第348話 冬の選手権開幕
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
大晦日も間近へと迫って来た寒い季節の今日、高校サッカーの聖地である国立競技場にて多くの観客が集まり既に満員だった。
この盛り上がりは前回を超える程であり、Uー19日本の躍進が影響していることは間違い無いはずだ。
満員の観客達が見守る中で今年も開会式が始まり各出場校による入場行進が行われようとしていた。
以前は大分後の方に登場したが今回は一番手から登場。
前回優勝校、高校サッカー界に歴史を刻んだ立見の面々がプラカード係の女子の後ろを歩く。
『立見高校、優勝旗を持つ3年キャプテンDFの間宮を先頭に入場。昨年は驚異の公式戦連続無失点記録を作り、前回の選手権で絶対王者と言われた八重葉学園に勝利し初優勝、更に今年の総体でも優勝し冬夏と高校サッカーの2大大会を制覇、今年は圧倒的な強さで東京予選Aブロック代表となりました』
『今年は守備だけでなく攻撃まで相当強化されましたからね、昨年の主力選手がほぼ残った上に期待の1年生と上手く融合し完成度の高いチームになってると思われます』
前回大旋風を巻き起こしただけあって、立見に対する応援の量や声援の数は半端なかった。
今や彼らが高校サッカー界の頂点に立つ存在となっており、狙うは当然2連覇だ。
「うー、声援凄いけど応えちゃ駄目かな?」
「良いから此処は普通に歩いておこうな」
手を振り返そうかと考えていた弥一だが、大門から此処は目立たず普通に歩こうと言われてパフォーマンス無しで普通に行進を続ける。
『八重葉学園、高校サッカーのタイトル全てを獲得していて昨年は連覇が期待されましたが惜しくも立見の前に惜敗。キャプテンとなった照皇を中心に王者の座へ再び返り咲こうとリベンジの選手権です』
『総体では負傷して前回は決勝に出られなかった照皇君ですが、予選で見せた圧倒的強さを思えば怪我はもう心配無さそうですね。彼が万全ならば立見に次いで優勝候補となってくるかと思われます』
王者ではなくなったものの、昨年と変わらず堂々とした入場行進を見せる八重葉。
特に表情を変えず平常心で先頭を進む照皇は滾る闘志を今は抑えつけ、チームを率いて行く。
『最神第一高校、前回は準決勝まで進みましたが立見に惜しくも敗れベスト4。予選を勝ち抜き全国出場を決めた力は健在、関西の名門校としての意地があります。今年こそは優勝旗を持ち帰れるのか?』
『此処もキャプテンの八神想真君や三津谷君といったUー19を戦った2人が軸となり攻守のレベルが高いですからね、此処も面白いですよ』
今年も去年に続き最神のキャプテンとしてチームを率いる想真、今回こそは立見を倒してその先にある優勝を掴み取ろうという気持ちを強く持って今大会に臨む。
『琴峯高校、今大会最長身プレーヤーの室を中心としたサッカーは磨きをかけて福井予選では圧倒的大差を付けて得点王に輝いた室はこの選手権で何点取ることが出来るのか?』
『此処は良くも悪くもエース室君の出来にかかってますからね、彼が絶好調なら今回の台風の目となる可能性は充分ではないでしょうか』
3年となった巻鷹がキャプテンとなり、室と共に福井予選で多くのゴールやアシストを記録してきた。
そして一際背の高い室がその後ろを歩き、フランスで成長した彼に得点王の期待がかかる。
『牙裏学園、今回の予選決勝で最多得点差で勝利した事により一気に注目を集め、この後に行われる開幕戦で琴峯高校との試合に臨みます。決勝で見せた爆発力を今大会でも発揮出来るのか?』
『此処はエースの酒井君が目立ってましたが、キャプテンの佐竹君に天宮君と各自が力を付けて来た感じありますからね、総体の時とは違う牙裏が見れそうですよ』
一時期話題となった決勝戦の10ー0勝利、その牙裏の登場に歓声は大きくなっていた。
総体から頭角を現している牙裏が今回どんな活躍を見せるのか、それだけ興味惹かれるファンが多いという事だ。
出場校がそれぞれ整列すれば開会式はそこからスムーズに行われ、立見による優勝旗の返還や協会会長からの挨拶に選手宣誓と進んでいた。
「すんごい人集まってるなぁー、これ座れる場所無いんじゃない?」
「このまま90分ぐらい立ったまま観戦か…しんど」
開会式が終わり、選手権の開幕戦を迎える国立競技場。そのカードを見ようと弥一、摩央の2人がスタンドの方へと移動して何処か空いている席は無いかと辺りを見回していた。
「おーい、こっちやこっちー」
そこに弥一達を呼ぶ声が聞こえ、その方向へと進めば席に座る想真と光輝の姿があり想真が2人に手を振っていた。
「お前も見に来たんやな神明寺…あー、確か立見のチビ主務やったか」
「杉原摩央、名前ぐらい覚えとけよ…!」
「まーまー、この組み合わせ気になって興味あるのは皆そうでしょー?」
雑な自分に対する呼び方に怒る摩央をなだめつつ、弥一は別の席に座っている集団を発見していた。
視線の先に居るのは照皇達八重葉の面々だ。
「八重葉に関しては特に同じブロック入っとるしな、今の牙裏や琴峯がどんなもんか偵察しときたいやろ当然」
八重葉の姿を同じように見つめる光輝に驚きは特にない、遅かれ早かれいずれ当たる確率の高い強豪校だから今のうちに見ておいて損はないだろう。
「じゃ、開始まで時間ある事だし早めのおやつタイムっと♪」
弥一は持っていた紙袋からどら焼きを取り出せば、包んでいた薄紙を取り除きかぶりつく。
ふわふわの生地にこしあんの甘さが際立たせる、スタジアムに売られていた和菓子だ。
食を楽しみつつ弥一の目はフィールドへと向けられている。
「牙裏か…見た限り高さは勝てそうだよな」
試合開始前、アップをして調整する両者。その中で巻鷹は横目で牙裏の面々を見ていた。
「見かけで判断する気は無いですよマキさん、高さで負けるつもりもありませんけどね」
「おー、頼もしいなお前。マジでフランス遠征で一皮むけたよなぁ」
頼もしい後輩の言葉を受け、巻鷹は室の背中を軽く叩く。
予選決勝で10ゴールも昇泉相手に決めてしまう程の攻撃力だ、この試合おそらく室と狼騎との点の取り合いになる。
それは巻鷹だけでなく見に来ている多くの観客達もそういう試合展開になってくると予想している事だろう。
琴峯にはフランスで力を増したストライカーの高さがある、そこから繰り出される攻撃力は大会屈指と言っても良い。
点の取り合いなら絶対の高さがある分、うちが有利。室がいる限りそこは動かないと巻鷹は点の取り合いに自信があった。
そして迎えた開幕戦。
『あー!決まったー!早くも第一号ゴールが国立で生まれたー!!』
それは試合開始から僅か50秒の事。
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開幕戦のゴールを決めたのは一体誰なのか、気になったりこの作品を応援したいと少しでもなってくれましたら作品フォロー、または☆評価をポチッと押していただけると大変ありがたいです。
想真「美味そうやから俺もどら焼き1個貰うわ」
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弥一「あー!僕のどら焼きどんどん食べられてるー!」
摩央「こんだけあるから良いだろ、俺も1個食ってとこ」
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