心中

僕の自慢は、貴方とお揃いのお腹の傷痕だった。貴方は腸閉塞の手術の痕、僕はお腹に包丁を刺されたときの痕。一方はれっきとした医療行為だが、僕の傷もすぐに病院で縫合されたので、ぱっと見ほんとうのお揃いの傷と思える。


僕の元カノがものすごいメンヘラで、さっき言った包丁の事件も彼女によるものだった。そんな女の子とやっとの思いで別れて、すっかり女性不信になった僕に優しくしてくれたのが貴方だった。貴方は僕の来歴を真摯にきいて、同情して、僕のすべてを愛した。同性だとか、少し年が離れているとか、そんなことはまったく気にならないほど、僕も貴方に溺れた。


お揃いの傷があるのは、初めて一緒に銭湯に行ったときに気がついた。僕に包丁の傷があるのは周知の事実だったが、位置も大きさもまったく同じと知って、にわかに盛り上がった。

「心中に失敗した同性カップルみたいだね」

と貴方は苦笑いしたが、僕はその言葉に踊り始めそうなくらい喜んだ。

「いつまでも一緒にいようね、ってな」

僕が女の子みたいな声でふざけて呟いたら、心底気持ち悪そうな顔で震えた貴方だったが、どこかまんざらでもなさそうに見えたのは、気のせいだったろうか。



いつまでも僕の貴方でいて欲しい だから一緒に傷を絡めて

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