第360話 立見VS最神 二度目の戦い


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。












 高校サッカーの聖地と言われる国立競技場、全国の高校サッカープレーヤーが憧れて目指す場所で2年続けての対戦カードが実現した立見と最神。


 注目の準決勝2試合が行われるとなって国立の会場は既に満員の観客で埋まりつつある。


 絶対王者に君臨する立見高校。


 念願の初優勝を目指す最神第一高校。


 再び王者への返り咲きを狙う八重葉学園。


 今大会のダークホース牙裏学園。



 この4校が今年のベスト4だ。


 立見、最神、八重葉が昨年に続く中で牙裏が入って来ている。



「(懐かしいもんやなぁ、この空気の国立は)」


 かつて最神のサッカー部に在籍し、全国制覇を目指した八神直人。


 彼にとっては夢破れたあの日以来の国立だった。


「直人さん!」


「おうタケ、こっちやこっち」


 直人を呼ぶ声に気付き、大柄な男を手招きする。現れた男は昨年まで最神のゴールマウスを守っていた洞山武だ。


「お前が抜けた後でもあいつらちゃんと国立まで来れたみたいやな」


「総体で初戦敗退の時は心配でしたけど、そこから立て直し成功してますからね」


 彼らの視線の先にはフィールドでアップに励む最神の後輩達が居た。


 最神は想真率いる守備陣と光輝のいる攻撃陣が上手く噛み合い、安定した試合運びで勝ち上がり2年連続となる国立の地に立っている。


 今度こそ関西へと優勝旗を持ち帰る、その想いは皆強く持っている事だろう。



「弟は、大丈夫そうやな。去年はあいつのお守りとか大変やったろ」


「いやぁ、めっちゃ頼れるDFで助けられましたよ」


 遠目から想真の姿を見つけ、いつも通りの姿を確認してから直人は洞山と想真について話す。


「しかし今回の相手は…エグいな、3試合で20得点ってなんやねん。漫画かい」


「立見の奴らは去年あんな破壊力無かったんですけどね、やっぱ新しい1年達の存在がデカいと思いますよ」


 立見は此処まで3ー0、10ー0、7ー0と勝ち上がって来た。

 得点力の高さには2人も揃って驚かされる。


「ふうん…他にもありそうやけどな」


 直人の目は最神から立見、その中に居る弥一へと向けられていた。




「ええか、攻撃は氷神兄弟や石田。それに緑山を軸とした怒涛の攻めが来る、俺ら守備が今回しっかり弾き返してやるんや」


「1年やけどあいつら相当手強いで、気ぃつけや」


「分かっとるわ、そっちこそ神明寺に踊らされんなよ!」


 ユニフォーム姿となって互いにフィールドへと現れた両校、コイントスは終わり最神は円陣を組む。


 立見の攻撃を止めようと意気込む想真、そこに光輝が気を付けるようにと伝える。



「立見GO!!」


「「イエー!!」」



 立見の方はいつも通りの掛け声と共にフィールドへと散って戦う準備が既に出来ている。




『2年連続で準決勝の国立にてぶつかり合う立見と最神、昨年は1ー0で立見が決勝の切符を勝ち取りましたが今年はどうなるのか!?』


『同じUー19の代表選手が出てますからね、1年を経てどんな試合を見せてくれるのか楽しみですよ』



 立見ボールから試合が開始され、何時ものように前線の1年を軸とした攻撃で組み立てていく。


「両サイド注意せぇ!双子来るで!」


 半蔵へとマークで張り付く想真がゴール前からサイドをそれぞれ守る選手達にコーチング。


 中盤の明、三笠、田村といずれも速い球によるパスで繋ぎ、田村から右サイドの詩音に渡る。


 かと思えばワンツーでそのまま繋ぎ田村が右へと上がっていた。



「(元々立見の右サイドと言ったら俺だっての!)」



 俺を忘れるなと主張するかのように、得意の右足クロスで田村は最神ゴール前へ半蔵をターゲットにした高いボールを上げる。



「っ!?」


 何時ものように半蔵が高く上がった球へと飛び上がる、しかしその瞬間に一瞬速く想真がジャンプして半蔵に体を預ける格好となった。


 彼の跳躍力を利用して想真も高く上げてもらい、半蔵より高い位置にて頭でボールを捉えれて弾き返す。



「おう、でっかい1年坊主。高さやったら俺に勝てる思ったやろ?甘いわ」


「あ、いえ…」


 そんな事は思ってない、そう言おうとしていた半蔵だったが想真はさっさと行ってしまう。


 弥一程ではないがDFとしては恵まれた身長や体格ではない想真、彼にはそれを補う技術の高さがあった。



「中央簡単じゃないよー!もっとかき回して行こうー!」


 相手が最神、守っているのが想真ならば強固な守りである事を彼と争い共に戦った弥一は知っている。

 関西の小柄な彼は甘くないと前線に指示を送っていた。




 最神が攻撃を耐え凌げば、光輝へとボールが渡り関西の天才ゲームメーカーが攻撃を奏で始める。


「(ガツガツ来る奴やな!)」


 闘志を前面に押し出して光輝を止めに行く立見の1年三笠、対して光輝は足を出して来た三笠にボールを軽く転がして躱せばそのまま置き去りにして進み、フォローに入っていた明が躱した直後を狙って光輝の正面から来ている。


 明の追撃にも慌てず、光輝は右足でゴール前へとスルーパス。

 正確無比なボールに対して最神のFWが反応して走る。



 ピィーーー


「!?」


 ボールを受け取りチャンスと思えばその瞬間、旗が上がり笛が鳴る。


 スルーパスが来ると分かり弥一がすかさずラインを上げていた。


「(ふー、流石にキツいパス出してくるねぇ光輝は)」


 想真が巧みに高さで長身選手に勝てば弥一は相手をオフサイドへとはめる。


 東西のリベロが共に守って譲らず。





「弟からも神明寺弥一についてはよう聞いとったけど、うん。無駄な動きせぇへんな、後はめっちゃコーチングが多い」


 必要以上には動かず、その場で止まって味方へと伝える弥一の姿を直人は観察していた。


「確かタケ、お前あいつの無回転FKにやられたんやったな」


「いや…あいつカーブばっかりってイメージ強くて無回転でくるとはその時思ってなかったですね…」


「自分はカーブ得意だからカーブで行くよー、と印象付けといて無回転の一発ズドン!かい。えっぐいわぁ」


 あの時カーブでなく無回転だったことを見破れず決められた、それを思い出しつつ手元にあった蜂蜜ジュースを飲む洞山。


 その隣でイチゴ牛乳をストローで飲みつつ直人は目の前の試合に注目する。




『前半30分を過ぎて未だ0ー0!立見と最神、共に攻め合いながらも得点が生まれません!』


『お互いにチャンスの所で攻撃が止まっていて中々ビッグチャンスを作らせていませんね』



 最神の5バックが機能し、両サイドの氷神兄弟や中央に構える半蔵の攻撃を上手く防げている。

 明や影山のミドルはあったがDFのブロックに阻まれてゴールまでには繋がっていない。


 対して立見も光輝達の攻撃陣をはね返し、シュートは遠目からのロング二本に抑えていた。

 いずれも大門がそれをキャッチしていて最神の得点にはならずだ。



「後ろ来てるよ三笠ー!」


「右の片割れ中央入りこんどるぞ山崎ぃ!」


 プレーに直接関わってないがいずれも弥一、想真と両チームのリベロが中心となっている。



 このまま両チーム譲らず0ー0でハーフタイム、高い攻撃力を誇る立見に対して最神が無失点で乗り切り勝負は後半戦へと向かう。




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 此処まで見ていただきありがとうございます。


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 弥一「ふ〜、流石に最神相手だと簡単にはスコア動かないねー」


 大門「想真の守りが効いているのもあるけど、その後ろのGKも強いからね。簡単には行かないよ」


 優也「かと言って何時までも得点が動かないのは不味いが」


 弥一「分かってるってー、後半戦行くよー!」

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