第十三話 探索を終え、脱出することにした!


「おじさーん、どこー?」



「こっちだ。こっち」



 クローデットが、棚の向こうから姿を現す。



 俺の姿を見つけたクローデットの顔がパッと笑顔になった。



「おじさーん、その剣、すごい似合ってるって! めっちゃ、かっこいいっしょ!」



「ああ、かなり手に馴染むやつだ」



「その剣、かなり丈夫そうだし、おじさんの力があれば、その一本あれば大丈夫だよね?」



「まぁ、そう思う。強い武器だしな。他に使えそうな武器がないか探したが、みんな朽ちてるやつだった。クローデットの方はどうだ?」



「あーし? あーしの方は……魔法が付与されてない貴金属の指輪とか、ポーションがいくつかあった感じぃ。あ、そうだ。これおじさんが使う? スキルクリスタル。魔物のあーしじゃ使えないし」



 クローデットの手の中に、透明なクリスタルが2つほど転がっていた。



 両方のスキルクリスタルを【鑑定】してみる。



 ―――――――――――――――――――――


 ランク:コモン


 スキル名:体力増強Ⅰ


 種別:パッシブスキル


 効果:HP10%アップ


 価値:2000レギル


 ―――――――――――――――――――――


 ―――――――――――――――――――――


 ランク:コモン


 スキル名:魔力増強Ⅰ


 種別:パッシブスキル


 効果:MP10%アップ


 価値:2000レギル


 ―――――――――――――――――――――



 体力が増えるやつは意味あるが、魔力が増えるのは意味ないな。



 脳筋戦士としては、体力が増えるスキルクリスタルを使わせてもらうとするか。



「じゃあ、お言葉に甘えて、【体力増強Ⅰ】の方を使わせてもらうぞ」



「どうぞ、どうぞ。おじさんが強くなるのは、あーしの幸せ―♪」



 スキルクリスタルを強く握ると、砕けて光が俺の体に吸収された。



 スキルのおかげでHPが増えた。



 これでさらに死ににくくなったはずだ。



「あ・と・は、これ! おじさんの新しい服~」



「服?」



「うん、おじさんに似合うと思って持ってきた。それに、これは魔法付与されてて、破れたり、劣化しないやつ。着てみて欲しいなぁ」



 クローデットが差し出した黒い服を【鑑定】してみた。


 ―――――――――――――――――――――――――――――――


 ランク:レア


 アイテム名:憎き傑作の黒服


 基礎防御力:0


 属性:なし


 特別効果:どんな状況でも破れず、劣化しない。


 防具種別:衣服


 エンチャント:不可


 解説:不壊の魔法が付与された黒い服。防御力は皆無。


 価値:10000レギル


 ――――――――――――――――――――――――――――――――



「せっかくだから、着てみるとするか」



「じゃあ、あーしも着せるの手伝ってあげるぅ。ほら、ほら脱いで、脱いで」



 クローデットが、とてもニコニコして、手伝いを申し出てくるが……。



 服くらいは自分で着替えられるんだが……。



 これだけニコニコ顔のクローデットの申し出を断るのは忍びない。



「分かった、分かった。手伝ってくれ」



「はぁい。やったぁ~。じゃあ、今着てる服を脱がしまぁす」



 俺が子供みたいに万歳すると、クローデットがかいがいしく布の服を脱がしていく。



「おじさん、この布の服はあーしがあとで捨てておくね」



「ああ、すまないな」



 指を鳴らしたクローデットが布の服を黒い穴の中に放り込んだ。



「ささ、黒い服を着てみてぇ。サイズはあってるかなぁ~」



 俺が着ていた布の服をクローデットに渡した時、なんだか顔が赤かったような気がするが――。


 

 まぁ、いいか。



 何か悪用されるわけでもないし。



 黒い服に着替えると、着心地を確かめる。



 動きやすさを確かめるため、肩を回したり、屈伸したり、腰をひねったり、剣を振ってみた。



「おじさん、きつくない? 動きにくいとかってところもない?」



「問題になりそうな箇所はないな。ちょうどいい服だと思う。着心地もさらりとしてて、ごわごわ感を出していたの布の服よりかは断然よくなった」



「よかったぁ。おじさんにぴったりだと思った、あーしの眼力も捨てたもんじゃないっしょ」



「だな。助かった」



 クローデットの顔が、にへらと緩む。



 あまりにその顔が可愛かったので、思わず彼女の頭を撫でていた。



「おじさんに褒められちゃった。あーし、幸せすぎー」



「お手軽な幸せだな」



「だったら、もうちょっと贅沢な幸せも欲しくなっちゃったなぁ。ちゅーして、ちゅー」



 クローデットは口を尖らせると、目を閉じてキスを迫る。



 俺は頭をぽんぽんと軽く叩いて、キスの要求を誤魔化した。



「それはちょっと贅沢すぎだ。さて、準備は整ったことだし、街に戻ろう」



「ちぇー、残念。でもでも、いっぱい頑張ったらちゅーしてね。おじさん」



「生命の危機に関する緊急事態なら……な」



 キスのしすぎは、警告メッセージが出るわけだし。



「えー、ケチー。もう、おじさんは真面目すぎー! しょうがない、おじさんに嫌われたくないから、ちゅーは我慢しとこっと。さぁ、地上にレッツゴー!」



 クローデットが、俺の手を取ると、地上への出口に向かって歩き始めた。



 帰る途中で俺が倒した暁光ぎょうこうの白銀竜ローダン、ダークウルフ、レッドコカトリスを【鑑定】したが、やはり【解体】ができないため価値はとても低かった。



 収納魔法の容積も限られるということで、魔物の死骸は持って行かないことにした。


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