第392話 開幕のゴールショー
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
『決まったぁー!日本先制点!神明寺のロングパスから室の天にも届く勢いのヘディング!守備を固めたマレーシアからパワープレーで決めました!』
『今の日本にはこういう事が出来るんですよね!室君という高さは大きな武器ですよ!』
日本の先制ゴールが決まり、大盛り上がりのカタールスタジアム。
室へとチームメイト達も駆け寄り祝福する。
守備を固めていた相手から早い時間帯の先制点、Uー20ワールドカップへ向かう為の第一歩として幸先が良い。
「相手さん攻める気無いよー、ドンドン行こうー!」
先制されたマレーシアだが守備意識は変わらない、まだ1点差に加えて前半はまだ半分以上時間がある、慌てる時間帯ではない事は確かだ。
このまま僅差のビハインドを保って反撃を待っているか、どちらにしても弥一が彼らの心を見れば攻めて来るという気持ちは無い。
マレーシアのキックオフで再開され、ペースを乱さずパスを回していくが甘めとなったパスを辰羅川がインターセプト。
「(左、空いてる!)」
再びマレーシア守備陣がゴール前へと戻って守備を固める前、左サイドのスペースが空いているのを辰羅川は発見するとすかさず右サイドから右足でボールを大きく蹴り出す。
左サイドの空いたスペースは月城も発見、そこに右からのサイドチェンジとなるボールが迎えば自慢の俊足を活かして走る。
『インターセプトした辰羅川、右から月城へサイドチェンジ…通った!』
『相手まだ戻りきれていませんよ、これチャンスですね!』
左斜めからエリアへドリブルで侵入して来る月城、彼の前にはDF1人とGKだ。
そのまま挑む、と見せかけて月城は軽く左足で右へとDFを引きつけてパス。
これに走って来ているのは照皇。
得意の右足で蹴ったボールはゴール右下の地面スレスレを飛ぶ低空飛行、GKがこれに飛びつき目一杯左腕を伸ばすが届かない。
室に続き照皇が2点目のゴールを決めると、会場を再び歓声が包む。
『2点目ー!辰羅川のインターセプトからサイドチェンジで月城へと繋ぎ、最後は照皇と八重葉の先輩後輩ホットラインが炸裂!2ー0とマレーシアを早くも突き放しましたぁ!』
『相手の守備が整う前に上手くカウンターを決めましたね!これは辰羅川君が良い速攻を見せてくれました!』
早々と2点目を決めて照皇を中心に喜びの輪を作っていく日本イレブン、一方のマレーシアは早くも2点差にされて焦りが出始める。
このままでは2位の5枠狙いでも得失点差の争いで大きく不利になってしまうと。
「大舞台の初戦、固くなる恐れもあったけど大丈夫そうですねー」
「日本の高校やユースでビッグゲームを経験したりフランスで戦ってきた連中だ、そこは問題ないだろう」
2点にリードを広げてベンチスタートの白羽、藤堂は共にこの試合は大丈夫そうだと思い安心して見れている。
目の前のフィールドでは日本が速いパス回しでマレーシアのプレスを躱す姿があった。
『マレーシア積極的にボールを取りに行く、三津谷渡さない!』
流石に点を取らなければとマレーシアも攻めの意欲が出て来ている、ボールを持った光輝へと向かうが巧みな足捌きでキープして渡さない。
右サイドを走る辰羅川へとパスを出すと、目の前に立ち塞がる相手をマシューズフェイントで翻弄し、相手の重心が傾き釣られた所へ一気に抜き去り進む。
辰羅川が右から高いクロス、マレーシアDFは先制点を決めた室をマークしているが彼にボールは向かわず照皇の方へと行っていた。
彼の前にもDFが居てヘディングが来ると予測し、ブロックに備える。
しかし照皇はこれをスルー、韋駄天の如く前線まで飛び出して行く後輩が見えたからだ。
ボールをトラップして受けたのは月城、そこから左足が左斜めの位置から放たれた。
勢い良く練り込んだシュートはゴール右上のネットへと入っていき、照皇が撃って来ると思ったDFやGKは反応しきれず。
『3点目ー!月城、アシストに続きゴールも決めてみせた!止まらない日本の勢い!』
日本のゴールショーに喜び盛り上がる観客、サポーターへと月城は気取った感じでピースを決めてみせる。
同時刻、別会場でも試合は行われていて赤いユニフォームを纏う軍団が圧倒していた。
韓国VSインドネシアの試合だ。
韓国の司令塔から出たスルーパスに反応し、右サイドからDFラインの裏を抜け出したユンジェイがボールを受けると右斜めへと速いドリブルでぐんぐん突き進む。
飛び出してくるGKに構わずユンジェイは右足でシュート、豪快にネットを揺らしていた。
『韓国4点目ー!前半だけで韓国のエース、ユンジェイがハットトリックに加えての1点!止まらないぞ韓国の虎!!』
この試合で既に4点と前半で荒稼ぎ、韓国の虎と言われる彼は声援を送る韓国サポーターへと応えていた。
しかし此処でユンジェイは交代で下がる事になり、密かにダブルハットトリックを狙っていた野望は幻となって消えてしまう。
「まだやれたのに」
「先は長い、この先もお前の力は必要なんだからゆっくり休んで次に備えろって」
体力にまだまだ余裕があったユンジェイは下げられて不満そうだが先の長いアジアカップ、此処は温存しておけと韓国コーチに言われて渋々納得するしかなかった。
エースは去ったがそれでも韓国の優位は動かない、インドネシアの反撃を守備陣がしっかり跳ね返しチャンスを与えなければ、隙を突いて大人数で相手ゴールへと雪崩込んで怒涛の攻めを見せる。
優勝候補の名に恥じぬ圧倒的な試合、後半も攻撃陣が4点を加えてインドネシアとの初戦を韓国は8ー0と大差で下し力を証明してみせた。
「8ー0は中々無いよな、俺達が最多得点チームじゃないか?」
大勝の韓国、そのロッカールームでは互いに笑い合って自分達が今大会で1番多く得点出来たのではと冗談混じりに話していた。
「…え?」
韓国の選手が自分のスマホを見てアジアカップの速報をチェックすると、彼の目に止まった試合結果がある。
「マジか…?日本、マレーシアに10ー0だって」
「!?」
ライバルの日本が自分達を上回る2桁得点の大差を叩き出したと聞いてユンジェイや他のチームメイトは揃って反応。
記事には日本の攻撃がビッグバンを思わせるような大爆発!という見出しから始まる。
前半で月城が獲得したPKも蹴って今日2点目をマークし2ゴール、1アシストの活躍を見せると後半からベンチへと下がる。代わって優也が入り想真からのスルーパスに反応して左から抜け出せばGKを躱し今大会初ゴールをマーク。
2トップの照皇、室も奮闘すれば照皇は右足ボレーで2点目。室は圧倒的な高さからのヘディングで追加点。
マレーシアは日本の攻守にバタつき、焦りからゴール前でオウンゴールも献上してしまう。
光輝の直接FKも決まり更にアディショナルタイムも優也がトドメの一撃を加えて日本は10ー0と2桁得点を達成、これがアジアカップの初戦で最多得点差のゲームとなった。
イケイケな攻撃陣が圧倒してくれたおかげで今回は弥一達DF陣の出番はほとんど無く、アジアカップの初戦を最高の形で終えて心置きなく次戦のベトナムとの試合に備えられる。
この時はまだ、日本のスコアが目立ってベトナムVSヨルダンの試合でアクシデントがあった事に気付く者は誰もいなかった…。
日本10ー0マレーシア
照皇2
室2
月城2
歳児2
三津谷1
オウンゴール
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此処まで見ていただきありがとうございます。
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政宗「立見や牙裏を見てきたせいかな、2桁得点にあまり驚かなくなってきた」
佐助「本来ならサッカーでそんな事は滅多にないはずなんだけどな…この世代だとそうでもないのかと最近思うわ」
弥一「昔の日本もそれぐらい、またはそれ以上取っていたそうだよー、偉大なる先輩達にまだ僕達負けてるからもっと行かないとー」
政宗「マジか、先輩ぱねぇわ…!」
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