月の海
月にも海があるのですって。地球の海と違って水を湛えているわけではないのですけれども、いまこうして海面に月の光りが柱のように反射して、その先の月にも海があると考えたら、なんだかとてもロマンティックな香りがしません?
彼女はそう言って笑う。
天国があるとしたら、そこは月の海のように静かで荒涼としたところだと僕は思う。月はやさしい。自ら輝く恒星と違って、太陽の光を反射するだけの衛星は、僕らに慈愛に満ちた顔を向ける。
もしこの、海面の光の柱を渡って、彼女とふたりで月へ行けたなら、どんなにいいだろう。
ね、聞いてらっしゃるの? いやだわ独りで喋っているのは。……わたくしも天国は月のような冷たいところにあるのだと思っています。だってそうでしょう? やっと騒々しい現世を抜けてきたのに、暑苦しいのはいやです。静かな天国を求めて、我々は生きているのでしょう、違うかしら?
ムーンピラーを駆け上がっておいでほら 月の海は静かなパライソ
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