過ち
君と僕の立場が変わってしまったのはいつからなのだろう。気付いたら僕は処刑される者で、君はレジスタント勢力の主導者だった。
僕らは幼馴染で、よく剣術ごっこをして遊んでいた。君も僕も宮殿育ちで、袖口や裾にあるフリルを引きちぎってまで飛びまわって遊んでいたっけ。
僕が王太子になったのを君は喜んでいた。低い王位継承権を持ち上げたのは、国に流行った疫病だった。
「ただ親戚の不幸がもたらした、僕にとっても不幸なことなんだ……」
とこぼすと
「そんなこと言うなよ、俺たちでいい国が作れるじゃないか」
と君は僕を勇気づけた。いつもいつも、この国をいい国にしようと、僕たちは議論しあっていた。
いまの王は、僕の大伯父で、国策に対してまったく興味のない、贅沢のみを追求する良くない君主だった。民衆の嘆きも聞かず、疫病で王族まで死んでいったのに、なんの手も打たない駄目な王だ。良くないこととはわかっても、早く死んでくれやしないかと、僕が王になったら改革をして国を変えられるのにと、思うこともままあることだった。
そんな中、レジスタント勢力が猛烈な勢いで革命を始めた。当然の流れだと思った。彼らは、腑抜けた王族を滅ぼし、彼らの国を作るべく、政治に明るい君を主導者に戴いて活動を激化させた。君はお飾りのリーダーではあったが、王への不満は民と同じくらい募らせていたので、前向きではあった。
「民は王族を皆殺しにしなければ気が済まないらしいが、お前だけは逃してやるから」
そんなことは無理だと、僕にはわかっていた。王の身内、しかも王太子を見逃すはずはない。いくら改革に前向きな王太子だと君が説いたところで、王族は王族。滅ぼすのが当然だ。
ついに王が暗殺された日、僕は玉座の間で捕らえられ、君の申し訳なさそうな顔を正面から見た。
いつから間違えたのだろう。……きっとそれは生まれる前から。
“僕達はいつから間違えただろうか” 後ろ手に縛られ君の声を聞く
僕達は、なにも間違えちゃいないよ。ごっこ遊びがやめられないだけ。
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