第359話 出揃うベスト4
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
八重葉学園は準々決勝、今大会屈指のフィジカルを誇る鹿児島の海塚と国立行きの準決勝を争う。
「っと…!」
月城の前には二人の選手が立ち塞がる、いずれも屈強な肉体を誇り彼の得意とする左サイドの縦を突破はさせない。
『海塚、月城に対して2人がかり!月城進めない!』
『徹底して左を封じてますね、良い守備出来てますよ』
スコアは0ー0、海塚のフィジカルを活かした守備が機能して八重葉の攻撃を上手く封じ込めている。
だが何時までも封じられてばかりではなかった、それはこの男が許さない。
『八重葉、右サイドから展開!再び中央へ折り返して照皇へ渡る!』
月城のいない右サイドから走らせて攻める、かと思えば中央に戻してダイレクトで繋ぐと照皇にボールが渡った。
すぐ後ろにDFが張り付いていてそれを背負う形となるが、照皇はボールと共にターンをしてDFと体の位置を入れ替え、上手く前を向く事に成功。
この瞬間、照皇の目は鋭くゴールを見据えていた。
刹那だった。
彼の得意とする右足が振り抜かれたのは。
ボールはDFの間を突破、低い弾道で飛んで行きゴール右隅に真っ直ぐ速く向かう。
GKの懸命なダイブもその手は届かず、次の瞬間ゴールネットは激しく揺れていた。
それと同時に多くの観客で埋まったスタンドから歓声が浴びせられる。
『八重葉ついに海塚の硬い守備をこじ開けたー!連続ゴールの照皇誠、先制点を今日も決めてくれました!!』
『シュートもそうですが、その前のターンも見事でしたね。海塚としては前半このまま0ー0でハーフタイムを迎えたかった所でしたけど終了間際やられましたね』
此処まで八重葉と同じく僅か失点1で来ていた海塚の守備、それを照皇が力でこじ開けていき八重葉に勢いをもたらす。
当然厳しくなる照皇へのマーク、だが一人二人とマークに集中すれば他が動きやすくなる。
八重葉は照皇や月城といった主力に依存するチームではない、全国から選りすぐりのエリートが集まった選手はそれぞれが一級品だ。
中盤で巧いフェイントを見せて相手を躱す2年の司令塔中村、そこから右サイドへと展開して同じく2年で右SHの立石が走りチャンスを作る。
海塚はゴール前、照皇のマークを外さないよう務めるが右足で高いボールを上げた立石のクロスに反応したのは照皇と2トップを組む188cmの長身、3年FWの笠松だ。
相手DFとの空中戦を制して高い打点からのヘディング、叩きつけて跳ね上がりゴールネットへと突き刺さった。
『八重葉追加点ー!笠松今大会3ゴール目と好調だ!』
『海塚は左を意識し過ぎましたかね、月城君へと意識が強すぎて反対の立石君が自由に動けてしまいましたからそこから失点に繋がったと思われます』
「今日はきっちり抑えてくぞー!」
前回の失点を繰り返させないと佐助は守りに気を引き締め、周囲に声をかけていた。
フランス遠征から彼がコーチングする回数は多くなり、一部はあの小さいDFに影響されたなと思っている。
中盤で政宗が激しく体をぶつけ、相手の司令塔を自由にはプレーさせずボールをこぼさせていく。
それを月城が素早くフォロー、ボールを拾えば前線へとパスを出していた。
今日の仙道兄弟を中心とした八重葉守備陣は1点も通さない、それくらいの気迫があり海塚の攻撃をシャットアウト。
海塚は攻守で翻弄されていき、次第に月城へのマークが甘くなっていく。
「(隙見っけー!)」
左サイドの空いたスペースへと月城は快足を飛ばし、全国トップを争うスピードがマークを置き去りにしていた。
そこに中村から正確なパスが出され、月城は左足でトラップ。そのままゴール前へと左から切れ込んで行く。
相手の大型CBが月城へと向かい止めに行くが、月城はこの動きを冷静に見ており相手を見据えたまま右足のアウトサイドでボールを転がしていた。
反応したのは照皇、今度は左足でゴールへと流し込む。
『八重葉決定的な3点目ー!照皇この試合2ゴール!今年も選手権の得点王を狙いに行きます!』
『やはり八重葉の照皇君と月城君、この2人は簡単には止まらないですね』
時間はアディショナルタイム、残り時間を集中して守り最後まで反撃を許さず八重葉がこの試合を制した。
八重葉3ー0海塚
照皇2
笠松1
第2戦、岐阜代表の牙裏と北海道代表の海幸が激突。
堅守を誇る海幸が此処まで大量点を取り続ける牙裏を止められるのかと注目されていた。
だが試合は準々決勝まで来た猛者同士とは思えぬぐらいに一方的だ。
「酒井来てるぞ酒井ー!」
「違う後ろから6番ー!」
狼騎へと意識が向いていた海幸の守備陣、だが牙裏の司令塔佐竹がパスを出した先は後ろから上がってきた春樹。
そこから右足でシュートのモーションに入る、春樹の動きが見えたDFの1人がシュートブロックに向かう。
「(ナイス先輩ー!)」
春樹はかかった、とばかりにニヤッと笑うと右足をボールに当てる。それはブロックに向かうDFの頭上を越えていき、中へと入っていた正二へと渡る。
振り向きざまに正二が左足のシュートを放てばゴール左へとネットに入り、追加点をまた1つ重ねていた。
『牙裏期待のルーキー風見決めたー!牙裏、前半だけで5ー0とリードしながらもまだ攻撃の手を緩めない!』
『まさか堅守の海幸を相手にこれほど一方的になるとは…少し想定外だったのと牙裏の力が想像以上でしたね!』
「(なんだよ、なんなんだよ…!去年は立見にボコボコにされて今年リベンジかと思えば……何でこんな点差…!)」
去年に立見と戦い、今年また選手権で戦う海幸の1人は戸惑いが隠しきれなかった。
表示されたスコアは9ー0、もう大半が前半の5ー0で心が折れてしまっている。
狼騎、春樹の2人が揃ってハットトリックと脅威の活躍を見せつけ、観客達は立見に続く2桁得点かとざわついてきていた。
そこに左サイドをドリブルで調子良く突破する正二、得意の左足で低いクロスが出れば真っ直ぐ佐竹へと向かう。
これを佐竹はスルー、その先には狼騎が待っていた。
左足で合わせたダイレクトシュートに相手GKは反応出来ず、豪快にゴールネットが揺れて10点目のゴール、この試合4ゴール目となる狼騎。
『10点目ー!!牙裏、立見に続いて2桁得点達成!なんなんだ今大会はー!?』
『高校サッカーを長く見てきましたが、こんなに頻繁に大差がつく試合が出て来るのは初めてですよ!』
昨年立見に5ー0とやられた海幸、今回は更に倍の点差を牙裏につけられてしまい彼らに反撃の術はもう残されていない。
牙裏が立見に続く2桁得点の勝利で再び注目を集める存在となっていた。
牙裏10ー0海幸
酒井4
天宮3
佐竹1
高柳1
風見1
「今年の牙裏凄くねぇ?これ八重葉も食うだろ」
「いやー、八重葉はやっぱ代表選手を複数抱えてるしな。それになんて言っても照皇がいるし」
「てことはまた決勝は立見と八重葉かな?」
観客が試合後に決勝の組み合わせはこうなるだろうとそれぞれが予想、牙裏が決勝まで行って優勝もあるかもしれないと言う者が居れば去年と同じ組み合わせだと予想する者も居る。
ダークホースと言われてきた牙裏は総体に続き準決勝で八重葉と戦う事が確定。
一方もう一つの準決勝の組み合わせ。
立見が名古屋の強豪校、鳥井第一高校を7ー0で破り最神が立見と同じ東京のB代表である西久保寺を接戦の末1ー0で下し2年連続で同じ準決勝の組み合わせが実現する。
立見VS最神
八重葉VS牙裏
此処に高校ベスト4が出揃った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
此処まで見ていただきありがとうございます。
ベスト4の決戦楽しみ!見てみたいとなったりこの作品を応援したいとなったら作品フォロー、☆評価ボタンをポチッと押してもらえると次の執筆への力となって凄く嬉しいです。
弥一「名古屋かぁー、名古屋コーチンとか味噌カツとか色々美味しそうなのいっぱいあるよね〜♪」
摩央「絶対言うと思った、名古屋美味い飯揃ってるのは結構有名だしな」
大門「彼らとの戦いも制してついにベスト4か…今年の選手権も此処まで来たんだな」
優也「あと2つ、狙うは連覇だけだ」
弥一「最神をまずはしっかりぶっ倒そうー、あ…多分また彼めっちゃ大泣きしそうかもね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます