第6話

「もう二度と、外に、出たく、ない…」

 自宅に戻ったリサは疲れた様子で呟く。


「お疲れ様、リサ」

 苦笑いを浮かべながら労う。


 2人が向かった喫茶店は臨時休業だった。そこで翌日出直そうということになった――今度はエマだけで。

 いくら襲撃者が心配と言ってもあの様子ではむしろ……。



◇◆◇◆◇◆◇


翌日――臨時休業。

翌々日――臨時休業。

翌々々日――りん……。


「おかしいよ! ずーーーっと臨時休業、臨時休業……もう、嫌になっちゃう」

 リサと行った日から3日間、例の喫茶店に通い詰めていたが、いずれも門前払い――エマの前には臨時休業の看板が立ち塞がった。


「すごくやる気のない店主か、はたまた店主に何かあったのか。何かあったとしてそれは良いことか、悪いことか…何れにせよ、まずは店主を見つけ出したいわね。」

 あれ以降一度も外に出ていないリサが冷静にコメントする。


「うん、そうだよね…とりあえず店主さんが住んでるところを知ってる人がいないか探してみようかな。」


「もし、見つからなかったら?」


「その時は…·、仕方がないよね…」


 見つからなかった時はどうするのか。その時は強硬手段を取ることになる。一番簡単な方法は店舗に物理的な損害を与ることだろう。店主が出てこざるを得ない状況を作り出すことが目的だ。


「3日間――いいえ…2日間で見つからなかったらその時はやるわよ。」


「うん、分かった。こうなったらなんとしても2日間で成果を出さなきゃね!じゃ、早速行ってくる」


「ええ、気をつけて」



◇◆◇◆◇◆◇


――すみません、こちらのお店の店主さんがどこにいらっしゃるかご存じないですか?

――ごめんなさい、知らないです。


 何人目になるか分からない。聞いては知らないの繰り返し。店の前で聞き込みを始めてからはや2時間。その姿はさながら探偵と言ったところだろうか…。


 エマは情報集めに苦戦していた。当たり前の話だが、単なる喫茶店の店主の所在を知る人間にそう簡単に出会えるわけがない。そう分かっていても、見知らぬ人に話しかけて、Noの返事を聞き続けるのは精神的に堪えるものがある。


 近くのベンチに腰を掛け、フー……と一息。ゆっくりと目を閉じる。心を落ち着かせようと深い呼吸を繰り返すこと数回。気休め程度かもしれないが、少し疲れが取れたように感じる。


――よし、聞き込み再開!

 ゆっくりと目を開き前を向く。


 エマの前には一人の少女が立っていた。

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暗殺者LiE 窓際希望 @madogiwa_kibou

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