第2話

「たっだいま〜」

 朝日が登り始め辺りがほんのりと明るくなる頃、一人の女性が街外れの家へと入っていった。


「おかえり、エマ」

 エマ―透き通るような銀髪のミディアムヘアの女性。


 彼女を出迎えたのは濡羽色の髪を一つに束ね、エプロンを着けた女性―リサ。


エマとリサ。ひとつ屋根の下に住む彼女たち、その正体はとある組織の暗殺者。それぞれの得意分野を活かし合いながら仕事暗殺をしている。


 そして一仕事終えた彼女たちは、一般的な日常へと戻って行く。

「疲れた〜お腹空いた〜、労ってー」


「はいはい、もうすぐできるから」


 最後にトーストの乗った皿をテーブルに置くと、エプロンを背もたれに掛けると席に着く。


「「いただきます」」

 2人の声が重なった。


「無事に終わったわね」

 トーストを美味しそうに頬張るエマを眺めながら声をかける。


「1ヶ月もかけたからね」

 少し遠いところを見るような目をしながらエマは呟いた。



◇◆◇◆◇◆◇

2人にゴドフリーの暗殺の指令が出たのは1ヶ月前の事。


 相手は国内有数の貴族でガードも硬い。更に今回の指令では派手に殺すのではなく、暗殺と悟られないようにするようにとの一言が添えられていた。


そこで今回の暗殺方法は毒殺。ターゲットを病死に見せかける、暗殺と悟らせないためには毒が一番――そして毒はリサの専門分野だ。


「今回使うのはコレとコレ」

 リサがポケットから小さな瓶を2つ取り出し並べる。


「液体の入った瓶が2つ…」


「片方は飲んだら死ぬわよ。こっちが麻酔、こっち魚から取った毒よ」


「なるほど?」

 首を傾げながら相槌を打つ。


「ターゲットを麻酔で眠らせて、こっちの毒をプスッと刺す。それで相手は死ぬわ」

然も当たり前のことのようにリサが言う。


「リサせんせ〜質問です、どうして一回麻酔で眠らせてから毒で殺すんですか?」

 エマがわざとらしく挙手をしながらリサに問う。


「そうね、この毒は個人差はあるけど死ぬまでに少なくとも1時間、長いと3時間くらいかかるわ。コレの効果は、まずはじめに唇や指先に痺れが出てフラフラする。次に運動不能、つまり動けなくなる。最後に呼吸困難になって死亡ってところかしらね。要は、死ぬまでに時間がかかるから相手が動けると色々と面倒ってことよ」

 毒について語るリサはとても饒舌で楽しそうに見える。


「でも、なんでそんなに面倒な毒を使うの?もっとサクッと殺せるようなやつもあるでしょ?」


 エマの疑問を聞いたリサは笑みを浮かべて答える。

「そう。わざわざこんなものを使う理由、ね。それはこの毒はまだほとんど知られていないし、症状的に毒とバレにくいからよ。それと――いいえ、何でもないわ」


「なるほど…」

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