12/11(月) 真珠
その箱には「特価」と書かれたラベルがついていた。茶色いクラフト紙が貼られた無地の紙箱だ。値段を見ると、確かに安い。小学生でもパッと買える値段だ。
「……え?」
そして蓋を開けたわたしはきょとんとなった。
「つまり……偽物ってこと?」
「いや、本物ですよ」
「で、この値段?」
「ええ」
箱の中にはコットンが敷かれ、その上に直径五センチを越えようかという巨大な真珠が乗っていた。まんまるで傷ひとつない、真珠の価値はわからないが、何億とか言われても納得しそうな、つやつやでものすごく綺麗な真珠である。
「なんでこんな叩き売りしてんの……? 加工されてないから?」
「提供者がね、貝なんですよ」
「は?」
「このばかでかいゴミを引き取ってくれないかって、そう言われたので。まあゴミとしての価格で売ってます」
「は?」
意味がわからない。
……うん、本当にわからない。
「まあ、誰かにとってはゴミでも、自分にとっては価値があることなんてよくありますからね。購入されるなら止めませんよ」
「いや、言い方」
よくわからないが、別にいらないかなと思ったので蓋をして元の場所に戻す。さすがにゴミとまでは思わないが、このサイズだとアクセサリーにもならない。パッと見で《真珠の耳飾りの少女》のイヤリングの倍くらいある。
「なんか……クソデカ真珠コレクターとかに見つけてもらえるといいね」
「そうですね」
頷きあったが、その後が続かない。
なんともいえない沈黙が気まずくて、私は早々に店を出た。
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