第十七話 異世界生活2日目始めました!


 朝日が差し込み、明るくなったのを感じて目が覚める。



 やっべ、あのままベッドで寝てしまったか。



 目を開けると、目の前にはクローデットの顔があった。



「おじさん、起きた? お寝坊さんだよぉ」



 すでに部屋着から、JK制服風の衣服に着替え終わっている。



 視界の端にある時刻表示をチラリと見ると、朝の9時30分すぎだった。



 かなりの寝坊なようだ。



「朝ごはんどうする? お風呂入ってないから入る? そ・れ・と・もあーとちゅーする?」



 最高に気分がいい目覚めだ。



 綺麗な女の子が、朝にかいがいしく世話を焼いてくれたかと思うと、目を閉じて口を尖らせ、俺からのキスを待ってくれている。



 男としては最高すぎるシチュエーションだった。



「まずは、クローデットとの約束を履行するよ」



 俺はクローデットを抱き寄せると、彼女と濃厚なキスをかわす。



「んふぅ。おひはん……」



 舌を絡ませたクローデットが、【吸精】を行っていく。



 普通の男なら気絶するとか、下手すると死ぬかもしれない、クローデットの接吻だけど。



 俺にはまったく影響がないので、普通にカワイイ女の子とディープなキスをしてるだけ。



 それに警告メッセージが出る様子もない。



 従魔への回復行為範囲内と判定してもらえてるようだ。



「ふあ。おじさん、ありがと。あーし、元気になったよぉ!」



「それはよかったな。俺はちょっと風呂入ってくるから、食事は先に食べててくれ」



「はぁい。おじさんも長風呂しないようにね」



「分かってるさ」



 着替えを持つと、俺は急いで脱衣場に移動する。



 服を脱ぐと、浴室に入り、冷たい水が貯まった水がめの水を頭から被る。



 うぅ、つめてぇ、でもこれで落ち着いたぜ。



 冷たい水を浴びた身体から湯気が立ち昇る。



「ふぅー、昨日の今日でえっちするのはありえないからな。あぶねぇ」



 クローデットの朝の挨拶は強烈すぎだろ……。



 浴槽に入り、温かい湯に身を沈めると、緊張が解れていく。



 今日から冒険者として、異世界生活を始めるんだ。



 しっかりしろ、俺。



 湯を顔にバシャバシャとかけ、気合を入れ直す。



 ちゃんと生活が成り立つようにするのが、クローデットとの関係を進めるためにも必須だ。



 浴槽から上がると、備え付けのタオルで身体を拭き、魔法が付与された黒い服に袖を通す。



「よし、やるぞ!」



 頬を叩き、もう一度気合を入れると、クローデットの待つ部屋に戻った。



 朝食を急いで食べ、俺たちは依頼を受けるために10時ごろ冒険者ギルドへ向かった。




 チュートリアルの記憶をたどり道を進むと、石造りの大きな建物が見えてくる。



 やっぱりあった……。



 あの時の冒険者ギルドだ。



 扉を押し開け、中に入ると、見覚えのある受付嬢の姿が見えた。



 あの人、たしかチュートリアルにいた無表情の受付嬢。



 まさか、あの時点からこっちに飛んでたってことか?



「おじさんどうしたの? 早く依頼を探さないとー。ほら、ほら、あっちの掲示板に依頼票が出てるよ」

 


 クローデットにグイグイと腕を引っ張られ、依頼票が張り出されている掲示板の前に来た。



 チュートリアルでは、窓口で受付嬢が依頼票を出してくれてたけど、本当は掲示板から持ってくるんだな。



 寝坊したおかげで、冒険者たちの姿は少ないし、残っている依頼もあんまりなさそうだ。



 ゴブリン討伐、ゴブリン討伐、ゴブリン討伐、全部ゴブリン討伐かよ。



 どれもFランク依頼最低の達成報酬である1000レギル。



 掲示板の隣に貼ってある周辺地図を見ると、依頼先の村は四方に点在しててまとめて達成するのは難しそうだ。



 稼げない依頼はやっぱ人気ねぇ……。



 ランクFで受けられそうなので、残ってるのはゴブリン討伐くらいしかねえな。



 移動の時間を考えると、受けられるのは2~3件くらい。



 なんか、移動時間短縮できるものとかないか……。



 そうだ! クローデットのスキルにたしか【飛翔】ってあったけど、あれって空を飛んで移動できるスキルかも!



「クローデット、ちょっと聞きたいことがあるんだが」



「なぁに?」



「【飛翔】って、飛んで移動できるスキルか?」



「え、あ、うん。そうだよ。羽根を生やして飛べるようになるやつ――」



「その状態で、俺を抱えて移動できるか?」



「えーっと、軽量化の魔法かければ、行けると思うけど。あっ! もしかして、おじさんはあーしの【飛翔】を使って移動時間の短縮考えてる!?」



「そういうことだ。やれそうか?」



「問題ないよぉ。あーしが飛んで移動して、おじさんの腕ならゴブリン倒すのなんて一瞬だし、これだけ全部受けても夕方には終わるっしょ」



 夕方……だと。



 さすがにこれだけの件数が1日で終わるとは思ってなかったが……。



 クローデットの【飛翔】は相当速く移動ができるスキルってことか。



「本当に全部受けて大丈夫か?」



「うんうん、大丈夫。移動はあーしに任せて!」



 クローデットが任せてくれと言ってるし、残ってるゴブリン討伐の依頼を全部受けるか。



 見たところゴブリン討伐は、依頼期間を長めにとってあるものばかりだし、仮に今日の夕方までに完了できなくても問題はないわけだし。



「おし、分かった。全部受けるとしよう」



 俺は掲示板に張り出されていたゴブリン討伐の依頼票を全部剥ぎ取ると、クローデットとともにそれを持って受付嬢のいる窓口に向かった。

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