第十四話 外に出たら衛兵に声を掛けられた!
外に出ると、すでに日が暮れかけており、地下宮殿でかなりの時間を過ごしたと思われた。
V・F・L・Oは、現実時間と同じ、24時間で1日が経過するシステムのはず。
視界の端の時刻表示を見ると、夜の8時を過ぎたところだった。
地下墓地に入ったのは、昼間12時だったから、半日近く潜ってたことになるのか……。
早いところ、広場のセーブクリスタルに触れて、オンラインサーバーに入るとするか。
「ふぁぁああ! 久しぶりの外だぁ~! 気持ちいいっしょー」
「くつろいでるところ悪いが、すぐに広場に行こうと思う」
「はいはい。おじさんの行きたいところについてくよ。あ、そうだ! これ、持ってね。ここは街中だしねー」
クローデットが首から垂れている銀の鎖を差し出してくる。
約束は約束だから、街中は鎖を持つしかないか……。
心を落ち着けて、差し出された鎖を持つ。
「放さないでね。おじさん」
「分かってる。じゃあ、行こう」
「はぁい。おじさん、腕組んでいい?」
「問題ない」
クローデットが俺の腕に手を絡ませると、2人で広場に向かうことにした。
広場に向かうまでの間、地下墓地に入る前と、街の雰囲気がガラリと変わっていることが気になった。
地下墓地に入る前は、NPCは配置されてなかったはずなのに、今はかなりの数が配置されてる……。
しかも、チラチラとこっちを見てはヒソヒソ話をしてる気がするぞ。
なんか、行動がクローデットみたいに、リアルな人すぎるだろ……。
人で溢れ返った広場に入ろうとすると、衛兵らしき人に呼び止められた。
「そこの人、ちょっといいかな?」
厳しい目付きをした壮年の衛兵が、俺とクローデットを交互に見てくる。
NPC……だよな?
普通に人と喋ってるみたいだけど、クローデットの会話精度からして、AI製のNPCキャラはリアルっぽい会話をできるんだろう。
冒険者ギルドの受付嬢が、異常に無感情だっただけなのかもしれないしな。
「ちょっと、こっちの話聞いてるのかね?」
「あ、はい。聞いてますよ。何か俺に用事?」
「すみませんが、そちらの従魔の確認させてもらっていいですかね? サキュバスはテイマー職の従魔契約とは違う形の契約になるので、特に確認を強化させてもらっているのですよ」
「確認ですか?」
「ええ、簡単なステータスチェックだけなので、お時間は取らせませんよ」
ランダムで起きるイベントだろうか……。
衛兵のステータスチェックを拒否すると、いろいろと面倒なことになりそうだが……。
それにしても、まだソロサーバーのはずなのに、ランダムイベントなんてのが用意されてるのか。
すごいなV・F・L・O。
「おじさん、衛兵さんを待たせるとマズいよ。ほらほら、チェックしてもらおうよぉ。あーしがおじさんの所有物だってぇ~」
「んんっ、チェックさせてもらってよろしいかね? サキュバスは特殊な従魔契約をする魔物であるし、上位種であるサキュバスクィーンというのが居てね。かなり暴走の危険性が高いのだよ。だから、協力してもらえるとこちらも助かる」
衛兵の視線が一段と厳しいものになった。
えっと……クローデットってサキュバスクィーン。
つまり、衛兵のステータスチェック受けると、何らかのペナルティが与えられる可能性があるってことだよな。
「あ、いえ、ちょっと、今忙しくて」
「おじさん、衛兵さんに逆らったらダメだよ。衛兵さん、チェックしてみてー。あーしがおじさんの所有物だって分かるからぁ~」
いいのか? 本当に?
俺の視線にクローデットが無言で頷く。
「クローデットがそう言うなら……。確認してもらっても大丈夫ですよ」
「ご協力ありがとうございます。では、ステータスチェックをさせてもらいますね」
衛兵が眼鏡をかけ、クローデットの従魔の首輪と、俺の肩に触れる。
「ふむ、ただの
へ? クローデットはサキュバスクィーンのはずだが? いったいどうなってる?
「ノーキン殿、ご協力感謝する。ただ、忠告しとくと、サキュバスに夜の相手をさせるのはほどほどに
「衛兵さん、どうも、どうも、ありがと。おじさん、さぁー行こうっしょ」
上機嫌のクローデットに手を引かれ、広場に入ると、彼女が耳打ちしてくる。
『衛兵のステータスチェックは、あーしが魔法で書き換えて、サキュバスってステータス偽装しておいたの。バレたらめんどうくさいしさ』
『そういうことか……』
V・F・L・Oは、自由度が高いからPK野盗とかのプレイヤーが、追放されても街に入れるよう偽装できる魔法が設定されてるらしい。
偽装を見破る魔法もあるんだろうけど。
今回の衛兵は、見破れなかったということか。
それにしても、衛兵の様子からすると、サキュバスクィーンは相当警戒されてるらしい。
たしかにあのステータスだしな。
俺も神引きのスキル構成がなかったら、序盤で彼女は倒せなかっただろう。
それに衛兵は気になることを言ってた。
サキュバスの従魔契約は特殊だと。
テイマー職を持たない俺が、クローデットを従魔にできているのは、サキュバスの特殊な従魔契約の仕方のおかげなのかもしれない。
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