100万回生きたねこ
「わたしね、うまれてくるまえにねこだったんだよ」
妹にこんなことを耳打ちされた。生まれてくる前の話を子供がしてくれるということは何度か文章で読んだが、相場は生まれてくる前にどこにいたとか、神様が『どこのお家にするかね?』と尋ねてくれていまのお母さんを選んだとか、そういう話だと思いこんでいた。
「ねこだったの? どんなねこ?」
「おにいちゃん、ママにはないしょだよ??」
妹があんまり真剣な顔で迫るので、その気迫におれは思わず何度も頷いた。
「いっぱいいろんなねこになったよ。おうさまのねことか、おそとのねことか、こねこのときにしんじゃったときもあったよ」
妹は熱弁する。おれはまるで100万回生きたねこみたいだと思った。あと何回生きられるんだろう? なんで今生はヒトなんだろう? 純粋な好奇心がむくむくと心に湧いた。
「どうしてみーちゃんは、いま人間なの?」
「うーん、たまにはにんげんになってみたかったの」
「あと何回生まれ変わりたい?」
「えーっと……しぇんかい!!!」
妹は覚えたばかりの1000という数字を使いたがった。本当にしても空想にしても、なかなか面白い。
それなら、兄ちゃんもあとの1000回をみーちゃんの兄ちゃんとして生きてみたいかもな。そう思った。
妹は100万回生きたねこ。あと1000回は生きられるらしい。
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