紫陽花の鉱脈
紫陽花の花はピンクだったり青だったりする。
土壌のpHによって色が変わるらしいことは植物図鑑でうっすら知った。リトマス試験紙みたいだなと思ったのをよく覚えている。
ならば。
近頃の雨は酸性雨だと聞くが、花はこれからどんどん赤っぽくなっていくのではないか?
……もう夏の自由研究などという年でもないし、わざわざ検索するのも図書館で調べるのも少々大儀なので、そこまで知りたくて仕方ないわけでもないからいいのだが。
梅雨時期の通勤途中、柔らかな雨のなかを無意味かもしれない雨傘で進んでいくと、幼稚園のとなりの遊歩道に、紫陽花がたくさん咲いている。雨に洗われた紫陽花は小さな青い花をみっしりと集めて輝いている。別名を手鞠花とも言うらしいが、わたしにはなにか、アメジストの原石のようなものを感じられてならない。いわば、紫陽花の遊歩道は、青い宝石の鉱脈なのだ。
みずみずしい青の鉱脈が赤っぽくなっていくのは個人的に好ましくない。
このままの色の遊歩道を、百年後の人間が見ることができたら……。
自分らしくないロマンチックな妄想をしてしまうのも、梅雨の魔法なのかもしれない。
やわらかな水無月の雨に洗われて輝けるかな紫陽花の青
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