第37話 アミを癒すユンの想い:前編

指が…私の胸に優しく触れた。

その指は健康的な小麦色をしている。


指が胸の敏感な所を探し当て刺激する。


私は

拒否する事なく受け入れる。


それどころか…


感じている。



もっと違う所を触って欲しくて目で誘った。


ジェヒョンは少し微笑むと

指を胸から腹の上を滑らせた。

秘部に辿り着くと下着の上から指を動かす。



焦らさないで…

ちゃんと触って…


そこ…気持ちいい…


息が荒くなる。




「はぁあ…」


自分の吐息で目が覚めた。



目を開けた瞬間、口を塞がれた。


「んっ、んっ。」


軽い力で剥がす様に覆い被さる体を押し上げると

キスするのをやめた。



「いちいち可愛いのやめて…」


「なんなの…」


「アミの体が熱いんだもん。」


「熱いと何なの?」


「誘ってるみたい…。」


「この起こし方ヤダ……」



私は夢の中でジェヒョンを受け入れ

感じてしまっていた。

ユンに触られていたから見てしまった夢。

解っているのにショックだった。





「じゃあ、ダメ?」


だけど、寂しそうに言うユンが愛おしい。

もっと求めて欲しくてイジワルしたくなる。



「今、何時?」


「10時半」


「ご飯食べたの?」


「食べたよ?」


「じゃあ、もう寝て。」


「うええ?…」


「起こし方がダメ。」


「こんななってんのにどうしたらいいの?」


そう言って、私の手を掴むと

自分の股間に押し当てた。


「疲れてるんじゃないの?」


「男って疲れてる時やりたくなるの知らないの?」


「知る訳ないし。」


「アミぃ。」


「うるさいよ。」


「ダメなのぉ?」



今日はこれくらいで許そう。


わたしだって…



「服の上からじゃなくて。…ちゃんと触ってよ…」





さっき見た夢を掻き消したくてユンに集中する。



「あぁっ。  んっ。んっ。」


声が漏れる度にキスで口を塞がれた。


「アミっ。声。我慢して。」


「はあっ、ムリっ。」


新しいベッドはユンの激しい動きにも軋まなかった。

軋まないからどんどん動きがエスカレートしてくる。

私はその動きに耐えられず声が漏れて、キスで塞がれた。


(もう…どうにでもなってしまえ…)




「やってる事バレたかもな。」


「もう、良いじゃん。向こうだってわかってるよ。」


「このベッドで寝てて『やって無い』は絶対ウソだしなぁ(笑)」


「そうだよ(笑)」



おやすみのキスをした後ユンの胸に潜り込むと

ユンはすぐに眠ってしまった。

寝息が私の前髪を揺らす。


あんな夢を見たすぐ後なのに

ユンを受け入れ満足している。



違う意味で恐ろしくなった。


ユンが居なくなったら?


私にはユンが全て。


愛の全てであり、薬でもある。


私はユン以外の男を受け付け無いのに

ユンは私以外の女も抱ける?



『連れてる女がいつも違ってた。』


ユンの胸の中で苦しくなって静かに泣いた。




“その時は私が居なかったもん”


“今だってイイ女が迫れば誘惑に負けるよ”


“ユンは私だけ居れば大丈夫だし”


“疑ってないと裏切られた時、辛いよ?”



私の中で天使と悪魔が戦っている。

天使が勝つ様に願うのに



“この先もずっとファンは居るのに。女はお前だけじゃないんだよ!”



この言葉で天使が黙ってしまった。



過去の名前も顔も知らない女達ひとたちに嫉妬している。


ファンは私を嫌うだろう。

だけど、私だってあなた達が怖い。



(何で寝てんの?寝れなくなったじゃん…。)





翌朝もユンは、私の心のモヤモヤも知らずにベッドの中で優しい笑顔を向ける。


(この人を独占しようとするから辛いのかな…)



「あのさぁ。」


「なぁにぃ?(笑)」


目をパチクリさせてふざける。

今日は特に機嫌が良い。


「ムカつく。」


「何だよ!(笑)」



1番に言いたい事を我慢して2番目に言いたい事を伝えた。


「監督に選手名簿作って貰いたいの。」


「選手名簿?」


「うん。名前、背番号、ポジションが分かるやつ下さい。って伝えといてくれる?」


「わかった。」


ユンは朝食をとる為

ベッドから出るとドアへ向かった。


出て行こうとするユンの背中に向けて

1番言いたい事を言ってしまった。




「ユンくん!浮気するならバレない様にやってね?」


「ん??ん?(苦笑)」


ユンはドアノブを握りながら、苦笑いを浮かべて振り返った。


ドアを閉めてベッドに戻ると私を抱きしめてくれた。



「何でそうなるの?(笑)」


「電話でヒョヨン先輩が言ってたから。」


「なんて?(笑)」


「連れてた女がいつも違ってたって。」


「余計なことを…(苦笑)」


「イイ女が迫ったらやっぱり…負けちゃうでしょ?だからやっても言わないでね?」


「イイ女って何?(笑)俺にとってイイ女はアミなんだけど。」


「そうじゃなくって…」


「俺は嫌だけど!?バレない様にやってなんて言わないよ?絶対に浮気はすんなよ?だから結婚したのに。」


「私はしないもん。」


「俺はやるってか?(笑)」




――トントン


「はい!」


――ガチャ


「何してるの?遅刻するでしょ?」


「今日、アミ調子悪いみたい。朝練休むよ。」


「え?行ってよ!」


「アミさん大丈夫?」


「だ、大丈夫です。」


「心配だから休む。」


「わかった。何かあったら言いなさいよ?」


「うん。」


――パタン




「ごめんなさい…。」


「アミってさ、もっとなんて言うか…。自信持って無かった?撮影とか大学の事も、俺の事も全部。それがカッコよかったのに(笑)」


「カッコいい?」


「うん。なのにその辺にいる女と同じ様な事言うなよ(苦笑)」


「他の人と同じだよ…。」


「男のつらはたける女そうそう居ないよ。」


「それは…だって…。」


「俺が取っ替え引っ替えやってた理由はアミだし。」


「なんで私?」


「アミを忘れたかったんだよ。アミの代わりになる人を探してたのに結果見つからなくて、経験人数だけ増えてさ。」


「………。」


「アミと付き合える様になってから反省したよ。」


「うん?」


「俺にとってのアミみたいに、その女達ひとたちは誰かにとってかけがえの無いひとだっただろうになって。」


「それは、そうだよ。絶対。」


「だよな。そう思って反省してんのに軽い気持ちで手出さないって。俺がもし、万が一、女に手出す時はそれはそいつに本気なんだと思うよ。」



(違う人に本気?)


胸がギューっと痛くなった。

もし、誰かに本気になったら…。

私はどう生きていけば良いのだろう。




ユンは私の顔を両手で掴み、頬を伝う涙を両方の親指で拭うとキスをした。



「ごめん(笑)イジワルしたくなった。」


「何がイジワルなの?」


「今更他の女に本気になんかならないって(笑)イジワルで言ってみただけだよ。考えてみろよ俺の方が辛く無い?」


「何が辛いの?」


「ウソクと本気で付き合ってたんだろ?2年も。今だってサークルも行動も一緒じゃん。俺可哀想(苦笑)」


「ユンくんをずっと好きだったからダメになっちゃったんだよ?」


「感情の入って無い沢山の人と、1人をずっとってどっちが重い?」


「そ、それは…。」


「だから!! もうそんな事どうでも良いじゃん!過去の事を比べたって答えは出ないし、疑い出したらキリ無いし。面倒くさいって!(笑)もう余計な事考えんなよ!」


「ん?あれ??私とユンくん…立場逆転してる…?」


「前までだったらサークルやめろとか一緒に行動するなとか言ってたかもな?言ったらやめてくれる?」


「ウソクくん。新しい彼女出来てたから気にしなくて大丈夫だよ。」


「だから何?まだ好きって言ってくるかもしれないじゃん。元カレならヤルのも簡単だよな?」


「彼女とずっとくっついてて、ずっと手も繋いでるし誰も邪魔出来ないよ。毎日どっちかの家に泊まって一緒に居ない時が無いくらい2人の世界だから、それは無いもん。」


「な?(笑)面倒くさいだろ?(笑)疑われるの。」


「………。」


「もう俺はアミを信じてるよ。アミは信じてくれないの?」


「そんな事はない…けど…。」


「入籍を公表したのに違う女連れてたら、絶対干されるよ。俺。間違いなく。」


「そっか……。」


「わかったか?(笑)」


「プロになれないかも。」


「そうだよ!」


「…ごめんなさい。」


「解決?(笑)」


「うん。まぁ、何となく(笑)」


「解決しただろ!?(笑)」


「うん…(笑)」




ユンは嫌な顔ひとつせず私の不安に向き合ってくれた。

知らない間に強くなっていたユンが頼もしい。


ベッドの上でいつまでも抱きしめ、頭を撫で続けてくれた。


ユンの一番の夢を一緒に叶えなくては。

こんな、不確かな不安に支配されている場合では無い。




ユンのために私が出来る事…。


――見えて来た気がする。




「私、今日…サークル復帰しようかな。」


「撮影してるアミもカッコよくて好きだよ。」


「今日、おじいさんに貰ったカメラ持って行ってみる(笑)」



ユンは1時限目の授業に間に合う様に出て行った。

お母さんは私に、休むよう言ってくれたが

カメラを2つ持ってワクワクしている姿を見て少し笑ってくれた。


「今日帰るの遅くなります。」


「気をつけなさいよ。」


「はい。」



今日もお母さんは大学まで送ってくれた。

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