第384話 21人目の選手
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
合宿所に着いてから初日の夕飯、集まった代表選手達はそれぞれ話しつつ食事をとっていた。
「見たぞー、立見が蹴球ガールズと番組出てたのを」
「ドッキリかけられとったなぁ、こっから芸能人の道行くんちゃうかー?」
月城と想真から選手権連覇後に出ていたスポーツバラエティで立見が出演、そこであったドッキリについて話が広がっていく。
蹴球ガールズはサッカー好きが集まって結成されたアイドルによるバンド、高校サッカーの応援曲も担当し歌っていた。
「ああー、あれはもう驚いたなぁ。女性スタッフの人がピンマイクの調整に来てくれたかと思えば…目の前で変装解いて来たし」
「腰抜けるかと思いました…」
共にその時出演していた大門と明、人生初のドッキリに揃って驚かされる。
「つか優也がレオナのファンとか初耳で俺的にはそっち驚いたよ!」
「忘れろ…!」
「全国放送だから無理だと思うなぁ」
幼馴染の冬夜も彼がアイドルのファンとは知らずテレビの前で驚いていた、優也は若干顔を赤くさせつつも誤魔化すように目の前の鴨そばをズルズルと啜る。
室の言うように全国のお茶の間が見ていたであろう番組、優也がファンだとは大抵知られてしまった事だろう。
ちなみにレオナとは蹴球ガールズのドラム担当でクールな雰囲気漂う女子、彼女が目の前に登場した時は普段冷静とは思えぬ椅子から転げ落ちる姿を見せていた。
あの後に優也はレオナのサインを貰ってツーショットの写真まで撮ってもらい、その日はご満悦だった。
「活躍すればレオナから何かアプローチあるかもしれないんじゃね?」
「もういいだろその話…!」
この話題をもっと楽しみたい冬夜と早めに夕飯を済ませて部屋に戻りたい優也、その攻防戦が繰り広げられる一方。
「え、タツさん結婚するんですかー!?」
「此処だけの話な、公には言えねぇけど」
弥一が豚肉と白菜のピラフを美味しく味わいながら、会話を楽しむと辰羅川から結婚すると報告を受けて驚かされる。
今取材陣はいない、同じ代表にならと彼は打ち明けていた。
ちなみに心が読める弥一は立見のドッキリ企画と知っていたが、普段見ない優也が見れると思い場に合わせて驚く側を演じる。
「Uー20が終わったら結婚しようってさ…」
「ちょっとちょっとー!主人公やっちゃってますねそれー!」
照れつつもUー20ワールドカップが終わった後で彼女との結婚を約束、それを聞いた弥一は茶化していく。
「まだ20前で結婚は早いように思えるが…」
「お互い愛し合って、しっかり子供も愛せれば良いんじゃない?」
結婚は慎重な方が良いという照皇と愛があったら大丈夫だろうという春樹。
「お祝いの品はベビー用品贈りますねー♪」
「流石にそれは早ぇって!」
結婚するなら今の内に贈ろうという弥一に早過ぎるとツッコミを入れる辰羅川。
和気藹々とした雰囲気で初日の合宿は過ぎていく。
翌日、代表選手達の前に1人の人物が姿を見せる。
本当ならば昨日の時点で合流予定だったが本人にとって不慣れな地だったせいか、時間がかかってしまい彼が着いたのは夜。
この中の誰も目の前にいる少年に心当たりが無かった。
「少々予定は狂いましたが、彼も今日から合宿に参加します。自己紹介を」
「あー、源田光明(げんだ こうめい)。ポジションはFW登録なってるけど、キーパー以外は基本何処でもこなせるんでよろしく」
マッテオと並んで立つ彼からの自己紹介、水色の短髪で身長は175ぐらい。年は16歳と明や五郎と同学年だ。
「(誰だこいつ?)」
「(源田光明…聞いたこと無いぞ)」
何者なんだとそれぞれが心で思っている事は中身が読める弥一しか知らない。
源田光明、彼こそが21人目となるUー20日本代表の選手だ。
「では、アップから始めていきましょう」
マッテオから練習開始が伝えられ、それぞれが軽く体を動かす。
「なあ、源田…か。軽く蹴らないか?」
「ああ良いよ」
初対面の光明を番が声をかけて誘い、軽くパスを出し合う。
「(トラップが…吸い付くみたいだ)」
番から出されたボールを左足でトラップ、そこから右足でパスを返す光明。
まるで吸い付くようなボール捌きを見て、確実に自分より巧いなと番は感じた。
「源田って何処の高校通ってるんだ?」
「スクールならブラジルだよ」
「ブラジル…って、サッカー王国の方…!?」
「そ、俺そっちで暮らしてるから」
パスを出し合いながら源田について知っていく番、その中で彼がブラジルで暮らしていると聞かされれば巧いトラップにも納得がいった。
「ていう事はブラジルのビッグクラブに所属したりとか?」
「いや?3部リーグのちっちゃいクラブ、そこで過ごしてる」
サッカー王国のビッグクラブに密かに在籍していたのかと思えば、番の期待とは逆に光明が居るのは無の知られていない小さなサッカークラブ。
そこでブラジルの学校に通いながらサッカーをしているという。
白羽や藤堂と同じ海外組、だが彼らと違うのは無名のクラブに所属して世間的に知られていない事。
「なあー、あんた青山だっけ?」
「ん?ああ」
「パス出すのあんま得意じゃないだろ?下手だし、敵に此処へパス送りますよーって丁寧に教えてるようなキックだぞ」
「え…!?」
突然光明から番のパスが、キックが駄目だと指摘が飛んでくる。
彼としてはちゃんと蹴っていたつもりだが、光明から見ればなってないらしい。
「あんた後ろの選手だよな?下手なパス出されてピンチ招かれたら勝てる試合も勝てなくなる」
「ちょ、おい…!」
「っと、誤解しないでくれよ。別にあんたと口喧嘩したい訳じゃない、直せるキックを直さず見過ごしてチームが負けたら寝覚め悪いしさ?」
パス交換から光明は番へと近づき、彼の姿を間近で見てみる。
「ふうん…結構体は鍛えていて当たりなら結構良い線行けそうだけど、まだ何か活かしきれてない感じするな。柔軟とかやってる?」
「な、なんだよ急に?柔軟ぐらい誰だってやるだろ」
「柔軟にも色々あるって、それがあんたに適してなくて体が柔らかくなりきってなかったりとか。もうちょい柔軟見直して体幹しっかり鍛えたら、もうちょいマシになると思うよ」
フィジカルに自信のある番、だが光明は彼を観察して見てその長所を活かしきれていないと指摘。その彼に柔軟を見直して体幹をしっかり鍛えれば上手くなる、急に言われて番の方は困惑気味だ。
「(マッテオ…また何か面白そうなの発掘してきたなぁ)」
優也と組んで彼の背中を押している弥一、横目で光明が番へと色々話しているのが見えた。
「あいつ、後の大学生との練習試合で出て来るかな?」
「え、大学生と練習試合すんの?」
「予定聞いてなかったのかお前…大学生の選抜チームと練習試合組まれてるんだよ」
「へえー、でもまあ年上相手でもこのチーム勝ってるからね。選抜で来ても軽く行けるよ♪」
柔軟する弥一と優也、そこで優也から大学の選抜チームと練習試合の予定が組まれている事を弥一は今知った。
前回も名門大学と練習試合を去年経験し、勝っているので年上相手だろうと負けるつもりが無いのは弥一も優也も同じだ。
「(軽くとは大きく出ましたね弥一…私が今の君達にそんな甘い相手を用意するとでも?)」
弥一の会話が腕を組んでチームを見るマッテオの耳に届き、彼は小さく口元に笑みを浮かばせていた。
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詩音「僕達も代表行きたかった〜」
玲音「留守番になっちゃったなぁ」
半蔵「立見はもう5人も選ばれてるんだ、これ以上は選ばれないだろ…多分」
川田「とりあえず留守番組、しっかり留守を守るぞー」
翔馬「あ、フォルナにご飯あげないと…」
フォルナ「ほあ〜」
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