第24話 アミを支配する怒り

ユンは振り向きもせず

校門から出て行った。


どうしてユンは私を置いて行けるのか。



憎い…

どうしようもなく憎い。


何が憎い?



私を “そんな女” だと捨てて行くユンが憎い。


浅はかな行動を取った自分が憎い。


私たちを地獄に突き落とした “あの男” が憎い。



今、私を動かすのは “怒り”しかなかった。


やっと手に入れた幸せを、いとも簡単に奪って壊した。


私だけが地獄にいるなんて許さない。



アイツも一緒に地獄に突き落としてやる…。




立ち上がると、ハナ達が支えてくれた。

居る場所は分かっている。



皆んなが居る前で知らしめてやる。

普段怒らない人間を怒らせた時、

どれだけ怖いかを。



サークル部屋に入ると5人の後輩とヒョヌ先生しか居なかった。


(もっと居ると思ったのに面白くない!)


 

それでもいい。

ジェヒョンに真っ直ぐ進んだ。




――パァーン!!


「っ…。お前ぇ!何すんだよ!!」


――ドンッ

――ガタンッ!!


「イッタ…。」


「キャー!アミィ!!大丈夫??」



ジェヒョンに平手打ちをすると、その反動で私の肩を思い切り突き飛ばした。

机に腰を強打した。



「ふんっ。やっぱり(笑)」


ジェヒョンが左頬を押さえて私を睨んでいる。



「私を好きだとかよく言えますよね?好きな女をそんな風に突き飛ばせないですよね(笑)何が目的なんです?望み通りに行きましたかぁ?(笑)」


「ご、ごめん。」


「はぁ?(呆)私たちがこのまま別れてしまったら絶対に許さない…。ここで謝っても意味がないんだよ…」



「謝るならユンに謝りなさいよ!!」



サークル部屋に声が響き渡る。

後輩達が固まっている。

どんな風に見られようが怒りが収まらない。



「キム・アミ、どうした? お、落ち着いて、話しなさい。」


ヒョヌ先生が珍しく動揺している。



「今すぐ行って謝って来なさいよ。ソウ体大のバスケ部がどこで練習してるか知ってるよねぇ?毎日通ってたんだから。今すぐ行って誤解を解いて来なさいよ!!」


ジェヒョンが私を睨む。


「クソ女が…」


「私が何したんだよ…」


「なんで、そんなにアイツなんだよ!」


「は?」


「俺の方が先にアミを好きだったのに…俺はユンがこの世で一番大っ嫌いなんだよ!」


「1年からスタメンレギュラーで、嬉しいくせに気にしてねぇような顔しやがって。クールだ?(笑)笑わせんじゃねぇよ…」



「もうやめなさい。2人ともこっちに来なさい。」


ヒョヌ先生がジェヒョンと私をサークル部屋の奥にあるスタジオに入れ、椅子に座らせた。

自分も座る。




「一から説明しなさい。」


「……………」


「……………」




ヒョヌ先生が立ち上がるとスタジオの重い扉を開け声をかける。


「キム・ハナ!手伝ってくれ。」


ハナをスタジオに入れた。


「何があった?教えてくれないか?」


「細かい事はわかりませんが、私が知っているのは、この2人は高校の先輩後輩でジェヒョンさんはアミの彼氏と同じバスケ部だったみたいです。」


「入学式の日に再会したらしいんですけど。で、このジェヒョンさんがサークルに入ってからアミに彼氏と別れるよう迫る様になって…」


ここまで話すと、ハナは手に持っていた私のスマホを私の顔にかざしてロックを解除しヒョヌ先生に渡した。

ヒョヌ先生はスマホを遠く持ち、目を細めて読んだ。


「さっき、アミの彼氏がその内容を読んで怒って殴りそうになったのを阻止したんですけど…彼氏は信じたみたいで。アミを捨てるかの様に出て行きました。」


「で、アミがキレてこの様な状態に…。って感じです。」


「アミの彼氏はこれを信じたのか?」


「はい。」


「バカバカしい。」


「ですよね。」



2人の会話を聞きながら私の頭の冷静な部分で、ヒョヨンの言葉を思い出した。




『ユン、アミちゃんの事になるとすっごくバカになっちゃうからさ。』




(それにしたって、バカ過ぎる…。誰だって分かるのに。)



「ジェヒョン。アミが言うように何が目的なんだ。こんなやり方で別れさせた所で、アミが君を好きになる訳はない。それくらい分かるだろう?」


「ただ別れてくれたらそれで良いです。アイツと付き合ってるのが許せないだけです。」


「とりあえず君のやった事は最低な行為だ。だがしかし、そこに至るまでの経緯もあるはずだ。私が判断してやろう。話しなさい。」



ジェヒョンは躊躇していたが、雰囲気で諦めたのか、

面倒くさそうに口を開いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る