第391話 Uー20ワールドカップへ向かう初戦 日本VSマレーシア
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「や、おまたせー」
カタールに到着した翌日、海外組の白羽と藤堂がチームに合流。久々の再会となる者達へ白羽は軽く挨拶を交わす。
「藤堂だ、よろしく頼む」
「あ…緑山っす…」
初顔合わせとなる者へ挨拶する藤堂、明もそれに応える。
「どうも、源田です。よろしくお願いしまーす」
「おお、噂のブラジルからの21人目か。よろしくなー」
21人目でFWとして発表された光明、彼の経歴についてはブラジルの3部に所属するクラブの一員として知られており白羽や藤堂もそれは知っている。
海外組の2人も加わりメンバーはこれで揃った、後は初戦のマレーシア戦まで準備を整えるのみだ。
「寒い日本と比べるとこっち暑いぐらいだなぁ」
「カタールは2月でも気温20度以上を行く事がある、しっかりと水分補給はしておけよー」
2月の日本では長袖ユニフォームが当たり前だったが、カタールの地に来てからは皆が半袖。
練習で流れた顔の汗をタオルで拭う影山、カタールの2月の気温を事前に調べていた春樹は自ら水分補給しつつ他の者にもそれをした方が良いと勧める。
2月だがカタールの暑さも日本の敵となってくる可能性がある以上、暑さ対策も頭に入れた方が良さそうだ。
初戦のマレーシアに出るスタメンの11人が発表される。
GK大門
DF神明寺 仙道(佐) 青山
MF三津谷 月城 辰羅川 仙道(政) 八神
FW照皇 室
今回はまだ合流してコンディションが充分ではないとされて白羽、藤堂はベンチ。新たな選手もスタメンには出さずUー19の頃から代表で戦ったメンバーが選ばれた。
そしてマレーシア戦を迎えた当日。
「リーグ戦でもあるのでただ勝つだけでなく得失点差も重要となります、かと言って単純に攻撃的に攻めても引いて守ってくるであろう相手をこじ開けるのは簡単ではない…」
試合前のミーティングでマッテオは相手のマレーシアが引いて守ってくると予想。
ランキングでは日本が圧倒的に上でマレーシアは格下の相手、その彼らが格上の日本を迎え撃つ時は守備的に来ると想像は難しくなかった。
引いて守って1本のカウンターを物にする、これをいかに崩すかが今日の試合の鍵だ。
「慌てずマイペースに進めましょう、最悪前半0ー0でハーフタイムでも構いません」
首位突破の為には攻撃的に行ってなんとしてもゴールが欲しいとなるが、マッテオはそんな攻撃的に行かなくて良いと話す。
無論どうするかは実際フィールドに立つ選手に託すが。
「(まあ、守ってくるだろうなぁー。向こうや監督さんも守り倒す気満々だったし)」
試合前のアップで両チームがフィールドで会った時、弥一は彼らの心を覗き込んでいた。
揃って日本戦はとことん守備固めで行こうという考えだ。
「室ー、今日一発ガツーン!って景気良くかましていこうねー♪」
今日大事となるのは室だと思い、弥一は声をかけていく。
195cmとUー20日本で最長身の高さを誇る彼がやってくれるだろうと。
「おお、任せろって!」
室も大事な初戦に向けてやる気充分、戦いの準備は既に出来ている。
『Uー20ワールドカップ出場に向けての戦い、Uー20アジアカップが今日から始まります。日本の初戦はマレーシア、2戦目がベトナム、3戦目がヨルダンと彼らとの試合の前になんとしても日本は勝ち点3を積み重ねたい!』
『得失点差もありますから、出来る事なら大量点の勝利が欲しい所ですがマレーシアはおそらく引いて守ってきますからね、そこをこじ開けられるかどうかですよ』
「日本!日本!」
初戦となるスタジアムには代表ユニフォームを着た日本サポーターの姿も見えており、アウェーの地ながら一部が青に染まっていて日本コールを送っている。
両チームの国歌斉唱から両キャプテンのコイントス、キャプテンを務める辰羅川が審判団へと歩き先攻後攻を決める。
コイントスの結果は日本の先攻だ。
「相手は引いて守って来る、焦らずサイドからじっくり切り崩して行くぞ」
中央を特にガチガチに固めて来ると予想し、辰羅川はサイドから崩しに行こうと円陣で皆へと伝えた。
「おし!行こうか!」
「おう!!」
辰羅川が最後に気合いの一声を入れて皆がポジションへと散って位置につく。
大事な初戦、Uー20ワールドカップ本戦への切符を掴む戦い、アジアの頂点を取りに行く戦いが始まろうとしている。
ピィーーー
『日本対マレーシア、今キックオフ!室から蹴り出して照皇が後ろに戻し、三津谷がボールを持つ!』
「っと…」
月城が左を走ろうとすると前方には2人程のマレーシア選手が月城の前に居る。
彼の足の速さについてはマレーシア側も分かっており、直線突破はさせんとしていた。
「(めっちゃ引いてるなぁ、北村のリトリートより引いてそう)」
後ろからマレーシアの思いっきり引いての守備を見ていた弥一、東京予選で立見を相手に超守備的なサッカーをしてきた北村を思い出させる。
マレーシアゴール前には大勢の黄色い軍団による厚い守りが出来ていた。
『かなり引いてますねマレーシア、この試合は引き分けの勝ち点1で充分だと思っているかもしれませんよ』
「戻してー」
ボールを持つ光輝に弥一は戻してこちらに渡すようにと要求する、すると正確なパスによってボールは弥一の足元へピタリと収まった。
「(引いて守ってるけど、引き過ぎて僕がこうやってボール持ってるのに誰もプレス来ないんだなぁ)」
徹底して引いている相手、弥一がボールを持っても誰も突っ込んで来ない。
つまり今プレッシャーが何も無い状態で蹴れる、弥一は前線を見据えていた。
「(固めて来ても空中戦ならどうかなー?)」
綺麗に崩す事には拘らない、弥一はサイドから崩そうという作戦を無視して縦への高いロングパスを右足で放り込む。
高さが足りないと言われる日本だが195cmの男がFWに居る今、こういったパワープレーは効果的だ。
今の日本は前に高さを兼ね備えている。
「(うお!ドンピシャ!?)」
室へと合わせた弥一のボールはピタリと室の頭に合い、マレーシアはDFが空中戦で室と競り合うと共にGKがパスが長すぎる、キャッチ出来ると判断して飛び出していた。
だが室の高さはジャンプして手を伸ばすGKの上を行く、マレーシアの誰よりも高い位置でピタリと合ったボールを頭で合わせて高打点のヘディング。
黄色い軍団を、GKを突破してボールはマレーシアゴールのネットを揺らしていた。
「うぉっしゃーーー!!!」
室のゴールが決まった瞬間、四方八方から声が上がり歓声がスタジアムを包む。
貴重な先制点を、Uー20ワールドカップに向けた最初のゴールを決めた室、この地で起きた昔の日本の悲劇を吹き飛ばす勢いでカタールの空へと向けて思いっきり吠えたのだった。
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鳥羽「ガッチガチに守ってんなぁマレーシア」
峰山「まあ大事な初戦だし、失点喰らいたくないか」
成海「お、弥一に行って…ロングパスか!」
豪山「うおー!室ナイスヘッドだなー!」
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