセシエルがサルキアに尋ねる。
「サルキアは?」
「多分ミスはないと思うが」
「おぉ、さすがだね」
「そういうセシエルはどうなの?」
エリアーヌが続けて尋ねる。
「まぁまあ出来たとは思うけど、分からない」
お互いに出来を聞き合ううちに時間が流れていく。
きっちり1時間経ち、アルテイラがレイラミールとともに戻ってきた。
そこからおよそ30分間、問題の解答と配点、採点基準について説明をするが、聞いている側は解答よりも自己の点数が気になり、心ここにあらずという様子だ。
「それでは成績の方を発表します。まず残念ながら最下位だったのが…」
チラチラと全員がエディスを見る。
「エディス・ミアーノ。56点」
「56点……」
エディスはぼんやりと繰り返した後、飛び上がる。
「じゃあ、あと4点でいいのね!」
「ま、まぁ、及第という点では……」
「やった! それなら余裕だわ」
エディスは狂喜しているが、レイラミールはもちろん、残りの6人も反応に窮している。
エディスの目標が落第回避で、それがほぼ達成されたことは望ましい。とはいえ、予想通りとはいえ、最下位相手におめでとうとも言いづらい。
レイラミールも放置することにしたようで、発表を続ける。
「6位、ジオリス・ミゼールフェン。77点」
6位との差が21点あることでも、ますますエディスの点を評価し辛い。
「5位、コスタシュ・フィライギス、84点。4位、エリアーヌ・ピレンティ、87点」
発表のペースが早くなる。
「3位、ネミリー・ルーティス、94点」
ネミリーは少し悔しげだ。
「あぁ、セシエルに負けたかぁ」
「まだ実技もありますから、逆転は可能ですよ。2位はセシエル・ティシェッティ、96点」
「げ、じゃあサルキアは97以上あるの?」
「そうですね。1位はサルキア・ハーヴィーン、お見事、100点満点でした」
6人しかいないが、どよめきのようなものが上がる。
「さすがサルキア、凄いなぁ」
「いやいや、セシエルも凄いじゃないか。たった4点差だぞ?」
「でも、実技では僕に勝ち目がないからね」
ネミリーも頷いた。
「サルキアなら200点取れるかもしれないわよねぇ」
「200はヤバいな。兄上の記録を更新して、留学生部門ナンバーワンだ」
記録更新という言葉にはサルキアも照れ笑いを浮かべる。
「まぁ、頑張ってみるよ」
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