もしも夢が叶うなら。

プロローグ

　もしも。もしも夢が叶うのなら。

　僕は、何を願うだろうか。

　医者になりたい。プロの野球選手になりたい。

　YouTuberになりたい。花屋さんになりたい。

　ケーキ屋さんになりたい。

　小さな子供の目に移る世界は、きっといつだって輝いているだろう。無邪気に笑って、いっぱい遊んで、親と手を繋いで。

　きっと幸せなんだろうな。

　人は大きくなるにつれて、変わっていくだろう。小学生に上がって、勉強をして、学年が上がる度にどんどん難しくなっていく勉強。

　中学生になって広がる世界。初めての部活動。

　3年生になれば、進路を考える。

　そして高校生になって本格的に自分の将来を考える。そして、みんな自分の夢に向かってひたすらに走るんだ。

　夢がない人だっているだろう。でもそんなことは関係ないんだ。ただ毎日を頑張っていることがすごいのだ。

　ああ、そうか。僕は羨ましかったんだ。

　尊敬をしていたんだ。

　自分の夢に向かって、無我夢中に努力をしたり、将来自分がどうありたいかを考えたりしている周りの子供たちが。

　僕は、何も出来なかったんだ。

　逃げたんだ。

　ただすぎていく日々になんの価値も見いだせなかったんだ。

そして、君のことを置いていってしまったんだ。