月光

憎い人に呪いのマフラーを編むという呪い方があるらしい。月のきれいな晩に月に照らされながら一連の編む作業をするのだという。


編み物という趣味を得るまでは、念がこもりそうでエグい呪い方だと信じていたが、光源が月光のみなのはあまりにも暗いし、編んでいる間は正直贈る相手のことは念頭にないので、手編みに念がこもるというのはチープな俗説に過ぎないと思う。


それで、昔はそうやって殺してやろうと思っていた相手が、最近ひょっこりと顔を見せにきた。これまで影を潜めていた憎悪が、ふわりと煽られて心に満ちるのを感じた。ドライアイスの煙が風に煽られてふわっと大きくなるのに似ていた。


夢にまで出てくる貴方は、いつも冷たい月光を浴びて所在なさげに佇んでいる。わたしはそんな貴方の首を絞めて殺してやりたいのを抑えつつ、真っ黒な百合を一輪手渡す。


昨夜で五日目の晩。七晩で死んだりしてくれたら、面白いのだが。



月影の冷たい光に照らされて佇む貴方に憎悪の花を

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