第十話 従魔とのキスで警告メッセージをもらってしまう!


「お、おじさん。わがまま言うけどさぁ。もう少しだけ精気もらっていいかな?」



「あ、ああ。いいぞ」



「……ごめん。ちょっとだけ、ちょっとだけだから。許してね、おじさん。あーしに勝った強い牡の匂いに我慢できな……」



 褐色肌の巻き角JKコスプレギャルのクローデットが、俺を押し倒して跨ってくる。



 密着する彼女の身体から甘い匂いが鼻いっぱいに広がっていく。



「おい、押し倒さなくても――」



「おじさん、ごめん。すぐ終わらせるから、ちょっとだけそのままで。あーしが気持ち良くさせてあげるしぃ」



 思考がまとまらずにいると、クローデットの舌が、俺の口内に潜り込んできた。



 目の前の彼女は、体力をかなり取り戻したようで、先ほどとは違い、魅惑的な笑みを浮かべ、妖しい目を光らせ、俺に口へ唇を寄せた。



 VRダイブギアを通して、脳に与えられたリ感触のすごさで全身に鳥肌が立つ。



 密着しているクローデットの身体も、リアルの女性と同じか、それ以上に柔らかく肉感を伴った感触を与えてきた。



 この感触は、リアルすぎてやべえって。



 全年齢のV・F・L・Oは、こっちの性癖ぶっ刺してくるNPCキャラに、こんなえっちな機能を持たせてるのか……。



 これはいろいろとアカンやつだ……。



「ふぅ、はぁ~、生き返ったぁ。おじさんの匂い痺れちゃうくらい好きぃ」



 精気を吸うのをやめたクローデットが、俺の胸に鼻を当て、クンクンと匂いを嗅ぎ始める。



「はぁ、たまんないよぉ。おじさんの匂い。癖になるかも……。もうちょっとだけクンクンしていいよね?」



 柔らかな胸を押し付けてくるし、実に悩ましい提案の仕方をしてくれるな……。



 でも、まぁ、元気になったようで何よりだし、えっちするわけではないので、匂いくらいは嗅がれても問題はない。



 俺が無言で頷くと、クローデットが再び匂いを嗅ぎ始めた。



 密着している彼女は、俺の匂いに興奮してるのか、体温が少し上がる。



 おかげで、甘く蕩けるような彼女の匂いが、俺の鼻を刺激した。



 これは俺の理性がアカンかもしれない……。



【従魔との過度な性的行為を確認しました。このままであと5分経過するとスキルが消失します】



 警告メッセージが!? エッチ判定されて、スキルが消えるっー!

 


 他のVRMMOゲームでも、NPCキャラへの性的ハラスメント行為は、BAN対象にされる事案だ。



 従魔になったクローデットとはいえ、同様の行為を行えば、運営から処罰される可能性は十分にある。



 それに俺の場合、エッチな行為をすると、脳筋戦士を構成している超レアなスキルが消える。



 この神引きキャラで快適なV・F・L・O生活を、俺はまだまだ楽しみたいのだ。



 なので、警告メッセージが出てる間に接触行為をやめないと!



「クローデット、元気になったみたいだな。そろそろ、俺の上からどいてもらえるか?」



「おじさぁん。最後にほっぺもダメ? おじさぁ~ん。ほっぺだけだからぁ。ほらほら、ほっぺにちゅー」



 目を閉じて口をとがらせたクローデットが、もう一度キスをせがむ。



 その仕草はとても可愛いし、俺の性癖をドチャクソに刺してくる。



 でも、警告メッセージが出た以上、続けることはできない。



「これ以上はダメだ。おしまい」



 キスを迫るクローデットの頭を手で押しのけ、そのまま立ち上がる。



「ちぇー、しょうがない。次の機会の楽しみにとっておくしかないかー。はぁ~、次が待ち遠しいなぁ」



 クローデット、おれはまだV・F・L・Oを続けたいから、緊急事態以外、その要求には応えられんぞ。



 でも、まぁ、元気になったようで一安心だ。



「おじさん、キスしてくれてありがとね。おじさんはあーしの命の恩人だよぉ」



「致命傷を与えたのは俺だ。だから、普通は命の恩人とは言わんだろ」



「ううん。おじさんは、負けたあーしを見捨てることもできたけど、見捨てなかったから命の恩人なの!」



「そういうものか?」



「そういうもの。あーしがそう思ってるから、それでいいじゃん」



 改めてランタンの照らす明かりのもとで、クローデットと面と向かって喋っているが、やはり自分の好みど真ん中の容姿だった。



 クローデットを生み出したV・F・L・Oの最新モデリング技術は、神がかっているとさえ思える造形だ。



 試遊版をプレイした一部プレイヤーからは、VR嫁探しゲーとして期待されてると聞いて鼻で笑っていたが……。



 正直、これだけ自分好みのAIキャラが存在してると知った今、鼻で笑っていた俺をぶん殴ってやりたい気分だ。



「おじさん、あーしの顔に何か付いてる?」



「あ、いや、問題ない。クローデットみたい子がこの世界にいるんだなって思ってさ」



 ニヤニヤとした表情を浮かべたクローデットが、俺の腕に手を絡ませてくる。



「なに? おじさん、あーしに惚れたぁ? でもさぁ、あーしの方がもっともっとおじさんにぞっこんなんだよ」



 照れた顔を見せて、恥ずかしいことを平然と言うクローデットは、とっても可愛いし魅力的な女性だった。



 ヤバい、マジで可愛いすぎだろ……。



「面と向かって言われると、恥ずかしさを感じるな」



「もぅ~、あーしだって恥ずいんだからぁ」



 顔を赤くしたクローデットが、俺の胸をぽかぽかと叩いてくる。



 その仕草でさえ、カワイイと思う自分がそこにいた。



 なんかいろいろと突発事態が連続したが、隠し部屋の裏ボスを従魔できたことで、俺のV・F・L・O生活はよいスタートダッシュを切れそうな感じだな。


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