洗い髪
入浴するのがこの頃つらい。健康な人にはあまり理解しがたい感覚だと思うが、一日動き回って汗ばんだことを自覚していても、夜になって風呂に入るタイミングになると、すべての気力が萎えてしまって、リビングのソファに身体を沈めてしまう。
自分だってべたつく身体のまま布団に入るのは不快だし、周りの人にくさいと思われるのは当然嫌なのだが、どうしても服を脱げない日がある。
入浴だけじゃない。着替えるのだって、顔を洗うのだって、歯を磨くのも、トイレに行くことさえ、めちゃくちゃ頑張って気力を絞り出さないとできないのだ。
末期だとわかっている。けれど、こんなことだけで医者にかかるのは大袈裟に感じるし、ただ最近疲れがたまっているのかもしれない。なにより「それはただの怠惰ですね」と半笑いで告げられるのが、とてつもなく怖いのだ。
今朝は休日なので、頑張って風呂に入った。気力をいま使い果たしても、休日なら寝ていられるから。
濡れた髪を手で梳りながら、みじめな気分になる。シンとした朝の脱衣所でひとり。こんな簡単なことも、できなくなるなんて。
洗い髪荒く梳いては手を止める ひとりきりの朝の脱衣所
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