第4話強すぎる先輩彼女と心配性な側近の話。
「というわけで今年の文化祭の出し物はメイド喫茶やります!」
いかにも少女漫画にありそうな話題。
嬉しそうに固まって話す女子達を横目に一人スマホを見る。
「紫乃宮先輩文化祭来てくれんの?!」
「まだ分かんねーの。」
勢いよく聞いてきた優太に冷たく返す。
「大学忙しいらしくて。」
「あーね、俺会いたいんだけなぁ。」
優太のみならず卒業してもなお、先輩人気は凄まじい。
ピピッ
スマホがメッセージを受信する。
『大学のことは大丈夫やから気にせんとって。絶対行くから楽しみにしとくな。』
「…お前愛されてんなぁ。羨ましいわ!!」
「ちょ、勝手に見んなよ!」
スマホを覗き込んでいた優太に言う。
とても嬉しくてついにやけてしまった。
『ありがとうございます。無理しないでくださいね。』
くまがハートを抱きしめるスタンプと共にメッセージを送った。
「先輩のためにも頑張るか…。」
俺にとっての最高のモチベーションとなった。
______________________________
「文化祭明日か…。」
桃瀬くんから文化祭のメッセージが来てから二週間。
定期的に送られてくる出店の報告を聞きながら内心焦っていた。
「何でこんな時に…。」
折角大量の大学用課題を終わらせたのに、現在新たな問題が発生している。
「紫乃宮さん、ここです。」
「ありがと。」
組員の一人に誘導されて来たのは以前弥生組が壊滅させたある組織。
「ほんま卑怯やで…。」
弥生組への報復かみーちゃんが人質として拉致されているらしい。
組織、というか組長の要求は弥生組当主とタイマンを張ること。
「明日に響かんとえぇけど…。」
桃瀬くんのためにも頑張るか。
_____
宮野先輩が人質に取られ、俺如月 瑠衣はとんでもない戦いを目にしようとしている。
「まさかお前が弥生組当主か?笑わせんなよ、女なんか話になんねーから。こんな組織弱いに決まってんだろ!!」
「…。」
相手の早速の煽りに面を食らう。
周りの何人かの組員も怒りに震えているようだった。
律さんは顔色一つ変えない。
「普段なら話し合って解決するんですが…その様子だと長引きそうやしやめときましょ。」
こんな時まで相手に敬語を使えるのがすごい…。
「見るからに弱そうやし五分で片付けるわ。みーちゃんの治療したいから急げるように車回しとってくれん?」
そして相手への煽りもしっかり忘れない。
「ごちゃごちゃ言ってんじゃねーぞ!!!!」
流石に弱そう発言には相手も怒ったらしく、素早いパンチが律さんに向かう。
「…え?」
そっからはなんと言うか…一瞬だった。
パンチをさらりとかわし、みぞおち付近に腹パンを食らわす。
相手はばたりと倒れ律さんは涼しい顔のまま。
「ありゃ折れてんな…。まぁ内臓破裂までいかなきゃ大丈夫か。」
隣にいた組員が言った。
一体今までどんな喧嘩をしてきたのだろうか…。
「律さん…すみません、私が弱いばかりに…。」
「宮野先輩!」
組員一人に救出された宮野先輩が弱々しく言った。
「怪我は?なんもされとらん?」
「…連れ去られる時にかすり傷を負った程度です。他はなんとも。」
宮野先輩は連れ去られてしまったことに責任を感じているようだった。
「怪我…したんか。報復は予期できとった、完全に私の管理不足や。ごめん。」
「そんな…謝らないでください!」
多少のかすり傷でさえこの有り様。どれほど宮野先輩が大切にされているか分かる。
「…まだ終わりじゃねーぞ!!」
さっきまで気絶していた組長がよろよろと立ち上がって宮野先輩に襲いかかろうとする。
「律さん…?」
目の前の光景に頭が混乱する。
律さんの手には拳銃があり、組長のこめかみに当てた銃口が相手の動きを静止させた。
「…みーちゃんに近寄んな、往生際が悪いで。」
「…。」
相手もだいぶ混乱していたようで返す言葉もないようだった。
「本当に打つ気じゃ…!」
宮野先輩が止めに入ろうとする。
「なーんてな、殺られる覚悟も無いのに喧嘩売っちゃあかんよ。次はもう無いから。」
「…すみませんでした……。」
律さんの圧に相手もたじろぐ。
俺らは組の元を去った。
______
「律さんが拳銃使うとこなんて、初めて見た…。」
本当に打つかと内心ヒヤヒヤしていた。
「…拳銃なんて、警察に見つかったらどうするんです?」
「あぁ、あれおもちゃやから。この前ネットで見つけて買ってみたんよー。」
心配する宮野先輩を他所にケロッとした顔で言う。
「買ってみたんよー、じゃ無いですよ!!本当に心配したんですからね…。」
「みーちゃんが無事ならそれで良かったんよ。まぁ、本物なら打っとったかもしれんけど。」
ニコッと冗談交じりっぽい口調で言った。
「絶対冗談じゃ無さそうだけどな…。」
そんな事を思って律さんの恐ろしさを再確認することとなった。
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