第6話 リリース直後のソシャゲに不具合はつきものだが、さすがにこれはありえないだろと思う

前書き失礼します

早くお知らせした方がいいかと思い5話の前書きにも同様のお知らせを追記してますが、1話にこの世界の世界観についての文章を少し追加しました。


読み返すのがめんどうという方のために簡単に言うと、この世界は影のモノという化け物と戦っている…そんな感じです。

のちのち本編でちゃんと触れます。

軽くは説明してるつもりで話書いてたので追加しました。

修正多くてすみません…

^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─^─


「お金の絵と…わかんないやつと…可愛くないヘルメットの絵と…まだいっぱいあるね。お兄ちゃんこれな〜に?  」


安全な場所に着いてからちゃんと説明しようと思っていたが…

見えているなら簡単に話しておくか。


そう思った俺はゲーム画面が背の低いティナリーにも見えやすいようにしゃがんだ。


「俺にもまだちゃんと把握しきれてないんだが、これはおそらく今の戦闘に勝利した事で手に入れた報酬を表示している」


「報酬!?  」


そう言うティナリーはとても嬉しそうだ。


「あぁ」


「それどこにあるの!?  この画面の中?  」


「それは残念ながら俺にもわからん…」


ゲーム画面には表示されてるけど、実際の俺の手元にはドロップアイテムは一つも現れてない。


「えぇ〜!! 」


ティナリーが残念そうに叫んだ。


「ちゃんと確認すれば案外すぐに方法がわかるかもしれんが、そういう事はこの物騒な塔から出て安全な場所に行ってからにしよう」


「わかった…じゃあ、その時はティナリーも呼んでね! 」


「あぁ、ティナリー達が戦ってくれたから手に入った様なものだ。ちゃんと呼ぶ。一緒に確認しような!  」


「わ〜い!  」


和やかにそう話していると離れたところで大きな音がした。


「っ!  指導者様!  入口の方で!  」


「あぁ、俺にも聞こえた…戦闘音っぽいな。まだ合流してない2人か?  」


「おそらく」


「だったら、警戒しつつ急いで向かおう」


「わかりました!  」


「わかった! 」




こうして急いで塔から出た俺達3人は音のした場所についてすぐ──絶望的な光景を目の当たりにしていた。


合流するはずの仲間…

水属性の魔法アタッカーのアリーシャと薬師でヒーラーのソーマの2人がそれぞれ片足と片腕を失い死にかけていたからだ。


そして…そんな2人の敵と遭遇した事でまたフラグがたったのだろう。


〈ボスとの戦いに勝利しよう!  〉


そんな絶望感しか感じない音声と共に…世界からまたしても色と音が無くなった。


チュートリアル時の時間停止世界だ。


「『勝利しよう!  』じゃねぇよ!!?  」


なんなんだこの状況!!!


合流する予定だった2人を見るとかろうじて意識を保てているのが奇跡という程の重症で、正直助かる見込みはなさそうだった。


「クッソ!  もっと早く合流していれば良かった!!  」


どうする…俺。


「見た目はゲームと同じで大型のセキュリティロボットtypeZの様だが…」


2人がボスと遭遇したのは俺がゲームと違う行動をしたからだとしても、回復役がいて死にかけてる理由がわからない。


無抵抗で殴られ続けたならともかく、ゲーム通りならアリーシャとソーマの2人がここまでなるわけがない。


と、いう事は…さっきtypeAがスキル使ってたように何かゲーム当時とは違う事が起こった可能性が高い。


うん、よし!

とりあえずこういう時は敵の情報確認からだ!


俺は戦闘中のゲーム画面の右上の『≡』を押すと、敵の情報画面を表示した。


そして、その画面を見てすぐ──


俺の目に映ったのは『メインストーリー 0-3 ベリーハード』の文字だった。


「は?ㅤべ、べりーはーど? 」


確認してびっくり。

敵の平均レベルは驚きの90だ。


「ふ…ふざけてんのか!!?  誰が勝てるんだ!?  こんなもん!! 」


俺は怒りに任せて、ゲームだった頃は『リタイア』のボタンがあった画面下部の部分を押した。

そして、そのままタイトルに戻って『お問い合わせ』のアイコンを連打した。


「どう考えても難易度設定ミスってんだろ!?  」


文句を言いながらも、これまでの経験からスラスラとお問合せ文を作成する。


ルシルのキャラレベルだけ見るなら適正レベルだろうが、装備は未強化の槍1つで他は裸。アクセサリーも当然なし。


勝てるわけが無い。


そもそも初期キャラ2人が死亡確定してるとか…もし奇跡が起こってここのボス戦で勝ててもこの先が無理!


「ほい、送信!!  」


爆速で文章を打ち込んだ俺は勢いのままにお問い合わせメールを送信した所で周りを見渡して…ふと、我に返った。


「周りが真っ暗!? 」


そうだった…俺今ゲームして遊んでるんじゃなくて異世界で命の危機なんだった…


「ん? ちょっと待て…それなら俺は今、どこにお問い合わせメールを送ったんだ…?  」


慣れた作業だったので、ついいつもの流れで何も考えずに不具合報告をした。

だが、周りが自室ではなく、何も無い真っ暗な謎空間だった事でようやく怒りで沸騰していた頭が冷えて冷静になってくる。


そして、そのまま放心していると、たった今送ったお問い合わせメールの返信がもう返ってきた。


「対応早いな…ど、どれどれ…」


───────────


ご利用ありがとうございます。

固有スキル【ラストアルカディア】運営担当神です。


お問い合わせいただきました不具合について調査をいたしました。

その結果、こちらの不手際によりクリア不可能難易度になっている事が判明いたしました。

詳細につきましては『お知らせ』ボードをご確認ください。


この度はご不便・ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。


また、お問い合わせいただきました件につきましては現在既に修正を完了しております。


最後に…

今回のお詫びとして、神聖石3000個と神からのアドバイスを送らせていただきます。


これからも引き続き固有スキル【ラストアルカディア】をよろしくお願い致します。


以下、アドバイスとなります。


-------------

今回の件での被害の復旧には、転生特典の固有スキル【リセット】をご活用ください。

こちら"枠外特別スキル"となっており発動コスト等は必要ありません。


また、【リセット】発動時に発動者に触れていた者はリセット後もリセット前の記憶を保持する事が可能です。

こちらの情報も合わせてご活用ください。


どうかこの世界をよろしくお願いいたします。


神様一同

-------------

───────────


「運営担当…一同…」


ソシャゲの運営かよ…


……ソシャゲだったわ。


さて…詳細はお知らせか。

タイトル画面でも見れるな。


俺は『お問い合わせ』の横の掲示板の様なマークのアイコンを押した。


「ふむふむ…大部分はメールでの返答と大差ないな。強いて言うならお詫びの所がなぜか石だけの表記になってるが…」


そこはまあどうでもいいや。


お知らせを熟読した所、今回の鬼の様な難易度はどうやら転生特典の処理手続き担当が楽をしようとした事が原因らしい。


一瞬『転生特典とは?  』と疑問に思ったがその先を読んでみると、これまでの違和感が全て腑に落ちた。


というのも、ゲームだった頃の初期キャラ──ソレア、ティナリー、アリーシャ、ソーマの4人。

そのキャラ達のレベルが転生特典で俺の前世の最終プレイデータと同じレベルになっていたらしい。


キャラ詳細画面をまだ開く事ができてなかったのでお知らせ見て初めて知った。


そして、そのお知らせにはその当時の詳しい状況も書いてあった。

どうやら処理をする時にチュートリアルマップである[終わりの塔]関係の所のデータから辿ってキャラのステータス等を一括で上書きしたらしい…のだが、その中に『次挑戦時のステージ難易度設定』もあったらしい。

そして、キャラデータを上書きする時にそれも一緒に一括で『最終ゲームデータと同期』してしまったとの事。

『そんな事普通あるか?  』とも思ったが、あったと書いてあるんならあったんだろう。


「起こった経緯…説明されてなお、なぜそんな事が起こるのかがわからん…」


それでも、わかってから考えてみると…

ゲーム当時俺は0-3はベリーハードまでクリアしていた記憶がぼんやりある。


なぜ起こったのかは置いといて、起こってた事そのものは納得できた。


「だが、そもそもの話…初期キャラ4人のレベルを最終プレイデータと同じにされてもと思ってしまうんだが…どの子も使ってなかったし…たぶんいいとこレベル5とかじゃないか?  」


ティナリーもアリーシャもソーマも衣装違いの季節限定の方は使ってた。

だが、通常の方の3人はずっとキャラ一覧画面で倉庫番してた。

レアリティがSSRじゃなくてSRだったってのもあるけど。


ソレアだけは無料配布でSSRだったしガチャキャラと比べても遜色ないくらい性能も良かったから使ってた。

だからレベルもちゃんと上げてた…んだが…


そのソレアは0章にいない。


なんと無駄な転生特典だろうか。処理ミスって難易度が跳ね上がっただけだ。


……いや、待てよ?


それだと、さっきティナリーが雑魚相手とはいえベリハの敵相手に普通に戦えてた事の説明つかないな。


うーん…


………


……



「あ」


思い出した。


当時…水着ティナリーガチャで大爆死した時──


『おかしい。キャラレベMAXまで強化したのに俺のティナリーまだ服着てる…』


──っていう哀愁漂うネタツイートをSNSでするためだけに、貴重な育成素材全部突っ込んでレベル90まで上げたんだ…


忘れてたわ。


「……なんにせよ、ここまで役に立たない転生特典も珍し──いや…別に【リセット】とかいう苦行の気配がチラ見えするスキルもあるんだっけ?  」


まさか俺は異世界でリセマラする事に…ウン。

そっちはとりあえず置いとこう。


未来の俺が頑張ってくれるさ。


「というか転生特典ちゃんとあったんだなぁ…」


いや、うーん…でもなぁ…絶妙に手放しで喜べないんだよなぁ。


【リセット】の方は俺が思ってる通りなら超絶大変そうなだけで有能そうだが…

初期キャラのレベル同期は、なぁ。


チュートリアルの中じゃ、転生特典で強化されたところでティナリーしか育ててるキャラいないし…


そんな事してくれるんなら、それよりも初期キャラ全員レベル1のままでいいから、その分の育成素材を別でくれた方が嬉しいんだが…


お知らせによると、難易度はゲーム当時と同じ難易度の普通のチュートリアルに戻るらしいし…

だったら初期キャラ3人はレベル1でもチュートリアル専用でレベルMAXのルシルがいるし余裕のはずだ。


「問い合わせと別に要望も送れそうだし…送ってみるか。この謎空間からの戻り方もわかんないしな!  」


あぁ、それと【リセット】とかいうスキルの使い方もちゃんと聞いとかないとな。


「そして全部終わったら詫び石で無料タダガチャだ!!  」

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