第387話 成長した彼らとの戦い
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
高校の時と比べ、だいぶフィジカルを重点的に鍛えて来ている大学選抜のメンバー。
豪山は以前よりも力強さが増していて、鳥羽も華麗なテクニックに加えて強引に突破しに行く荒々しさが加わり強い2トップだ。
直人を中心とした中盤も攻守のレベルが高く、Uー20の選手がボールを持った時の寄せが速い。
後ろの3バックも大城、榊、泉谷といずれも長身で一対一のデュエルに強いから簡単に崩れそうにはない。
更にその後ろにはGKの岡田が守っていて万全。
助っ人も含めた大学1、2年の集まりだが良いチームであり機能している。
「うっ…!くぅ…!」
中盤でボールをキープする光輝だが蛍坂によって前を向かせてくれない。
その間に直人が迫り来ていた。
中盤でカットされたくないと意地で、光輝は左踵を使って左サイドへとヒールパス。
「(おっし!左爆走だ!)」
そこに走り込んでいた月城、ボールを受け取るが直後に右からガツンと衝撃が走る。
「ってぇ!?」
「甘いぜ月城!」
ぶつかって来たのは村山、八重葉の先輩が後輩の爆走を読んで阻止していた。
「(ちょっと見ない間にごっつい当たりするようになりやがって先輩め…!)」
タッチラインからボールが出され、一旦プレーが途切れると月城は右肩を左手で押さえる。
八重葉の紅白戦等で村山とマッチアップの経験はあるが、こんな力強くはなかった気がした。
「マーク、変えるよ。佐助さんが鳥羽さんを、番が豪山先輩。その方がやりやすいと思う」
「ああ…気をつけろ、相当競り合い強いぞ」
「っす、任せてください!」
スローインでゲーム再開の前に弥一はDF2人と話し合い、佐助と番のマークを入れ替えて対応する事になった。
今のままではまたさっきのようなピンチに陥るリスクが高い、あのツートップを抑えるなら今のままじゃ駄目だと弥一は判断。
スローインから再開し、想真から投げたボールは政宗へ渡り再び想真へと返す。
「こっちー」
中盤の混戦の最中、弥一が上がっていて想真へボールを要求する。
そこに想真はパスし、弥一はボールを足元へと収めた。
直後、立見の先輩である豪山がプレスに来ていたが弥一は素早い寄せに慌てる事なく右足で前線の室へと、一気に縦へのロングパスを送る。
室が得意とするハイボール、Uー20の巨人が落下地点に走り地を蹴って高く飛ぶ。
だが大学選抜にも高さを誇る者はいる、190cm台の大型DF大城が室にも負けない高さを飛んでいたのだ。
「ぐお!」
大男同士の激しい空中戦は互角。ゴール前で溢れたボールを泉谷が追って行くとその前に想真が走っており、ミドルレンジから右足で思い切って狙う。
泉谷はブロックに行くが彼の右脇をすり抜けてゴールへと向かった。
ゴール左へと向かう良いシュートだが、相手はシュートストップに優れた岡田。
味方のブロックを掻い潜って来たボールに飛びつき、両手でキャッチしてキープする。
「受け身になるなぁー!攻めろ攻めろ!」
もっと前行けという仕草を見せた後に岡田はパントキックで左サイドへと出した。
全体的に攻撃的な選手が多く、大学選抜の攻撃意欲は相当高い。
成海が岡田からのパスをトラップし、左サイドから攻め上がる。
そこに辰羅川が成海の行く手を塞いだ。
「(来るか…?)」
真っ直ぐ相手を見据える成海の目、このままデュエルを仕掛けるかと辰羅川は腰を落として構える。
だが成海は相手を見たまま、全く見ていなかった右へと左足でボールを出すと走り辰羅川の横を通る。
出されたボールの先には直人が居て、成海からのパスをダイレクトで左サイドへと返して再び成海が受ければ綺麗なワンツーの形となった。
素早く反転して辰羅川が追いかけ、迫るもその前に成海は左足で高いクロスボールを蹴っていた。
ニアの方に居る豪山へのボール、これに豪山は飛ぶ。
「うおお!?」
その豪山と激しく空中戦でぶつかり争う番、抜群のフィジカルを誇る彼が豪山を吹っ飛ばして頭でクリアしていたのだ。
「セカンド気をつけろー!」
気を抜かないようにとゴール前から大門が声をかけ、転がったボールを想真がキープ。
それを後ろから兄の直人が突っかかる。
「大人しくよこさんかい想真〜!」
「此処で大人しく渡す阿呆がおるか…!」
兄弟同士でのボールの奪い合い、兄の意地と弟の意地がぶつかり合う。
「こっちだ!」
そこに手を上げてボールを要求するのは月城、直人との争いの最中で彼へのパスは難しいと思った想真は政宗の姿を見つけ、そちらへと小さくパスを送れば政宗はフリーの状態。
すぐに相手が迫る前に左サイドの月城へと、彼を走らせようとパス。
月城の速さなら此処まで届くと走る計算を入れてのボールだ。
そのボールへと得意のスピードで一気に迫る、だが追いつく前に長い脚が月城より先にボールを捉えて蹴り出していた。
「大城先輩…!」
「お前の速さなら此処来るだろうなと思っていたさ」
月城の速さを計算していたのはパスを出した政宗だけではない、同じチームに居た大城も彼の速さは知っており張っていたのだ。
村山に大城と、得意の速さを活かしきれず封じられている月城。
「(あーあ、言わんこっちゃない。自慢の速さ読まれてスタミナどんどん削られてるし)」
アップで走りつつ悪戦苦闘している月城の姿をちらっと見ていた光明。
自分で自慢するだけあって月城のスピードは代表でも1、2を争う。だがそのスピードも散々見てきた村山、大城に読まれてしまう。
決まれば強力な武器となるが決まらなければ自身が消耗し続ける諸刃の剣。
あれではスタミナが尽きて終わるだけだと光明は見ていた。
「源田、出られますか?」
「ん、アップは終わって何時でも行けますよーっと」
マッテオから声をかけられた光明、ジャージを脱ぎ捨ててユニフォーム姿となる。背中に背負う番号は21だ。
審判から交代が認められると、光明は室に代わり照皇と2トップを組む形で入る。
「元先輩相手にだいぶ苦戦してるみたいで」
「るせぇな、これからだっての…!」
代わって入った光明は月城へと声をかけ、月城は光明を睨む。
「無理だろ、向こうはあんたのスピード把握してるしあれじゃ効かない。それ…自分が1番よく分かってるだろ?」
「っ…!」
言われた光明の言葉に月城は言い返す事が出来ない、村山と大城に自慢のスピードを把握されて見抜かれてる今、突破口は見えていない。
それは月城自身がよく分かっていたが、意地で引けずにいた。
「このまま先輩にやられっぱなしはあんたも悔しいだろ?こっから一泡ふかせてやろう」
合宿の中でまだ全然付き合いが浅い、だが月城がプライドの高い負けず嫌いというのはなんとなく分かった。
光明は軽く月城の肩を叩く。
「(何が起こるのかな…?とりあえずお手並み拝見っと)」
そのやり取りを後ろから見ていた弥一、仲が悪い2人だが何か起こりそう、やりそうだと思いこの場は静観して守備に専念する。
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五郎「大学選抜手強いです!」
狼騎「ちっ…何バタついてやがるんだあいつら」
春樹「ま、向こうは手の内知っている先輩達だからね。加えて大学で厳しいであろう練習を日々こなしてるんだ、そりゃ強いだろうし」
優也「(アップはしとくか、月城が何時バテて交代するか分からないからな)」
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