第三話 チュートリアル開始!
断続的に鳴り続けたノイズ音と耳鳴りのような音が途切れると、急速に意識が覚醒する。
目を開けると、中世風の石造りの建物が並び、緑に囲まれた大きな噴水のある広場の姿が飛び込んできた。
試遊版よりも、さらにリアルになってやがる! 匂いまで再現されてるし、これは現実と変わらない世界だろ!
周囲を見回し終えると、今度は自らの身体に視線を落とす。
おお! ゴリゴリに筋肉質の体だ! 太い腕、太い脚、盛り上がった胸筋、バキバキに割れた腹筋!
これぞ、脳筋戦士って体つきをしてる! うんうん、いいね!
アバターキャラとのリンクも誤差なく動く。
本当に自分の身体みたいだ。
そうだ! 俺の顔どうなってるんだ! ちゃんとアバターキャラになってるのか。
急いで広場の噴水まで駆け寄り、水面に映る自分の顔を見た。
角もあるし、黒髪の短髪、赤い眼……。
って、イケメンじゃなくて現実の俺と同じ顔だ。角はあるし、赤い眼だけど。
ザ・童貞モブおじさんって顔だ……。
ノイズ音がかなり酷かったし、生体情報が勝手に読み込まれてアバターキャラのモデリング情報に齟齬が出たのかも。
でも、もっとゲームっぽいモデリングかと思ったけど、リアルな顔の造形はさすがV・F・L・Oだ。
まぁ、クローズドベータ版だし、正規版になったらバグ修正されるのを期待しとくか。
現実に近い自分の顔をしたアバターキャラの出来栄えにがっくりしていると、目の前にメニューウィンドウがポップアップした。
メニューウィンドウの内容は、ステータス、スキル、インベントリ、パーティーメンバー、クエスト、ログアウト、ヘルプか。
視界の隅にゲーム内時刻が出てくれてるのはありがたい。
現在11時か。
それと、クエストが光ってるから、これを選択しろってことだな。
メニューウィンドウから光っているクエストを押すと、メッセージが浮かぶ。
【チュートリアル1 セーブクリスタルへ触れてください】
チュートリアルクエスト……だ。
だとすると、まだ他のプレイヤーのいるオンラインサーバーじゃなく、チュートリアル用のソロサーバーか。
これを終わらせると、オンラインサーバーに接続されるって感じだな。
視界に目的地へのマーカーが示される。
噴水の前にある台座に浮かんでる青いクリスタルが、セーブクリスタルらしい。
すぐさま移動し、青いクリスタルに触れた。
【セーブクリスタルは、ゲームの進行状況を保存してログアウトできますし、最後に触れたクリスタルが、死亡時のリスポーン先になります。デスペナルティに関しては一定時間HP・MP・STの上限値が下がりますのでお気をつけください】
おっけ、おっけ、街とか移動したらそっちのクリスタル触れとけってことだな。
死んだら最初の街へ戻されるなんて惨事は起こさないつもりだ。
【報酬:1000レギルが追加されました】
チュートリアル報酬ゲット! お金は大事だな。
地面に落ちている革袋を拾い上げると中身を見る。
これがV・F・L・O世界で共通使用できるレギル通貨か。
けっこう小さなコインのようだ。
いや、俺の手がデカくなってるのを忘れてたわ。
大きくなった手との対比からすると、500円玉くらいの大きさってところだな。
初期のお金は大事だし、落とさないようにしないとな。
硬貨の入った革袋を大事に握りしめると、次のメッセージウィンドウが開いた。
【チュートリアル2 ギルド登録をしましょう! ①冒険者②生産者③聖職者④魔術師】
チュートリアルで選べるギルドは4つあるようだ。
4つ以外のギルドも存在するとは思うけど、INT【G-】が固定されてる脳筋キャラで生産職とか聖職者とか魔術師プレイはムリゲー化する。
このキャラだと冒険者ギルド一択。
①を選択すると、向かう先がマーカーで示される。
俺は人気のない広場を後にして、マーカーに従い冒険者ギルドに向かうことにした。
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