第390話 アジアの強豪達
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
Uー20アジアカップ予選。
45の出場国がそれぞれ10組に分かれてグループ首位の国と2位の成績優秀な5つの国が選ばれ、予選免除のホスト国を含めて全16チームが決勝トーナメントへと進む事が出来る。
そこでベスト4となった4チームがUー20ワールドカップへの出場権を獲得するのだ。
Uー20日本は飛行機で約13時間程かけて移動、カタールの国際空港と到着してアジア予選開催の地に降り立つ。
「ワールドカップときてカタールか…やはり思い浮かべるな、ドーハの悲劇というものを」
「多分、多くのサッカーファンとか思い浮かべるだろうね」
空港を出て宿泊ホテルへと向かうバスの中、カタールの首都ドーハの街並みを眺める照皇と隣の席に座る春樹は共に同じ事を考えていた。
日本がまだ一度もワールドカップ出場が出来ていなかった頃、初出場が手に届くと思ったらロスタイムに悪夢の同点ゴールを許してしまう。
その場所がドーハの地であり日本サッカーにとっては忘れる事の出来ない記憶、まだ生まれていなかった照皇や春樹も知る程日本のサッカーに携わる者には避けて通れない記憶だ。
窓から景色を見つつ照皇は気を引き締める、自分達でその悲劇を繰り返してはならないと。
「アジアで厄介なのはやっぱり韓国、ですね」
「だろうなぁ、ベスト4どころか優勝を狙ってアジアの頂点を貪欲に狙いそうだしな」
スマホで五郎はアジアカップに出場する各国を調べ、日本にとって厄介になるであろう国を見ていた。韓国が手強いと思うのは前の席に座る冬夜も同意する。
日本のライバル韓国、彼らとは別グループだが勝ち進んでいけば決勝トーナメントでぶつかる可能性は高い。
「弥一、ユンジェイの奴は相当怒ってたぞ。「あのチビ、次にフィールドで会ったら叩き潰してやる!」ってさ」
「相当恨まれてますねー」
五郎の隣で窓際の席に座る弥一へ後ろの席の辰羅川は同じ横浜の韓国人チームメイト、ユンジェイが弥一に相当な恨みを持つ事を伝える。
練習試合で弥一はユンジェイを完全に封じ込めていた、奇想天外な方法でやられてしまい彼の方は屈辱だった事だろう。
今回のアジアカップに韓国代表として招集されているユンジェイ、弥一と日本を絶対に潰そうと牙を剥く事は間違いない。
「そっちより目の前の相手だろ、グループ首位で通過しないと韓国と戦うどころか先に進めないぞ」
「あ、そうですね…」
韓国とはこの予選で別グループ、日本は同じ組でマレーシア、ベトナム、ヨルダンで争う事が決定している。
冬夜の隣の席に座る優也から言われて五郎は反省、ランク的に日本がこのグループで1番上だが気は抜けない。万が一2位になってしまえば成績優秀に含まれず予選で消える事もあり得るのだ。
初戦のマレーシア、2戦目のベトナム、グループ最終戦のヨルダンと気の抜けない試合が続く。
「初戦はなんとしても勝ちたい所だな、良い雰囲気でベトナムやヨルダンと戦いたいし」
「ベトナムとか近年サッカーのレベル結構上げて来てますからねー」
「ああ、A代表の方も苦戦してたよな」
弥一と辰羅川は共にベトナムサッカーが近年向上してるなと話す。
A代表で強くなっているとすれば今回のUー20の方でも実力ある若手を揃えて来ていそうだ。2戦目のベトナムは鍵を握るかもしれない。
「そこで連勝して最後にヨルダン戦、此処でも勝ってトーナメント進出が理想だよな」
3連勝が最も理想的だと冬夜が語れば隣の優也も小さく頷く。
確実に16の枠を狙うならそれが1番良いだろう。
一行が話している間にドーハの宿泊ホテルへとバスは到着。
飛行機からバス、乗り物から乗り物と続いた旅もようやく終点となって腰を落ち着けられる。
そう思っていた時、一行に詰め寄る1人の人物が居た。
「神明寺弥一!貴様、よく俺の前に顔を出せたなぁ!」
「おお?噂をすれば韓国の虎さんお久しぶりで〜」
ホテルのロビーから弥一の姿を見つけ、因縁をつけて来るユンジェイ。
その顔は怒りに満ちている、もはや心を読むまでもなかった。
今回の大会で日本と韓国、同じホテルで滞在が決まっていたようだ。
「こらユン!来て早々揉め事起こすなよ!」
ユンジェイの駆け寄って行った姿を見て韓国のチームメイト達が彼を止めに入っていた。
「なんだよ!喧嘩しようって訳じゃない、ただの宣戦布告だ!この大会お前らに優勝は絶対にやらないってな!」
韓国語でやり取りする彼ら、とりあえず言葉が通じなくてもユンジェイがヒートアップしている事だけは伝わる。
「…てめぇ、あの野郎からブッ殺してやるって思われる事したのかよ」
「練習試合で彼を封じたぐらいしか関わって無いけどー」
弥一とユンジェイに何があったのか狼騎も気になるようだが、あえて弥一は彼の目を回させた事は伏せる。
「なんだなんだ、揉め事か?」
聞こえてきた言葉は日本語でも韓国語でもない、英語だ。
奥から出て来たジャージを着た男達はいずれも身長が高く体格が良い、此処に居る日本や韓国の誰よりも。
「オーストラリア…」
ユンジェイを止めてた韓国の1人がその姿を見て呟く。
アジア随一の高さを誇るオーストラリア、韓国と同じく強豪である彼らも同じホテルに宿泊だった。
「ん…?お前、ショウか?」
1人が照皇の姿を見つけ、声をかける。2m近い身長と一際大きな男、180cmの照皇が小さく見えてしまう程だ。
「レヴィンか、久しぶりだな」
照皇は目の前の大男を知っており、彼と英語で挨拶を交わす。
「照さん、あのオーストラリアの人と知り合いですかー?」
「あいつが中学時代にオーストラリアへ留学していたってのは知っていたけど…まさかレヴィンと友人なんてなぁ」
「弥一、アジア最強のDF狙うならレヴィンの事は覚えといた方が良いぞ」
親しげにレヴィンという大男と話す照皇に弥一は仙道兄弟の2人に聞いてみる。
照皇がそこに留学していたのは佐助も聞いたことがあった。
そんな中、政宗はレヴィンの方に注目する。
「トーマ・レヴィン。プレミアリーグの2部ダージFCに所属していて、198cmの身長と体格による強烈なフィジカルに加えて足が速く技術も優れてる、将来のアジア最強DFって言われる程に優秀だ」
イギリスでプロとして活躍するレヴィンはCDF、弥一と同じポジションでオーストラリアの守備の要となる。
「へえー、将来アジア最強…」
同じDFとして興味を持ったのか弥一はレヴィンを見ていた。
「まさかショウとこの国際大会で互いにガキのまま会うとはなぁ、てっきり直接会うのはA代表まで再会はお預けかと思ったよ」
「案外速い再会だったな」
「それで…あの小さいのか?何かと噂されている日本のスモールでスーパーなDFっていうのは」
「ああ」
照皇と会話する中でレヴィンは後ろにいる弥一の存在に気づき、彼と目が合う。
弥一についてはレヴィンの耳にも入って来ているようだ。
「とにかくまずはお互いグループ突破だ。じゃ、これから飯なんで」
軽く言葉を交わし、レヴィンは仲間と共にその場を去って行った。
「…レヴィンまで参加してくるなんて、今回のアジアカップ厳しそうだな。ユン行くぞ」
「(ちっ…デカブツが、日本共々お前らもこの大会で叩いて韓国がアジアの頂点に立つからな)」
チームメイトに連れられる中でユンジェイはオーストラリアも倒すと決めている。
韓国こそがアジアサッカーの頂点で最強だと。
強豪国と同じ場所での宿泊、此処で戦う準備を整えて日本は初戦のマレーシアに備える。
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影山「ふ〜、代表での移動は大変だなぁ。やっと落ち着けるよ」
大門「飛行機で13時間に此処までバスでしたからね」
優也「相手だけじゃなくこういった移動も大変だ、コンディションは整えておかないといけない」
明「…乗り物に弱かったら最悪でした、良かった強くて…」
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