第4話 チュートリアル戦闘始まったが…あれ、2人とも強い…?
警報が鳴り、昇降機を背にして見た時に右側となる方向にある奥の通路からセキュリティロボットが三体出てきた。
「よし、初の戦闘だ…」
この戦闘は全部で2ウェーブあったはずだ。
そしてこのバトルの後には塔を出てすぐの所でボス戦もある。
だからこのウェーブくらいは楽々クリア出来るくらいじゃないとこの後のボス戦に響く。
よし、目指せノーダメクリアだ!
俺がそう意気込んで戦闘を指示を出そうとした瞬間──
世界からまた色と音が消えて時間が止まった。
〈味方キャラクターに指示を出して敵を倒してみよう! 〉
頭の中で機械的な声が聞こえた。
「『敵を倒してみよう! 』じゃねえよ! ! 」
こっちは普通に命の危機だっての!
イラッとして愚痴っていると目の前にゲーム画面が出てきた。
その画面には今目の前にいる敵が2次元化されたイラストで表示されており、HPバーや弱点属性、必殺技である
対して味方キャラクターは2人。
1人目はタンクキャラのルシル。光属性だ。
味方をかばうタンクとしての能力はもちろん、HPが減るほど自身の攻撃力が上がる攻撃力上昇バフスキルと
2人目はデバッファーのティナリー。闇属性だ。
敵の物理攻撃力をダウンさせるスキルと
正直どちらもキャラ性能だけ見ると微妙なのだが、ルシルはこのチュートリアルの時点で1人だけ飛び抜けてレベルが高かったはずだし、ティナリーのデバフも3ターン耐えるという点で見るなら十分有用だと言えるだろう。
行動順は早い方からルシル、ティナリー、セキュリティロボットtypeA、セキュリティロボットtypeH、セキュリティロボットtypeRの順の様だ。
typeAは小型で胴体に3箇所刃物が付いている。
胴体を回転させる事で刃を回して攻撃してくるのだろうと想像がつく。
ゲームだった頃は1桁ダメージの大した事無い攻撃だったが、現実となった今では十分に油断ならない傷を負うことになるだろう。
typeHはAと同じく小型だが丸いフォルムをしている。
そしてこいつはメンテナンス、修繕用のタイプ。だから狙うならこのtypeHからがいいだろう。
こいつを倒さないといくら攻撃しても回復され続けてしまうだろうからな。
最後typeRは他2つよりも少し大きな中型ロボットだ。
typeAの使う回転斬りはもちろんの事、小型よりも大きなその躯体を活かした突進や、腕の様な部分で殴打までして来たはず。
弱点属性は機械だからなのか水と雷。
雷はいないから現状弱点をつくことは不可能だ。
だが、水属性ならば後から合流する仲間の1人が水だったはずなので問題ないだろう。
3ターンの間、耐える事さえできれば後は楽勝だ。
……たぶん。
〈バトルチュートリアルを開始します〉
ピコンと音がなり画面が切り替わった。
───────────
【バトルの流れについて】1/4
敵の上にある緑色のバーはHP(ヒットポイント)を表しています。
HPは体力を示しており、0になるとそのキャラクターは死亡します。
戦闘中はキャラクターに指示をする事でスキルを使用させる事ができますが、何も指示していなくてもキャラクターは通常技を使用して行動します。
味方のHPが0になる前に敵のHPを0にできれば勝利となります。
───────────
あー、はいはい。
次、次。
───────────
【戦闘スキルについて】2/4
各キャラは2つスキルを持っています。
スキルはキャラクターによって様々あり、効果、属性、キャストタイム(発動までの時間)、リキャストタイム(再発動までの時間)があるので確認しておきましょう。
<例>
スラッシュ
〔物理〕 斬 CT 0.6秒 RT 10秒
敵1体に攻撃力の60%の物理斬属性ダメージを1回与える
───────────
スラッシュはSR~Nまでの剣や槍装備の物理キャラでよく見るやつだな。
ダメージパーセントやキャストタイム、リキャストタイムはキャラによってまちまちだ。
だが、例に出ている性能から大きく外れる事は無い。だからまぁ、どのキャラのスラッシュも大した違いは無い。
はい、次。
───────────
【バーストゲージについて】3/4
HPバーの下にあるオレンジ色のバーはバーストゲージです。
バーストゲージが溜まっている状態でキャラクターとあなたの魔力を共鳴させると強力な技を発動させる事ができます。
バーストゲージは時間経過で増えることはありませんが、そのキャラクターがダメージを受けたり、ダメージを与えたりすると増加します。
一部キャラクターのスキルで増加させる事もできるので、そういった効果のあるスキルを持ったキャラクターを編成に入れるのも戦略のひとつと言えるでしょう。
───────────
俗に言う必殺技ゲージだな。
はい、次。
───────────
【フルバーストスキルについて】4/4
全てのキャラクターは敵味方問わずフルバーストスキルという必殺技を持っています。
フルバーストスキル、通称FVスキルはバーストゲージが満タンになると発動できる特別強力な技です。
キャラクターによって様々ありますがどのフルバーストスキルもとても強力なので積極的に使うようにしましょう。
<例>
サウンドレイン
[適正武器] 槍
〔属性〕光
光属性の魔力を纏わせた槍で敵全体に自身の攻撃力に応じた威力の光属性の斬撃を降らせ、攻撃する。
自身の攻撃力に応じてダメージ量と攻撃回数が上昇し、最大で攻撃力の120%の物理ダメージを10回まで与える。
───────────
サウザンドレインつっよ!?
攻撃力に応じて火力アップとかダメだろそんなの許しちゃ…
しかも性能だけじゃなくて、数値も他キャラのFVの合計%値余裕でオーバーしてるとかいう…
他の物理アタッカーだとたしか、攻撃のパーセント数値1番高いキャラでも全部足して500%前後だぞ!?
それを最大1200%とかバグを疑うレベルのいかれ具合だ。
ぶっ壊れにも程がある。
当時はリタマラに手を出すほどには熱心にやってたから序盤に登場してる各キャラのスキルについてはだいたい覚えてるつもりだ。でも、こんなのは知らない。
いったい誰のスキルだよ。
光属性で、槍…光で槍…光で槍
光で槍?
ま、まさか…
俺は思わずルシルの方を見た。
俺がスキル詳細を知らないキャラでチュートリアルの例で使われるキャラとかルシルしかないよな…
ルシルはキャライラストで槍と盾を構えてるから槍のFVで違和感ないし。
俺がそうやって考え込んでいると、頭の中にまた声が響いた。
〈まずはルシルのスキル1【スラッシュ】を指示してみよう! 〉
指示してみよう…ねぇ。
指示も何も今俺以外の時止まってるし、言っても聞こえないと思うんだが…どうすればいいんだ?
まさか目の前に謎技術で表示されてるこのゲーム画面でゲームと同じ様に操作するのか…?
半信半疑ながらも俺はゲーム画面のルシルのスキル1のアイコンに触れた。
すると突然周囲に色と音が戻り、時間が動き始めた。
「まじか…」
戦闘中だからなのか、さっきと違って時が動き始めたがゲーム画面は俺の目の前の空中に表示されたままだ。
「し、指導者様!? 私の武器が突然光始めましたがこれは!? 」
え…
指示さえだしたら勝手に攻撃してくれるもんだと思ってたんだが…違うのか?
「あー…えっと…ルシルの次の攻撃を強化できそうだったんでしてみた。試しにその状態でセキュリティロボットtypeHを攻撃してみてくれないか? 」
「セキュリティロボットタイプH…? 」
「小型の丸い方だ」
そいつは補給型で敵のヒーラーだからな。先に潰す。
「右のやつですね! わかりました! 」
ルシルは槍を構えるとセキュリティロボットtypeHに向かって行く。
「やあ!! 」
光っている戦乙女の魔槍で上から下に振り下ろして攻撃したルシル。
「えぇ!? 真っ二つ!? 」
バックステップで俺達の方まで戻ってきたルシルが一撃でスクラップとなったセキュリティロボットtypeHを見て驚きの声を上げた。
「すご〜い! ねえねえお兄ちゃん! ティナリーもやりたい! 」
アイちゃんの両腕でつくられた椅子に座るティナリーがtypeAの攻撃をいなしながらそう言った瞬間。
中央にいる中型のセキュリティロボットtypeRが何やらビームの様なものをチャージし始めた。
え、なんで?
次はティナリーの行動順のはずじゃ…
と、疑問に思ったその時──
再び周囲の時が止まった。
〈敵がスキルのチャージを開始しました。このままでは大ダメージを受けてしまいます。〉
攻撃順は敵よりティナリーの方が早かったはずだよな。
何故敵が先に動いたんだ?
……まあいい。
それよりも今は、右腕についてる大きな銃でビームをチャージ中のセキュリティロボットtypeRの銃口が俺達の方向いてる事の方が問題だな。
控えめに言ってめちゃくちゃ怖い。
正直な話『大ダメージを受けてしまいます』とか呑気な事を他人事で言ってきてるチュートリアル音声とか丸っと無視して、時間が止まっている内にここから逃げてしまいたいまである。
〈ティナリーのスキル2を使用してダメージを最小限に抑えよう! 〉
あー…はい。
今度はティナリーね。
って事はバフデバフの説明かな?
もう説明いいや、とばそ。
だってパッと見た感じ既に知ってる事しか書いてない。
『バフはかけられた相手にとっていい効果で、デバフは悪い効果です』とか、『バフとデバフはHPバーの上にアイコンで表示される』とか、『1ターン経過するとバフデバフアイコンの右下の数字が1つずつ減っていき、その数字がゼロになったら効果終了です』とかそういうゲーマーにとってはもはや一般常識レベルの事しかなかったんだよ。
こんなんスキップだ、スキップ。
俺は適当にティナリーのスキル2である【アイちゃんののろいパンチ! 】を押した。
すると、やはりというか周囲に色と音が戻り時が動き始めた。
「わ〜! ティナリーのアイちゃんが光ってる〜! 」
「ティナリー! こっちにビーム打とうとしてるあいつに攻撃だ! 」
「わかった! 『アイちゃん、やっちゃって! 』」
ティナリーはそう言って"アイちゃん"に命令をした。
ゲームだった頃に死ぬほど聞いたティナリーのスキル1発動時ボイスが実際に目の前で聞けて大変満足です。
俺がそう思ってティナリーを見ていると、ティナリーはアイちゃんの首にしがみつく形でアイちゃんの両腕をあけていた。
降りはしないんだな。
それアイちゃんの首しまってないか?
アイちゃんは人じゃないから大丈夫とかそういう感じなんだろうか。
両腕があいたアイちゃんは首がしまっていることなど何も関係ないとばかりにセキュリティロボットtypeRに近づくと、ビームを放とうとしているその銃口を思いっきり殴った。
一撃で撃破とは行かなかったもののアイちゃんのパンチひとつでセキュリティロボットtypeRの残りHPが2割をきった。
『バキッ! 』という音が聞こえて根元からへし折れるセキュリティロボットtypeRの右腕。
「つっよ…」
アイちゃん普通に強いんだが。
というか、ゲームだった頃と比べてちょっと強すぎる気がする。絶対レベル1じゃないだろこれ。
さっき行動順がおかしかったのと何か関係あるのだろうか…
ダメージを最小限に抑えるどころか腕へし折って攻撃そのものを無効化しちゃったし、絶対普通では無いだろ。
うーん…気になる。
けどまあ、強い分にはいいか!
「よくやった! ティナリー! 」
俺がそういうとティナリーはこっちを見て楽しそうに笑った。
うん。
可愛い笑顔だ。
それにこれで一ターン目終了だな。
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