第二話 神引きアバターキャラ、ゲット!

 目覚めると真っ白な空間に座っており、目の前には『welcome to V・F・L・O』という文字が浮かんでいるのが見えた。



 試遊版で見たキャラクリ画面だ。



 あの時は、運営側が用意したキャラしか選べなかったけど、クローズドベータだからキャラクリできるらしい。



 とりあえず、浮かんでいる文字に触れ、キャラ作成にとりかかった。



 まず最初は種族を選ぶようだ。



 選べる種族だけで、30種類くらいある。



 獣人もあるし、人でないものも含まれているが、魔物プレイも可能ってことだな。



 ポップアップの説明文に種族の色々特徴が書いてあるが、俺が使いたい種族は決まっている。



 試遊版で使った鬼人族きじんぞくだ。



 戦闘特化した種族で近接戦闘に強い種族となっている。



 そして、ジャストガード、パリィ、カウンターアタック、クリティカル攻撃といったタイミングを音で知らせてくれる『戦闘音感』という種族特性を持つ。



 死ぬほど試遊版で使い込んだ種族をクローズドベータ版で遊ぶキャラにしたかった。



 鬼人族を選ぶと、容姿の設定画面に移った。



 新規開発されたゲームエンジンによる新世代モデリングされたキャラが、目の前に浮かび上がる。



 額から短い角を生やし、筋骨たくましいマッチョな男性キャラがデフォルトか。



 デフォルト顔は使いたくないな。



 対プレイヤーのことも考えると、ネタキャラは論外。



 無難なイケメン造形にしておくか。



 年齢30歳、髪は黒髪で短髪、瞳は鬼人族っぽく赤眼にして、体格は種族最大値2m、体重は120㎏、筋肉量はMAXっと……。



 目の前に浮かぶキャラは、ゲームのラスボスにも見えるイケメンマッチョなキャラに仕上がった。



 まぁ、この見た目なら、他のプレイヤーに見られても、ドン引きされることはないだろう。



 ゲームの開発会社が、SNSに投稿してた動画に出てきた金ぴか肌のキャラは酷かったからな。



 自由度高すぎだろって思う。



 容姿が決まり、続いては初期スキルの選択画面が浮かぶ。



 様々なスキル名が書かれたスロットがまわり、決定を押すと初期スキルが決まる仕様のようだ。



 試遊版で使い込んだ鬼人族のキャラは、戦闘系スキル4つが初期スキルとしてセットされていたので、できれば戦闘系スキルで揃えたい。



 スキルは戦闘系以外にも色々あるみたいだ。



 ざっと見えてるだけでも、知識系スキルや製造系スキル、特殊スキル系もチラホラ見えた。



 スロットを回し、初期スキルは4つを選ぶため、クリックしていく。



 戦闘系で揃うまでリセマラを覚悟したが、スロットの神がモブおじさんの俺に奇跡をくれた。



【脳筋】【鋼の肉体】【無尽蔵のスタミナ】【器用な指先】の4つだ。



 ステータスのポップアップ説明文に目を通す。



【脳筋】……STRランクが『S』に向上し、INTランクが『G-』になる代わりに、クリティカル攻撃のダメージ量が10倍になる。※ただし、異性とエッチをすると消失。



【鋼の肉体】……VITランクが『S』に向上し、肉体系ステータス異常無効化。ジャストガード時、物理・魔法ダメージが無効化できる。※ただし、異性とエッチをすると消失。



【無尽蔵のスタミナ】……AGIランクが『S』に向上し、スタミナ消費系の行動・スキル使用時の消費量1になる。※ただし、異性とエッチをすると消失。



【器用な指先】……DEXランクが『S』に向上し、攻撃命中率がプラス30%される。カウンターアタックのダメージ量10倍になる。※ただし、異性とエッチをすると消失。



 完璧な脳筋戦闘神の爆誕だ……。



 マジで一生分の運を使い果たした気しかしないキャラだ。



 種族特性の『戦闘音感』があるから、遠距離攻撃はパリィで逸らし、魔法はジャストガードすればノーダメ。



 しかもスタミナ消費は1なので、連続使用できる。



 クリティカル攻撃とカウンターアタックを決めれば、ダメージ10倍。



 命中率補正かかるので、『戦闘音感』の発生タイミングのシビアさも緩和される。



 一撃必殺の脳筋戦士を極められる。



 けど、『※ただし、エッチをすると消失』ってなんだ?



 V・F・L・Oのレーティングは全年齢だったはずだが……。



 システム的に他プレイヤーやNPCへの性的行為はできない仕様になってたはず。



 なんで、こんな文言がスキル説明欄に書かれているんだよ。



 バグか? 誤翻訳って可能性もあるよな。



 まぁ、エッチするのがゲームをやる目的ではないんで問題ないが。



 とりあえず、スロットの神よ! ありがとう! この奇跡のキャラで俺はV・F・L・Oの世界を満喫させてもらうぜ!



 俺はすぐに奇跡のキャラを生み出すべく決定ボタンを押した。



 名前はどうするか……。



 かっこいいのもいいが……。



 あれこれ悩むが、いい名前がなく、ノーキンと打ち込んだ。



 正式版になる時は、キャラリネームアイテムも出るだろうし、とりあえずはいい名が思いつくまではこれでいくか。



―――――――――――――――――――――――――――――――



 ノーキン 鬼人族 男性 30歳


 HP:1000/1000


 MP:0/0


 ST:1000/1000


 STR:S VIT:S INT:G- AGI:S DEX:S LUK:F+


 ジョブ:なし


 アクティブスキル:なし


 パッシブスキル:【戦闘音感】【脳筋】【鋼の肉体】【無尽蔵のスタミナ】【器用な指先】


 戦技スキル:なし


 魔法:なし


 装備:布の服(5)


 基本攻撃値:100 基本防御値:105 基本魔法力:0


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 試遊版で使ってたある程度装備の整ったキャラより、10倍……いや100倍は強い初期キャラになったな。



 装備やスキルが整ったら、もっと強くなれる。



 俺は出来上がったノーキンの姿を見て、これからのV・F・L・O生活が満足する物になると思い、ニヤニヤが止まらなかった。



 完璧なキャラクリを終え、【決定】ボタンを押すと、警告の文字が現れる。


 

【このキャラクターでゲームを始めますか?YES/NO】



 もちろんYESだ。



 このキャラでV・F・L・Oのトップを取るつもりだ!


 

【本当に後悔しませんね?YES/NO】


 

 YES! 問題ない!



【では、V・F・L・Oをお楽しみください!】



 メッセージ音声がノイズ混じりで聴き取りずれぇ……。



 どんどんと耳鳴りとノイズ音が酷くなっていく。

 


 眩い光に包まれ、視界が失われるとともに俺の意識は途切れた。

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