第346話 思惑と組み合わせ抽選会
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
12月の上旬、冬の高校サッカー選手権の組み合わせ抽選会がこの日東京にて行われ、全国各地から予選を勝ち抜いた強豪校が集結。
各チームの代表者達が抽選会の会場へと続々現れ、報道陣のカメラによるフラッシュのシャワーを彼らは浴びつつ注目される。
「うおっ!眩し…」
「注目されてるやん東豪さん、お前フランスで活躍しとったもんなぁ」
報道陣のフラッシュで眩しそうにする神奈川代表の東豪大学附属高校2年の青山番。今年Uー19にサプライズで選ばれフランスで活躍した選手の1人として注目が高まっていた。
そんな彼へと声をかける想真、彼も大坂代表を勝ち取り最神のキャプテンとして抽選会に姿を見せている。
「おお、想真か。フランス以来だなぁ」
「調子よさそうやん、神奈川予選お前のおかげで東豪が制覇したみたいやし」
同じDFにして同学年という事もあり、想真と番は代表合宿時から交流があった。
「お前の方こそ流石だよなぁ、きっちり逃さず毎年連続出場を決めてるし」
「全国制覇目指しとるんや、予選で蹴躓く暇なんか無いやろ。特に今年は牙裏の奴らに総体でやられた借りを返さんとなぁ…!」
毎年出場している最神、総体では牙裏を前にまさかの敗退を味わってしまった想真は彼らへのリベンジに心を燃やしている。
「あ」
そこにカメラのフラッシュが先程より多めに発生、番が目を向けると思わず声を発した。
総体に初出場でベスト4、夏にダークホースとして現れて予選決勝で全出場校の中で最多得点差を叩き出し注目される牙裏学園が姿を見せる。
「フン…流石にこういう場にあのゴロツキは来てへんみたいやな」
「ゴロツキ…って酒井狼騎か」
忌々しそうに牙裏の姿を睨むように見る想真、ゴロツキと聞いて誰の事かと思ったが番はそれが狼騎の事かと分かった。
牙裏の代表で狼騎の姿は何処にも無い、彼は今回留守番のようだ。
「立見に八重葉にその上牙裏と、倒す奴が今年は多いわ」
そう言うと想真はまたなーと軽く右手を振りつつ、一旦番と此処で別れる。
牙裏が会場に現れて以来、再び沢山のフラッシュが起こる。
姿を見せたのは八重葉のキャプテン照皇、優勝候補の登場とあって多くのカメラが向けられていた。
「照皇さん、お久しぶりです!」
「ああ、室か」
180cmある照皇より一際大きな存在、大人も含めて会場内で最も背の高い室が挨拶に来る。彼も福井代表で琴峯の一員として来ていた。
「お前も注目される立場になってるじゃんか室、出世したよなぁー」
「はは、月城や皆のおかげでね」
照皇と共に会場へと来ていた月城、フランスを戦い制覇したUー19代表のチームメイト達が次々とこの場に集結する様子に報道陣も注目していく。
そして最後に登場したチームに対してこの日一番多くのフラッシュが浴びせられる。
「皆さんどうもー♪」
こういう場でもマイペースな態度を崩さず振る舞う弥一、優勝候補の筆頭で春夏の大会を制している高校サッカー界の現王者、立見が姿を見せればやはり注目度は違う。
更に高校No1プレーヤーである弥一が現れたとなれば無視する訳が無い。
「やー、照さんに室と大会注目のストライカー2大巨頭がお揃いで♪」
「神明寺…その姿を見ればコンディションについては聞くまでも無いらしい」
「これで体調最悪ならとんだアカデミー俳優っスよ、ま…狡賢いチビだからそんくらいかますだろうけどなぁ?」
「狡賢いについては月城にだけは言われたくないかな」
会場へと姿を見せた弥一、照皇達を見つければ明るい笑顔で自分から近づき挨拶していた。
規模がそこまで大きくないとはいえ、国際大会でUー19日本代表が優勝した事で今回の選手権の注目度は昨年よりも増すだろうと専門家は語る。
黄金世代の再来、そんな期待を寄せるサッカーファンの声も少なくない。
その中心に立つのが弥一、照皇といった高校サッカー界の天才達になると。
「10ー0で予選決勝戦を勝って注目されてますが、今回の選手権いかがでしょうか?」
「あ、ええ…まあ期待を悪い意味で裏切ってがっかりさせないようにしないとな、とは思ってます」
インタビューを受けるのは牙裏のキャプテン佐竹、あまりインタビュー慣れしてないのはマイクを向けられて緊張気味なのでバレバレだ。
「(あーあー、ガチガチだな。これは相手さんに舐められそうだけど…好都合か)」
佐竹も共に会場へと来ていた春樹、自分の所のキャプテンが緊張な様子を見て色々と思考を巡らせていく。
やがて始まる組み合わせ抽選。
前回優勝の立見はシードが確定しており、2回戦からの登場からとなる。
八重葉、最神といった上位入賞校もシードに入っていて彼らも1回戦を戦わずだ。
それぞれの代表キャプテンがステージ上へと順番に呼ばれると、クジを引いてはステージを去り次の者がまた上がると繰り返し行われていた。
すると1回戦、注目のカードが実現する。
「牙裏学園と…琴峯高校が開幕戦でいきなりかよ」
最近注目が高まる牙裏と今大会最長身ストライカー室を擁する琴峯、この2校が今年の高校サッカー開幕戦を戦う事となった。
人々の関心はやはり牙裏の狼騎、琴峯の室によるエースストライカー対決だろう。
決勝戦だけの出場とはいえ能力の高さを見せつけて圧倒的大差に大きく貢献した狼騎、フランス遠征を経て成長し福井予選で2位に圧倒的大差を付けて2年連続福井得点王となった室。
どっちのFWが勝つのかと関係者の間で早くもざわつきが起こっている。
「この前の総体と同じか、このまま勝ち上がれば立見が決勝で戦うのは八重葉か牙裏…」
立見の代表として来ていた間宮はトーナメントの組み合わせを改めて見る。
立見と八重葉はそれぞれ違うブロックのシード、牙裏は八重葉側の方に居る。夏の時と似たようなトーナメント表となっていた。
「ちょい待ちぃや、このまま勝ち上がれば?聞き捨てならんでそれ」
間宮の言葉に反応し、近づくのは想真だった。最神は立見と同じブロック、彼らが当たるとしたら前回の選手権と同じ準決勝だ。
「あ、悪い。最神の事を舐めてる訳じゃねぇからさ」
「ええけど余裕かまし過ぎてうちとやり合う前に負けるみたいなオチはつまらんからやめてや」
「そっちも途中負けとかしないでよー?」
「アホか、立見に借り返すチャンスが転がって来たんや。今度こそぶっ潰したる!」
横から入り込んで来た弥一の言葉にも強気で想真は返していた。
「(立見とは初戦を勝ち抜けばうちと2回戦で当たる…やってやる、俺もフランスで戦っただけじゃなくトレーニングは積んできたんだ。誰よりも先に立見を食う勢いで…!)」
東豪は初戦を勝ち上がれば次の2回戦、シードの立見と戦う事が決定する。
やるからには優勝、番も栄冠へと向けて決意を固めていく。
「や、キミが室君?やっぱデカいなぁ、この高さは怖いもんだね」
「あ…ええと確か牙裏の天宮春樹さん、ですか。試合の時はよろしくお願いします」
「こちらこそお手柔らかに」
春樹の方が学年1つ上と知ってる室は頭を下げて挨拶、それに春樹は穏やかに笑って返す。
「(いきなり代表ストライカーが相手、まあいい…新生牙裏の踏み台にでもなってもらおうか巨人君)」
穏やかな笑みの裏側、春樹は室や琴峯を食って牙裏の勢いを付けようという利用を考えていた。
表面は穏やか、ただし内面は貪欲に勝利を目指す一匹の獣だった。
それぞれの思惑が交差する中で選手権の組み合わせが決まり、皆が開幕の時を待つ。
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弥一「さあさあどうなっていくかなー2度目の選手権」
摩央「と言いながら負けるつもりないだろ、優勝する気満々って感じに見えるぞ」
弥一「あ、バレた?そりゃ現王者がコロッと負けたら格好つかないからねー、勿論連覇狙うよー♪」
間宮「そりゃ頼もしい限りだ、さあ終わったし帰るぞ」
弥一「その前にこの近く美味しいカレー屋があるって評判なんでそれ食べて来ますー♪」
摩央「ホントぶれねー奴…知ってるけど」
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