第3話
そんな彼に話し掛けてくる人物がいた。
「今日はノリ悪いね」
華が心の中で女狐と呼ぶ人物でキツネ顔の美人である。
「そうかな?」
「どうせ彼女の事でも考えてたんでしょ?」
「・・・」
「無言は肯定と
図星ではあるが答えたくはなかっただけである。
実に勘の良い女性で、
華と違い、打てば響くと言った感じであることも彼女と仲良くしている
「まぁ図星だしな、これ以上聞かないでくれると有り難い」
「OK、OK、私も傷口に塩を
ニヤリと笑い「嫌なことは忘れて、飲もう、飲もう!!」と言い彼女は彼のグラスにビールを継ぎ足すのであった。
彼が恋人にベタ惚れしているのは知っているが、人間の不満と言うものは矛盾を生む。
既にすれ違いが起こっているのかもしれない。
すれ違いは
惚れているのに隙が生まれるとか矛盾であるが、人間の心は矛盾で成り立っている。
後はどうやって不満を解消するかで矛盾と仲良く付き合っていくのである。
まだまだ様子見だと思うが、彼の方から恋人の愚痴を言うようになれば・・・
彼の事を注視していなければならないな。
「いつか彼を私の物にする」と彼女は心の中でそう誓うのであった。
いや~いい汗
嫌なことがある時に体を動かすと発散できると聞いた事があるが本当に発散できる。
合気道の道場に行き、久しぶり師匠と組み手をした。
師匠は「もうお前に教えることなどない!!」と言いつつも相手してくれるし、五分五分の戦いで実に有意義な時間を過ごせる。
道場を出る前にスマホを見ると
もう次の試合が決まるとか、オラ、ワクワクするぞ!!
「次の対戦相手はデビュー戦が鮮烈だったので中々決まらないかも」とか言われていたのでこんなに早く決まるとは思っていなかった。
次の日、ワクワクしながらジムへ行き、会長と試合について話す。
「対戦相手は
「如何いった方ですか?」
「そうだな~レスリング出身で、キックボクシングもしていたらしいからオールラウンダータイプの選手だな」
「あ~私と似た感じですか?」
「お前は寝技とか苦手だろ?」
「苦手?苦手と言うより好みじゃない?」
「好みじゃないって如何いう意味だ?」
「そのままの意味ですよ、好きか嫌いで言うと嫌いだけど出来ない訳じゃない」
「どの位のレベルで出来るんだ?」
「え?練習で見てますよね?」
「いやいや、お前の寝技って絞めとか無くて関節極めてうちの指導員を瞬殺するから寝技と言う寝技見てない様な気がするのだが?」
「絞めとか体力使うじゃないですか~関節極めての方が楽ですよ?」
「それはそうなんだが・・・」
「え~と、柔道の
「知ってるも何も業界最強女子だろ!!」
「その人たちと立ち合えるレベル?」
「マジか・・・」
私、寝技嫌いなんだよね~レスリングは殆ど寝技をするような競技スタイルなので「私には向かない」と言ったのに、嬉々として私に無理やりレスリングさせるんだよね~あの2人。
合気道って試合無いから柔道とか空手してるんだけど、「私は立ち技で勝負を決めるの好きなんでレスリングちょっと・・・」て言ったら「合気道って寝技ないんだっけ?まぁ柔道してるんだし、大丈夫、大丈夫!!」て無理やりだよ酷くない?
今度あの2人の調整をする時に会長に試合を見せることとなった。
丁度、
「今日はよろしくね~」
「お久しぶりです、今日は同伴者いますけど大丈夫ですか?」
「あ~総合始めたんだってね」
「そうなんですよ~会長が私の寝技の実力見たいからって言ってて」
「成る程ね・・・まぁ見れば解るしね、OKだよ」
確かに
本人が寝技を嫌っていたので勝手にこっちが苦手と判断していたが、「苦手ではなく好みじゃない」の意味が
本当に好みじゃないだけで、苦手ではないのである。
嫌、多分、気のせいではないだろう。
その証拠に国際大会でもあんなに簡単に相手を翻弄している
「今日は良い調整が出来たよ、今度ご飯御馳走するからね」
「お誘い待ってますね」
練習後に今度の相手はレスリング出身でキックボクシングも
相手が気の毒かどうかは知らないが、向こうの方が体重は重いし体格も大きいので有利だと思うが、私としては相手し易いサイズだと思っているので問題は無いだろう。
「青コーナーより
あ・・・また間違っている。
「会長、また間違われました」
「大丈夫だ、リングネームだから間違っていない」
「はぁ?」
どうやらデビュー戦は間違われたのであるが、今回はリングネームとして登録したので間違いないらしい・・・
リングネームってプロレスだけだと思ってたよ!!
後から詳しく聞けば、格闘家が格闘技活動をする際に名乗るニックネームみたいなものらしい。
「気にするな」と会長は言うが、名前負けしないかな?と不安になる。
その前に、何の相談も無く勝手に私のリングネーム決めないで欲しいよ、本当にもうプンプンだよ!!
相手を見るとデビュー戦で鮮烈なOKをした事で
ゴング前から体勢を低くしているので狙いは見え見えである。
「カァン」とゴングが鳴ると一気に突っ込んできた。
体格も相手が上なので寝技は相当に相手が有利なはずなのだが、どう動いたのかはよく解らないが華が相手の背後を取り大技のジャーマンスープレックスを相手に放ちまたも秒殺してしまった。
対戦相手は今回も白目を剥いているのでカウントすら無しでレフェリーが華の勝ち名乗りをしていた。
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