蒼い静脈
「泣いているの?」
囁かれてわたしはびくっと肩を震わせた。あなたに抱きすくめられると、いつも涙がにじんでしまう。なぜかはわからない。嬉しいのか、切ないのか。
女学校でのあなたは太陽のような存在で、誰もが焦がれ慕っているのを肌で感じる。あなたのまなざしを独り占めしたいから、わたしもそれなりにいろいろな手管を使って、同級生に反感を持たれているのもわかっている。けれど、結局はあなたに抱きしめられるのはわたしであって、みんなはやっかみでわたしをいじめているのだ。
わたしは、嬉しさと切なさと、不思議な虚しさを感じながら、あなたに涙を悟られまいと、顔をあなたの肩に埋める。あなたはわたしの涙を知って、振りほどけない強さでわたしの顔を持ち上げて、頬に伝う涙を舐め取ってくれる。いつもそれがこそばゆくて、嬉しくて。これのために涙を流しているのかもしれなかった。
あなたは太陽のようだけれど、色が白いので腕の静脈の蒼さがきわだつ。その白い腕にわたしの平凡な腕をとられ、わたしたちの影は重なる。
わたしの涙がどんな味なのか、あなたは教えてくれない。罪の味がするのだろうかと、わたしは邪推する。
甘やかな君の涙を舐めとって重ねた肌の蒼い静脈
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