第358話 リベンジに備え己を高める者


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












 全体の3回戦が終了し、準々決勝へと進出した各チームについて夕方のスポーツコーナーで放送される。


「高校サッカー選手権は3回戦が行われ、立見高校が10ー0と圧巻の試合を見せてくれました」


「これ凄いですよね、1人の選手が荒稼ぎしてる訳でなく全体が取っていますからね」


 立見の試合が流れて桃城を相手にゴールショー、その始まりとなる弥一の1点目となるゴールがピックアップ。


 そこから立見の各選手が得点を重ねるシーンが次々と映し出された。


「中盤のボール回しが立見は速いんですよ、速いボールだから相手はインターセプトがしづらいですし寄せも間に合いませんからね。だから確実に最後を止めようと桃城の方は引いて守りましたが、石田君の高さに氷神兄弟の巧さが光りました」


 得点を決めるシーンで画面を止め、専門家が解説。


「しかし高校生でこのボール回し…非常に洗練されていてますね、立見が一体どんな練習をして此処までのレベルにしたのか興味深いです」


 立見が高速サッカーマシンによってスピードに慣れた、日々のマシントレーニングを積み重ねた結果であるがこの練習法は取材等で誰も喋っていない。合気道の事も含めてだ。


 練習を見せる時はインターバルトレーニングや全体練習と他の高校もよくやる内容、そうして他と変わらない練習なんだなと思わせていた。



「八重葉学園は今大会初失点を許しながらも5得点を取ってエースの照皇誠がこの試合3得点とハットトリック達成、5ー1で準々決勝へと勝ち上がりました」


「今大会注目のダークホース、牙裏学園は攻守で圧倒。DMFながら天宮春樹が2得点の活躍、更にエースの酒井狼騎もこの試合2点を決めて6ー0の大勝です」


 八重葉の照皇、牙裏の狼騎に春樹と各校の選手がゴールを決める場面が映し出されていた。


最神も3ー0で快勝だ。


「これは得点王争いも分からないですね、八重葉の照皇君と牙裏の酒井君と両ストライカーが得点を重ねて好調ですから」






「あー、くっそ。あのロング許したのが心残りだなぁ…」


 翌日に宿泊のホテルで体を休めつつ、昨日許した失点を悔しげに政宗は振り返っていた、


「あれは良いシュートだったな、あそこで2ー1にされたのはヒヤッとしたし」


 佐助が相手の撃ったロングが素晴らしかったと頭の中でそのシーンを思い出す、仙道兄弟の2人は共に同じ部屋で過ごしている。



「おい政宗ー、飯行こうぜー」


「ん?ああ今行くー」


 そこにドアの外から月城の声と共にノックする音が聞こえて政宗はドアを開けた。


「うっす、佐助先輩も一緒でしたか。一緒に飯行きます?」


「おう、丁度腹減った所だ」


 同じ部屋に居た佐助も誘い、彼らは3人で昼食に向かおうと歩く。

 明日の試合に向けて各自が自由時間を過ごしていた。



「そういや、照皇先輩何処行ったんですかね?」


「俺も見てない、けどあいつの事だ。間違っても遊び歩いてるなんていうのは無いだろ」


「無いな、あの人すっげー真面目だし」


 ホテル内で照皇の姿を見なかった月城、兄弟2人も何処に行ったのか心当たりは無いが彼の性格を思えばやりそうな事は限られてくる。





「っとぉ!」


 放たれたボールはコースを突いて速いスピードで向かう。

 ゴール前に立つ帽子を被った男はこれに飛び付いて両手でキャッチしていた。


 都内にあるサッカー場にて照皇は自主トレ、その彼と相対するのはかつて照皇と共に八重葉を頂点へと導いた天才GK工藤龍尾だ。


「はぁっ……!もう1本!」


「待て待てマコ、休憩だ。オーバーワークは体に毒、分かってんだろ?」


「ああ…すまないリュウ」


 照皇が次を始めようとしていた時、龍尾がそれを止めて休憩をとる。



「わざわざ付き合わせて悪いな」


「はっ、何を今更。100%お前の為って訳じゃねぇよ、こっちも丁度良い運動させてもらってるし」



「何より八重葉があの生意気なチビ…神明寺弥一を一泡吹かせるってんなら喜んで協力するっての」


 龍尾だけでなく照皇の頭にも浮かぶ小柄で明るい少年、見かけによらず数多くのとんでもないプレーをしてきた弥一。


 二人の天才を擁した八重葉を彼と立見が倒した、その時の事は照皇も龍尾も鮮明に覚えている。



「元日の優勝決めて色々忙しいはずなのに本当よく来てくれたな」


「取材の多さは練習や試合より大変だし、これも息抜きさ」


 龍尾の所属するチームは元日の決勝まで進出、そこで彼自身も出場し1ー0の勝利に貢献する。

 現役高校生のプロ選手として龍尾は早くも注目を集めていた。



「つかまだプロ1年が終わったばっかだけど…あいつみたいな凄ぇシュート撃ってくるのはいなかったな」


 プロの世界で数々のシュートを受けてきた龍尾、高校の時よりも当然力があって巧いシュートは数多くあった。


 だがそれでも昨年の選手権決勝で見た物、これを超えるどころか迫る者は誰1人として放っていない。


 龍尾の無失点記録を止めた弥一のゴールキックからのカウンターシュート、それを忘れた日は1日たりとも無かった。



「Uー19で同じチームになってより近くでプレーを見てきた、トラップにパスにドリブル…守備だけでなく基本技術の一つ一つが他と比べて抜きん出ている」


 代表合宿やフランス遠征、共に戦う機会を得た照皇は身近で弥一を見てきた。

 そこで彼の凄さがより分かる、技術だけでなく心理戦で相手を揺さぶり自分のペースに持っていってしまう狡賢さも合わせ持つ。



「ああいうのを天才と呼ぶんだろうな」


「何言ってんだ天才ストライカーが」


「お前に言われたくない、さあ休憩は終わりだ。行くぞ!」


 再び練習は再開され、照皇と龍尾は向き合う。




「(長い付き合いだから分かるぜマコ…天才とそいつを認めながらも負けたくない、勝ちたいって気持ちが出てるのが)」


 ゴール前で構えつつ照皇の姿を見る龍尾には伝わった。


 弥一を認めながらも意地でも弥一には勝つという溢れんばかりの闘争心。


 あの春に出会って彼が照皇の冷静な心に火を灯す、そこから照皇は打倒弥一に向けて己を厳しく追い詰めてきた。



 今回が最後となる高校での弥一と戦える機会、それに立ち塞がる者は新鋭の牙裏だろうがなんだろうが粉砕して突き進む。



 天才サッカープレーヤー神明寺弥一が、立見が勝ち取った高校最強の座。


 もう一度最強のライバルと戦い、再び最強を取り戻さんと照皇はひたすら己を高め続ける。





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 此処まで見ていただきありがとうございます。


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 弥一「あと1週間程で毎日投稿サボらずの1周年達成かぁー」


 大門「いよいよ近づいて来たね…!」


 優也「100万PVの時は企画あったけど今回はやるのか?」


 弥一「そりゃまあ折角の周年だし何も無しは寂しいでしょうー。と言ってもどうしようかは白紙だけどねー…」


 摩央「どうするかなら早めに決めといた方が良いぞ」


 弥一「だねー、うん。なんか考えようかー♪」

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