第389話 練習試合を経てアジアの戦いへ
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
1ー0、大学選抜にUー20日本が後半先制。
大学選抜の方も追いつかんと反撃に出る、アジアや世界とこれから戦いに向かう相手でもこのまま負けたくないと負けず嫌いが揃っていた。
その攻撃を担う直人に想真が徹底マーク、直人が動き回ろうがピタッと張り付いて離れない。
しかし司令塔がマークされても大学選抜は優秀な中盤が揃っている、中盤で蛍坂がボールを持って成海、峰山、村山と高い技術を持つ彼らによる華麗なパス回しが行なわれていく。
成海から峰山と渡ればダイレクトで豪山へと速いパスを送る。
「っとぉ!」
パスコースに入って右足でカットしたのは先制点を決めた光明。
縦横無尽に彼は走り回っており、FWだがそこに縛られる事なく自由にプレーしている。
「チャンスチャンス!左空いてるよー!」
そこに弥一のコーチングが飛ぶ、左サイドにスペースが空いているのを見つけていた。
峰山に寄せられる前に光明は右足でスペース目掛けて思い切り蹴り込む。
「(あの野郎!無茶苦茶なパス出しやがった!)」
左サイドのスペースへと送られたパスはまるでシュートを思わせる速さで向かっており、月城は走る最中で光明に対して毒づいていた。
こんな速いパス通らないだろうと。
自分以外は。
陸上と張り合える程の足を持つ月城、疾風のようなダッシュで光明から放たれたレーザービームのパスをラインギリギリで受け取っていた。
「(通った!?絶対にライン割ると思ったのに!)」
これに泉谷は月城へと向かい、彼のエリア侵入阻止を狙う。
彼が来る前に月城はゴール前へと左足でグラウンダーのクロス、照皇には大城が付いている。
だがその前に飛び出して来た明が懸命に右足を伸ばし、爪先でボールを当てた。
コースが変わりゴールへと飛ぶも、榊がブロックして防ぐ。
ボールが溢れると照皇がこれに反応しており、彼の前に転がっていた。
大城が体を寄せていくも、それを受けながら照皇は右足を振り抜く。
岡田のダイブも及ばずゴール右へとボールが入ってネットを揺らし、Uー20が照皇のゴールで2ー0と突き放す。
「やるなぁ、あんま笑わなくて堅物そうな奴と思ったけど」
「やるもんでしょ?日本のエースだからさ♪」
後方から照皇のゴールを見ていた弥一と光明の2人、照皇の事を知らない光明は彼を実力の高い真面目な奴だと認識を改める。
2ー0となってスタミナが減ってきた月城はお役御免、冬夜と交代になり辰羅川も交代すると代わって優也が入る。
キャプテンマークはどうするかと外した腕章を手に持ち、誰に託そうかと見回せば弥一が付けてみたいと立候補。
「練習試合だし良いでしょー?」
「まあ、良いか。それじゃ頼んだぞ」
照皇辺りに任せようかと思ったが、弥一も横浜との練習試合で負傷した間宮に代わって代理キャプテンを努めた経験を持つ。
練習試合だから任せてみようと弥一にその役目を託した。
「さあさあキッチリ締めて行こうかー♪」
右腕にキャプテンマークを付けた弥一、練習試合とはいえ日本のキャプテンを任されて何時にも増して声を出す。
「敵さんサイド結構多用してくるよー、両サイド集中ー!」
超能力による読みで敵がサイド狙いといち早く気づき、冬夜と優也に集中して守るよう伝える。
おかげで大学選抜の両サイド、成海と村山は思うように攻め込めない。
消耗した村山と交代で原木が入り流れを変えようとするが大きな効果は得られず。
前線から照皇が懸命にプレスをかけたり、フィールドを駆け回って色々な場面で顔を出して守備をする光明と2トップによる守りも効いている。
更に高い確率で影山がセカンドボールを拾ってセーフティーにクリアし、フォローに走って貢献していく。
豪山によるパワープレーも番が跳ね返し、力強さで大学生にも劣らない所を見せる。
「く…!」
もう時間は無い、1点を取ろうと直人はボールを受け取ると振り向きざまに左足でシュート。
これを想真が体を張ってブロックし、ボールは上空へと舞い上がり風に乗るとUー20ゴール前へと運ばれていく。
「任せろー!」
高く上がったボールを大門がジャンプしてキャッチすれば主審による試合終了の笛が鳴った。
2ー0、Uー20日本が大学選抜を相手に完封勝利だ。
「負けか…想真、お前上手なったなぁ」
「そりゃ上手ないと代表呼ばれんしー」
「ちょっと見ん間にすっかり生意気なりよったなこの!」
兄弟同士で話す中、直人が想真へと軽くヘッドロックをかけていた。
「前半の調子で後半も行けるかと思ったけど、急に見違えるようになったなお前」
「そこはまあ…スランプで悩んだ男が覚醒してヒーローになった、て奴ですかね」
「自分で言うなってそれ」
途中まで月城を抑えられていた村山と大城、後半に光明とのプレーで見違えるような動きを見せた事には正直驚かされた。
月城が得意気になっているとそれを照皇にツッコまれる。
「(正直あいつのおかげっていうのがデカいけどな、あんま認めたくねーけど)」
先輩達と会話する中、月城は視線を一瞬光明の方へと向けていた。
彼がいなければ何も出来ていなかったかもしれない、まだあまり認めたくないという気持ちもあるがほんの少し彼に感謝する。
「はぁ、これでも相当鍛えたつもりだったんだけどな。俺らが勝ってお前らがアジアカップ制したら唯一日本に勝ったチームとなってたはずが…」
「どっちにしろこれ非公開で何も報道とかされないだろ」
「あ、そうだったわ」
勝利のプランを考えていた豪山だったが、成海に言われて結局誰に知られる事も無いという事実に気づく。
「けどアジアカップに向けて良い練習なって先輩達に感謝ですね♪」
「本当忙しい中来てくれてありがたいです」
立見の後輩である弥一、大門は揃って礼を言うと影山、優也、明もそれに続いた。
「(色々と課題はあった、まあひとまず悪くない流れでアジアカップに乗り込むのは悪いことではないか…)」
2ー0という結果、100点満点とは行かないが大学選抜相手に勝利したり新たな組み合わせも発見して収穫のある練習試合だったとマッテオは思っている。
Uー20日本はもうすぐアジアカップの為に日本から飛び立つ。
立ち塞がるであろうアジアの強豪を倒し、Uー20ワールドカップの出場権を獲得する為に。
決戦の場所はカタールだ。
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鳥羽「締まらねぇな、良いところ無く負けちまった」
峰山「俺らが思っているよりも向こうが強かったって事だろ、実際個々のレベルが結構高いしよ」
榊「高校のレベルも凄ぇ上がってきたもんだな、その下の中学も上がってるって聞くし」
原木「やっぱ髪のセットいまいちだったかな…」
泉谷「今セットしても遅いだろ」
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