第3話かっこかわいいヤンキー彼氏の話。

「先輩、その節は色々ありがとうございました!今日は俺の奢りなので思う存分食べて下さい!」


現在桃瀬くんとスイーツバイキングデート中。

勉強会のおかげで何とか追試にかからずに済んだらしい。


「ほんまに良かったねー。お疲れ様。」


嬉しくて思わずにやけながら言う。



他愛もない話を弾ませ一息ついた頃桃瀬くんが神妙な面持ちをして言った。





「あの、先輩。」


「ん?」




「俺、ちゃんと彼氏出来てますかね…。」


「…。」



桃瀬くんは時々私の彼氏でいることに自信を無くす。

そんな事絶対ないのに。



「出来とるに決まっとるやろ、そんな悲しまんとって。」



「ごめんなさい…。俺先輩に頼ってばっかで、先輩のこと大好きなのに…役に立ててないのかなって。」


桃瀬くんの頬に涙がつたう。




「役に立たんと一緒におったら駄目なん?」



「…。」



「私は役に立って欲しいから桃瀬くんと一緒におるわけやないで。私も桃瀬くんのこと大好きやから、一緒におりたいんやけど。」



我ながら照れくさいことを言ってしまったと思った。



「俺も…一緒にいたいです。」




嬉しそうににかっと笑った。

ほんまに可愛い彼氏を持ったなぁ…。



「これ美味しかったで、食べてみ?」


「…美味しいです!!」



ケーキを食べるごとに表情が明るくなる。



「良かったなー、こっちも食べてみ?」


「美味しい…!!」


パシャ


ハムスターのように沢山頬張っている様子をカメラに収めた。



「ちょ、撮らないで下さいよ!恥ずいし…。」


「大事な思い出やから、堪忍なー。」


そんな事を言いながら二人で笑いあっていた。


_______________




「すみません、ちょっとトイレ行ってきますね。外にあるみたいなんで少し遅くなります。」


「えぇよ、待っとくな。」


そう言って外へ出るのを見送った。




「さて、コーヒーでも飲もっかな…。」


「おねーさん可愛いっすね!連絡先教えてよ!」


ドリンクバーの近くの席からそんな声が聞こえた。

ちらっと見てみると従業員と見られる女の子が言い寄られている。


「すみません、仕事中ですので…。」


「はぁ?大人しくはいって言っとけばいいんだよ!舐めてんのか?!」


男が声を荒らげた衝撃で店内が静まる。



「ほら、連絡先。早くしろよ。」


「…。」


男から睨みつけられた従業員の女の子は酷く脅えているようだった。



「早く!!!」


「お姉さん、大丈夫ですか?もう下がって貰ってえぇですよ。」



男と従業員の間に割って入る。


「あ?てめぇ何勝手に言ってんだよ!!」


「お姉さんも周りのお客さん達も怖がってますよ。あんまり声、荒げんといて下さい。」


「何を偉そうにッ!!」


勢いよく拳が降り掛かってくる。



桃瀬くんまだかかるんかな…まぁ、




「いっか。」





ゴキっという音を立てて男は倒れた。

多分あばら折れとるな…。



でもやったのは私じゃない。


「何ぼーっとしてるんですか…俺が来なかったらどうするつもりだったんです?」



…流石にやりすぎや。」


思わず笑ってしまった。



「すみません、でも先輩殴られそうになってたし…怪我無いですか?」


「うん。ありがと、助けてくれて。」


「無事で良かったです…!!この人、どーしよ。」


桃瀬くんが男をつついても一切反応は無い。


「一応警察呼ぼっか。」


「俺、捕まります…?」


「大丈夫に決まっとるやろ。」


不安そうな桃瀬くんの頭を撫でる。




「あの、助けて頂きありがとうございました!!」


奥から出てきたのは最初に絡まれていた従業員だった。


「いえいえ、何もなくて良かったです。」



「先輩…人助けのためだからって流石に無茶しすぎです。ほんとに殴られてたらどうするんですか…。」


「ごめんごめん。」


苦笑いして言った。



しばらくして警察が来ると男は連れていかれた。


桃瀬くんの一撃は店を守るための正当防衛となり捕まることなく事なきを得た。



「散々な目に合いましたね…。」


「でも桃瀬くんのかっこいいとこ見れたから満足やわ。」


冗談交じりに言った。




「俺、先輩のこと一生守りますから。」


「ありがと。」



そんな事を言って今日も楽しいデートは終わりを迎えた。



______________________________

「律さん、危ないことするなぁ…。桃瀬さんが居たから良かったですけど大丈夫なんですか?」


俺、如月 瑠衣は先輩である宮野さんと共にデート中である律さんの護衛に来ていた。


「大丈夫。下手に出て行かなくて良かったよ。バレたら大変だし。」



「律さんはこの護衛止めてますけどやっぱ危なっかしいですね…。もしあの時殴られてたらと思うと身の毛がよだちますよ。」


「…だな。」


律さんはとても細い、すらりとした体型は綺麗な女性そのものだ。

とても弥生組当主とは思えない。



「てか、律さん喧嘩出来るんですか?俺見た事ないんですけど。」


「…。」


「宮野さん?」



急に黙り込む。

俺何かやばいこと言った…?



「知らなくてもいいけど一応知っとけ。組の中で一番強いのは律さんだよ。私ら二人本気で立ち向かっても余裕で勝たれるから。」


「…ガチっすか。」


衝撃の事実に言葉を失う。




「まぁ、死にたくなければ逆らわないこと…だな。」


「…はい。」



これまで以上に逆らわないことを決めた。









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