時を超えて〜Another story〜

とっく

第1話 2人の始まり

大学3年、2月。


誰がこの様な運命を予想できただろうか。

お互いの気持ちを知っておきながら、幼さゆえに実らなかったこの恋が、時を超え成就するだなんて。


いま、目の前には確かにユンがいる。

高校2年の時よりも背が高くなって、身体も少し大きくなったユンが目の前で笑っている。

少し長めの髪は茶色に染められ、両耳にはシルバーのフープピアスが揺れている。

4年という時の流れは見た目だけを変え、気持ちは変わらなかった。

それは、ユンだけではなく


私も同じ…。





私たちの原点である出身高校の渡り廊下から職員室に向かい、2年の時の担任の先生にお礼を言って母校を後にした。


今日の授業を休む事にした2人には、たっぷりと時間がある。



「どこか行く?」


「うん、行きたいトコがある。」


「どこ?」


「行けば分かる。」


そう言って目的地を教えてくれない。

駅に着くと私の分の切符も買って渡された。

2つ先の駅だった。



電車の中は座席が程よく埋まっていて

混雑は無かった。



扉の左のかどにもたれているユンの足の間に立ち、左耳を胸にくっつけ抱きついた。

ユンの右手が私の背中に添えられている。

ユンの呼吸する動きに合わせて、私の視界が左右に揺れる。

今日は雲の流れが早い様だ。



――人前でイチャイチャするとかありえない。



1ヶ月前に別れたウソクと付き合っていた時はそう思っていた。

公共の場所で抱きつくなどありえなかった。

相手が変わると自分の感覚も変わってしまうのか。


高2の時のクリスマスデートで混雑する電車の中、ユンにくっつかない様に踏ん張って耐えていたのが懐かしい。



左耳に聞こえる音に集中してみる。

聞こえてくるユンの鼓動が、少し早い気がする。

(可愛い♡)

笑ってしまう。



「何が面白いの?」


「何も無いよ?」



この辺りで1番の繁華街で降りる。

少し歩いて人通りの少ない一角で足を止めた。


「ここ来た事ある?」


「うん。あるよ。」


「アミの入った事のあるとこ教えろよ。入った事ないとこ入るから。」




――ラブホテル街だった。




「ユンくんは?」


「ほとんど入ってるから俺のは気にすんな。」


「はぁ?それズルいじゃん。ってかユナちゃんが言ってた事ホントなんだ?」



ユンの元カノ、ユナが私と同じ大学にいて

そのユナがジロジロと私を見てくるので思い切って声を掛けたら

いま、ユンくんと付き合ってる。

ユンくんがずっと好きだった人が気になって見てた。

と言われた。

それ以来なぜか仲良くなり、ちょこちょことユンの事が耳に入っていた。




「何?」


「ユナちゃんが言ってたまんま言っていい?」


「うん。」


「『あれはただのヤリチンだよ!別れて正解!』」


「チッ。」


「しばらく悪口言ってたよ? あ!性病とか大丈夫だよね?うつさないでね?」


「なった事ねぇよ!!」




「ここ入った事ある。」


「はい、次ー。」


一つずつ、料金やホテルのコンセプトなどを見ながら歩く。


「ここ可愛いなぁ。でも値段がなぁ。そこは入ったよ。」


二軒隣を指差した。


ユンはキョロキョロと辺りを見渡すと手を引いて、明らかに高級なラブホテルの前で立ち止まった。


「ここは?」


「こんな高いとこ入るわけ無いじゃん。」


「じゃあ、ここにしよ。俺が払うから良いだろ?」


「それなら余計にダメだよ!もうちょっ」


「ここ! ここだったら俺も入った事ないから。」


「じゃあぁ…仕方ない?ね?」



高いだけあって、ほとんどの部屋が空いていた。

朝6時から18時までのフリータイムで飲み物が4杯サービス。

お昼ご飯はルームサービスで何か食べようと中に入った。



ユンは部屋の玄関に入ると、持ってくれていたノートPCなどが入った大学用のカバンをスリッパの横に置き、私の顔を掴むと上を向かせた。


玄関のピンライトが眩しくて目が開けられなかった。

その時ふと、


(今日、生理じゃなくて良かったな。)


と思った。

女ってこんな時でも頭ん中、冷静だったりするよね。

なんでだろ。



ユンが激しくキスをする。

さっきまでとはまるで違う、人が変わってしまったかの様な濃厚なキスだった。


キスをしながらコートを脱がされ、自分も脱ぐとそのままベッドまで連れて行かれた。

ベッドに倒されるとセーターを脱がされスカートの中から下着に手を入れられた。


慣れ過ぎていている。

この人は本当にユンなのか?

別人の様に感じる。



「ちょっ、と待って、シャワー浴びたい!」


「ダメ。行かせない。」


「お願いっ。 あっ…」


「もう、こんなになってるよ?音聞こえる?」


「やめて…あぁっ」


しばらく触られて抵抗する力が無くなると、着けている物を全て脱がされてしまった。


自分も全部脱ぐとその体制に入った。


「入るよ?」


「うん。」



「はぁぁ…」

「ひぃっ……」



奥まで入ると動きを止めた。

体に電流が流れたみたいだった。

頭から足の先まで、全身に鳥肌が立つ。

ユンの両腕に触れると、ユンの腕にも鳥肌が立っていた。

キスをすると、ゆっくり動き出した。


「あっ…あ、気持ちいい…」


「アミ…愛してるよ…はぁ、はぁ」


「あっ、愛してるっ」


「はぁあ、なんだこれ…」





「アミ!ダメだ、我慢出来ないっ」


「いいよ?イッて…」



その言葉を聞くと、ベッドを軋ませながら激しく動かし私の体の上に出した。



ユンは黙って処理をして、私の横に倒込んだ。

肩で息をしながらくうを見つめて一定の速さで強くまばたきをしている。


私はその様子が不思議で、隣で横になりながらしばらく顔を見ていた。


・ 


「シャワー浴びてくるね。」


「ん」


まだくうを見つめた状態で答える。


(どうしちゃったんだろう…)




シャワールームに行くと手前の洗面台には、沢山のアメニティーグッズがあって、ちょっとテンションが上がった。

足りない物があればフロントに電話する様に書いてある。


(足りないって事あんの?)



シャワーを浴びながらユンの様子が気になった。

と、で全然違っていて怖くなった。


(早く出て確認しよう)



素早くシャワーを済ませ寝室に戻ると、ユンは布団をかぶって横になっていた。

頭だけ見える。


「寝てるの?」


返事は無い。


冷蔵庫からサービスドリンクとは別の、無料のお水のペットボトルを出し


「お水飲む?」


と聞いたが返事がなかった。

どんどん不安になって行く。

過去に経験した女の人達と比べて、私は劣っているのかもしれない…。


ソファーに座って、お水を一口飲んだ。


ガラスのテーブルに目を落とすとそこには、バレンタインの特別プレゼントとして赤のレースのパンティーが梱包されて置かれていた。


(履いてとかって言われたらヤダな。)



寝ているユンを起こさないように、散乱するコートや服を片付けた。


ソファーに座っていると寒くなってしまった。

ユンの体に当たると起きてしまう。

そっと、掛け布団の端ギリギリの所に入った。


するとユンが急に近づき、私の体を引き寄せ


「何してんの?待ってんのに遅いな。」


と言った。


布団の中でバスローブを脱がされ、ピッタリとくっついて抱きしめてくれた。

暖かかった。


「冷てぇ。」


「寝てなかったの?」


「寝てないよ。」


「じゃあ、何してたの?」 


「アミの事、考えてた。」


「私、何か違ってた?」


「ん?」


「全然良くなかった?」


「逆!」


「逆?」


「良過ぎてワケわかんないだよ。いっぱい確かめないと。アミを。」


2回目はゆっくりゆっくり愛してくれた。

終わるとまた放心状態になった。


そんなユンが可愛くて、愛おしくてたまらなかった。

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