今現在でも、テーマとしては、倫理観の曖昧な境界を行くお話しだったと感じます。
細胞は、どこまで分裂したら自分の物ではなくなるのか、いや、そもそも毎日何千、何万と死んでゆく自分の細胞に愛情を注がないように、「無関係」と定義した女性側の認識と、「親子関係」を認識した男性側とでは、永遠に埋まらない溝は、確実に存在するのでしょう。
この作品の女性には、何か野生動物のような倫理観の薄さを感じつつ、男性の側には、文字を小説と認識出来る「人間」を感じてしまうのは私だけでしょうか。
生まれる前には感じなかった愛情とは、共に生活していたら生まれる付随的なものなのか、自分の子供と「認識」した瞬間に発生するものなのか考えてしまう作品です。