第2話 匂わせ

1回目は4年越しの衝動



2回目は愛の確認



2回目のそれは、快感の余韻からいつまでも抜け出せない程だった。


愛撫で1度、ユンと一緒にもう1度

2度イカされて快楽の中でふわふわしていた。


終わった後も体が脈打ち自分では制御出来ない。



あんなに声を出したのは初めてだった。



前の彼氏、ウソクの下宿先のアパートでは声が出せず、

時々のラブホテルでもあまり声は出せなかった。



自分の変化に驚きつつも嬉しかった。

ユンに変えられていく。

本来の自分を取り戻した気分だった。


ユンを見ると、身体はこちらを向いているのに目は合わず、またくうを見ている。

しばらく眺めているとユンは目を閉じた。


行為の最中とは別人の様なユンが愛おしくてたまらなかった。

高2の時に好きだったユンがそこにいる様で逃したくない。


左手でユンの右の頬を触って撫でた。

ユンは目を開けてこちらを見た。

私からキスをした。


胸がいっぱいになって涙が“ポタッ”と音を立て枕に落ちた。

私の涙を見てユンが少し驚いた顔をして抱きしめてくれた。


「なんで泣くの?」


「幸せだから。」


「可愛いなぁ。」


「ユンくん…どうしよう…」


「なに?」


「好き過ぎて怖い…」


「大丈夫だよ。絶対に離さない。」



お昼ご飯もサービスドリンクも注文するタイミングを逃すほどベッドの上で過ごした。

16時を過ぎて2人ともお腹の音が止まらなくなり、ムードもへったくれも無くなって次の展開を話し合った。



「もう2時間もないし外出てから食べない?

化粧も直したりしたいから。」


「俺シャワー浴びたい。朝練終わってシャワー浴びなかったんだよね。」


「何?朝練行ってたの?」


「うん。あ!!」


「?」


「今日アミに会えると思ってなくて部室に練習着とか学校のカバン置いて来た!」


「バカじゃん。取りに行く?」


「明日でいいや。シャワー行く。ビール頼んどいてくれる?」


「うん。わかった。」



「お前、酒飲めないの?」


オレンジジュースを飲む私に半笑いで聞いて来た。


「うん。あんまり飲めない。」


「可愛い(笑)」


「バカにしてる?」


「してないしてない(笑)」


「ユンくんが私の事“お前”って言う時だいたいバカにするか、怒ってる時か、いじりたい時だもん。」


「そうだっけ?」


「そうだよ。」


「お前、酒飲めないんだ?」


「ムカつく(笑)」



私はユンにいじられるのが大好きだった。

昔と変わらないユンでいてくれて嬉しかった。



「ん?何これ?」


ユンがビールを飲みながらテーブルの上の赤いレースのパンティーに気が付いた。


「バレンタインのプレゼントだってさ。」


手に取りじーっと見た後


「趣味悪っ」


と、元の場所に戻した。


(だよね?(笑))



あまりの空腹に17時ごろにホテルを出た。

私は半分払いたかったのに、ユンは払わせてくれなかった。



「あ、お母さん?今日帰らないけど良い?えーっと多分、学校で寝れる。うん。わかった。はーい。じゃあね。」


――ピッ



「簡単だな?」


「もう、大人なんですけど?」


「ジュース飲みながら言わないでくれる?(笑)」


「ユンくんはお酒強いんだね?」


「うん、なんか、強かったみたいだね。」



駅に向かう途中17時から開いている居酒屋を見つけて入った。


今日はどうしても離れる選択が出来ない。

朝まで一緒にいる事にした。




「明日は学校終わったら予定あるの?」


「明日は17時から22時までバイトがある。そのあとは帰るだけだよ。」


「じゃ、迎えに行く。」


「ふふ(笑)」


「バイトって何してんの?」


「レンタルDVD屋の店員。映画紹介のPOPとかも作ってるよ。」


「ふーん。好きな事やれてるんだね。どこの店?」


「南部ターミナルの南口に二階建てのおっきな所あるじゃん?」


「あぁ、あるね。」


「あそこ。」



またホテル街に戻って19時から宿泊料金だけで入れる所を探した。

ユンに、料金の割り勘が条件である事を承諾させて入った。



「あぁ…あんっ、あっ、ユンくんっ」


「はあ、はぁ、アミ!」


「あっ、ダメっ、イッちゃうっ」


「あ、俺もっ、イクよっ」



3回目は放心状態になる事もなく、優しく抱きしめてくれた。

ずっと裸のまま抱き合って話をしていた。



「ヤバいな(笑)俺…」


「うん?」


「覚えたての猿みたいになってる。」


「なに?どうゆう事?(笑)」


「エッチがこんなに良いものだって知らなかった。アミとするまで。」


「ウソでも嬉しいよ(笑)」


「信じなくても良いよ。」


「私も、こんなになっちゃうの初めて…」


「すごく可愛いよ。」


「ふふっ」


「一緒にいた頃は絶対に手が出せない。とか思ってたよ(苦笑)」


「じゃあ、あの時付き合ってたら全然こんなのなかったかなぁ?」


「いつかはあったとは思う、よ? 触りたい。とか、やりたい。って気持ちは、あるにはあったから。」


「そうなの?よく我慢したね(笑)」


「アミ、胸大っきくなったよな。」


「知らないくせに。何言ってんの?」


「あんだけ近くでずっと一緒に居たのにバカだろ? ガン見してたよ!(笑)」


「はぁ?(笑)」




――ピロンッ♪


――ピロン♪


――ピロンッ、ピロンッ♪



「何?」


「LINEだよ。」



ベッドから出てテーブルの上に置いてあったスマホを取って戻った。



「男?」


「かもね?」


「チッ」



ベッドの中に入り仰向けになってスマホを両手で持ち画面を開いた。

ユンが私の右頬に頭を付けて一緒にスマホを覗き込む。




《LINE》


ジアン:みんな元気?


ソア :元気ー!


テヨン:そろそろ会いたいねぇ。


ジアン:アミどう?立ち直れたか!?

    そろそろどうだ?





「え、ジアちゃん達?」


「そう、ジアン、ソア、テヨン、ユリの5人のグループ。月に1回は必ず会ってて彼氏紹介しあったりしてるの。最近ちょっと保留にしてもらってたんだよね。」




高2の春、同じクラスになったジアンとソアと友達になり、ユンとユンの幼馴染2人の6人グループで仲良くしていた。

テヨンとユリは高1の時に出来たユンのファンクラブのメンバーで私に敵対心を向けるどころか親切にしてくれて、それ以来仲良くしている。



《LINE》


アミ :ごめんね。もう元気だよ。

    聞いて欲しい事もあるし会おう!


ユリ :心配してたよー。良かった。


ジアン:じゃあ、早速次の日曜日はどう?


ソア :私行けるー


ユリ :私も!




「日曜日だって。」


「行けば良いじゃん。」




《LINE》

 

アミ :私も行けるよ。


テヨン:じゃ、いつもの所に18時ね!





「あ!私たち!」


「交換してない(笑)」



電話番号、LINE、メールアドレス、インスタグラムを繋げた。



ユンのインスタを見るとバスケをしている事が分かるくらいでユンだと分からない。

ジャージ姿でバッシュを履き足を組んでいるのを上から撮った自撮り写真が唯一の露出だった。



私の方も一切自分を出していない。

私の所属する撮影サークルの撮影の一コマや、撮影に協力してもらった俳優科の生徒を宣伝の一環で写真を出したりしている。



「匂わせしちゃう?(笑)」


「良いよ?(笑)」



色んな写真を撮ってみたけど、どれもピンと来ない。

結局、手を繋ぐ同じ写真を投稿する事にした。

男性の手と、女性の手だと分かる構図で指を絡めて撮った。

ユンは美しいほど色が白いので見る人が見たらわかってしまいそう。

写真の色を加工した。

キャプションは『♡』だけ。

2人同時に投稿!



これだけの事なのに幸せだった。

キラキラとイケてるカップルだけがやるような事を自分もしてしまうなんて。

世界一幸せな女子大生になった気分だった。



友達が、私の相手は誰なんだと探ってもユンには辿り着かないだろう。

みんなが知ったらどんな顔するのかな。




3分後だった。



「あ!LINE来た!(笑)」


「なんて?(笑)」


一緒に私のスマホを覗き込む。




《LINE》


テヨン:アミのインスタ!


ソア :だれやー!!


ユリ :まさかウソクくんじゃ無いよね?


アミ :違うよ!


テヨン:いつの写真?


アミ :今さっき


ソア :きゃー!!


ジアン:説明しろ


アミ :今日彼氏が出来て今一緒にいる。


テヨン:展開が早過ぎて頭追いつかない!


ジアン:紹介してよ?


ソア :日曜日連れて来なよー


ユリ :そうだよ!会ってみたい!




「どうする?(笑)」


「いいよ、行くよ(笑)」



今週の日曜日、4人とユンを再会させる事が決まった。

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