第386話 Uー20日本VS大学選抜


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。











 光明と月城の衝突から2人は特に会話を交わさず、合宿は進んで行った。

 合流予定のはずだった藤堂、白羽の2人は予定を変更してアジアカップの開催地で落ち合う事となる。


 結局この合宿では2人が不在のまま大学選抜チームと練習試合だ。


 そして迎えた大学選抜との練習試合当日。




「今更やけど、相手年上やからってビビったり遠慮したりとか無しやからなー。食い尽くす勢いでやったれ!」


「それで想真の苦手な奴とか来たらどうすんだよー?」


「アホか、俺に苦手な奴なんぞおらへんわ!」


 どんな大学生が来ようが返り討ちにしてやろうと、軽く体を動かしながら想真は張り切っている。


 去年に大学生との練習試合は経験している、強度は分かっており世界の強さもフランスでアメリカやベルギーといった強豪と戦い味わった。

 年上相手だろうが負ける気はしない。



「ほお〜、知らん間に随分と大口叩くようになったもんやな想真」


「え…!?」


 想真にとって聞き慣れた声が背後から聞こえ、振り返るとそこに立っていたのは白いジャージを着た実の兄直人。

 腕を組んで弟と同じように勝ち気な笑みを浮かべていた。


「あ、兄貴!?何で此処おんねん!」


「何でって試合しに来たからに決まってるやろ、それ以外に来んわ」


 試合しに来た、直人の言葉を聞いてまさかと想真は思ってしまう。おそらく彼の考えは合っている。


「今日の大学選抜チーム、俺キャプテンやねん。ああ…食い尽くす勢い、やったか?ほな俺らも生意気な年下食い尽くす勢いでやらんと失礼やなぁ〜」


 徹底的にお前らぶっ倒したろ、顔は笑っているが直人の目が全く笑っていない。


「やばぁ、兄貴ガチや…!」


 大学生の相手で実の兄が含まれて想真は今日の試合、一筋縄じゃ行かないと感じていた。




「大学生って、皆知ってる人ばっかだよー!?」


 合宿所で大学生達と対面し、弥一は目の前に居る彼らを知っている。


「1年経ったけど変わらず小せぇな弥一」


「よせって、それで誰よりも厄介なのは知ってるだろ」


 元立見の先輩である成海と豪山、久々の弥一達との対面となり優也と大門に影山も駆け寄り挨拶する。


「あ…はじめまして、緑山明です…」


「お前が立見の2連覇に大きく貢献した1年か。活躍見てたぞ!」


「まさか1年であそこまでとは、正直驚かされたよ。互いに今日の試合出て来たらよろしくな」


 初対面となる明と成海、豪山の2人は互いに自己紹介。


 共に大学のサッカー部に所属し、1年鍛え上げた彼らは体つきが前と比べて逞しくなっている。

 彼らも大学選抜の一員として選ばれてこの場に立つ。


「お久しぶりです、村山先輩に大城先輩」


「去年に怪我とかあって心配したけど元気そうで良かったよ」


 かつて八重葉の要としてチームを支えた村山、大城の2人も選抜入り。

 後輩の照皇は2人の元まで行き、礼儀正しく挨拶する。


「おおー、先輩達も大学選抜入ったんスね!」


「お前の代表入りには驚いたけどな、こっちとしてはサプライズ食らった気分だわ」


 桜王の蛍坂、原木、榊と桜王の3人も選ばれており冬夜も先輩達と久々に出会う。



「おいおい、久々の再会ばっかじゃんか」


「おー、鳥羽さんに峰山さんも揃って大学選抜入りですかー」


 立見の選手権前に練習で付き合ってもらったりしていた真島の鳥羽、峰山の2人も入っており弥一は彼らにも挨拶。


「泉谷さんも久しぶりー♪」


「俺も覚えられてたんだな…忘れられたかと思ったよ」


「まさかー、北海道で一緒に豚丼食べた仲じゃないですかー」


 初めて立見が全国に出場した夏の総体、初戦で戦った泉神高校の泉谷。食べたご飯で弥一は彼の事を覚えていた。



「よう、お久ー」


「え…岡田さん?」


「あんたまで何でいるんですか」


 大門、優也の姿を見つけて軽く右手を上げながら挨拶する人物。

 立見と公式戦を戦った前川のGK岡田、見てみれば彼の格好は大学選抜と同じく白いジャージ。

 つまりチームの一員だが彼は卒業間近とはいえまだ高校生、大学選抜入りは出来ないはずだ。


「呼ばれたんだよ、このチームのゴールを守ってほしいって。俺はまだ高校生だって言ったけど公式戦じゃないし非公開だから大丈夫…となってゴリ押しされた」


 異例だが岡田は助っ人として大学選抜のGKとして参戦、気付けば総体や選手権で戦ったチームメイトや戦友達ばかりで彼らが主に主力のようだ。



「大学選抜、という割に結構顔見知り同士ばっかりだね全体的に」


「それぞれの学校の先輩とか多く居ますよね」


 各自が知り合いへと挨拶を交わす中、牙裏の春樹と五郎は再会する光景をそれぞれ見ていた。


「多分、あのおっさんが裏で色々手ぇ回してたんだろうよ。でなきゃ岡田を大学選抜にねじ込むなんて裏技出来る訳ねぇだろ」


「まあそうなるか、ただの選抜じゃなく彼らの知り合いを集めた選抜がどんな力を見せるんだろうね」


 同じように狼騎も大学選抜の顔ぶれを見ており、マッテオが手を回して用意したチームだと感じたのは狼騎だけでなく春樹も同じだ。




「じゃあ、スタメンはこのように行く。相手はこっちのサッカーを知っていて対策してくるはず…それを頭に入れて序盤戦っていこう」


 藤堂がいないのでキャプテンは辰羅川が務め、相手の多くが自校の先輩であり後輩の動きを知っている。

 その可能性が高いと考え、警戒するよう伝えていく。



 そして互いのキャプテン、Uー20日本からは辰羅川が、大学選抜からは直人がそれぞれ進み出ればコイントスを行う。

 先攻を取ったのは大学選抜だ。



 ダークネイビーのユニフォームのUー20日本、GKは黄色。


 白いユニフォームの大学選抜、GKは赤。


 Uー20日本代表 フォーメーション 3ー5ー2


     照皇   室

     10    9  


 月城    三津谷    辰羅川

  2      8      13


    仙道(政)八神(想) 

     14    5


   青山 神明寺 仙道(佐)

    3   6   4


       大門

        12



 大学選抜 フォーメーション 3ー5ー2



     豪山  鳥羽

      9   11


 成海   八神(直)   村山

  7     10      8


     峰山  蛍坂

      6    5


    榊  大城  泉谷

    3    4    2


       岡田

        1



 Uー20の方はGKの大門以外がフランスを戦った主力メンバー。


 対する大学選抜もUー20と同じシステムで臨むようだ。




 試合が始まり、豪山から鳥羽。ボールを直人が持つ、かと思えばこれを後ろへと逸らし蛍坂。


 再び直人へと蛍坂はパスを返し、そこに前を向かせないと想真が直人へと迫り八神兄弟の争いになる。


 送られたパスを直人は左足でトラップ、直後にそのまま左足でゴールに背を向けたままボールを上げて想真の頭を超え、これが豪山へのハイボールとなっていく。


「ぐっ!?」


 豪山と空中戦を競り合う佐助、だが予想以上の力強さで競り勝ったのは豪山。頭で鳥羽へのポストだ。


「(これが成長した俺達って訳だ!)」


 そして鳥羽がこれをダイレクトボレー、ボールを捉えて正確にゴールへと飛ばす。



 予定だったのがそうはいかなかった。


 鳥羽がボレーで蹴る前に弥一が豪山のポストを読んで左足でクリアしていたのだ。



「お前、そこは俺らの成長見せつけて1点って見せ場だろうー!?」


「そんな強制失点イベントみたいな事知りませんーっと」


 相変わらず先輩に華持たせる気無いなと言う豪山、今のは弥一相手だろうが上手くいったと思っていただけに悔しそうだった。



 だが良い連携を見せるだけでなく個人の能力が高い、彼らが大学で成長した事に偽りは無いだろう。




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 此処まで見ていただきありがとうございます。


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 想真「くっそぉ!あそこまで高く上げられたらカット出来へん…!」


 直人「チビやからな、届かへんやろ」


 想真「そんなチビちゃうぞ俺はー!」


 直人「すぐムキになる辺り心もチビやぞ」


 想真「意味わからんー!」

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