第345話 真島のOBとなった彼らと再会


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。











「お世話になります真島さんー♪」


 選手権開幕の日々が迫り、立見は自校のグラウンドにて合同練習に今日も臨む。

 桜王に続き今回は真島が協力してくれた。東京の名門2校と合同での練習が出来るのは大きな経験値となってくれる事だろう。


 試合でぐらいしかその姿を知らない真島のメンバー、気さくに接して来る弥一を見て普段はこんな感じなんだなだと知っていった。



「よ、随分と暴れてくれちゃってるじゃないか神明寺」


 合同練習が進み休憩へと入っていると、弥一へと男の声がかかり弥一がそちらを向くと見覚えある2人の姿があった。


「わー、サプライズですねー♪此処で鳥羽さんや峰山さんに会うなんてー」


 立見や真島の間でざわつきが起こる、元真島の一員で今は大学生。

 昨年は弥一や立見とも戦った鳥羽、峰山の2人が来ていたのだ。鳥羽の方は軽く片手を上げて弥一へと挨拶。


「あれが鳥羽さん…高校随一のプレースキッカーと言われてた…」


「真島の攻守を支えた峰山さんだ…」


 前回の選手権でも活躍した影響が大きく、真島のOBである2人の名は真島の1年は勿論、立見の方でも1年で知れ渡っていた。


「前から真島の方に訪問しようって予定はあったんだけどな、仲良いマネージャーの子から今度立見と合同練習があるって聞いたもんだから急遽この日に切り替えたって訳さ」


 相変わらず女の子と仲良くするのが好きな鳥羽、大学生になってもそれは変わっていないようだ。


「というか見てたぞ神明寺、フランス国際大会!アメリカやコートジボワールどころかベルギーまで倒して全勝優勝なんて凄いじゃないか」


 その大会をずっとLIVEで見ていたと峰山はフランス大会のあれやこれが凄かったと若干興奮気味に話していた。


「僕だけじゃなく室とか照さんとか強いの居てくれたおかげですよー♪」


「照さん…ははっ、お前あの堅物をそう呼んでんのかよ!俺も次あいつに会ったら呼んでやるかなー」


 照皇が知らぬ間にそんなあだ名付けられてるのかと、鳥羽は弥一とその話で盛り上がりつつあった。


「あのー…」


「おいおいお前ら、練習時間無くなるだろ。俺らは今日後輩を鍛えに来たんだし」


「おーっと、そうだった。あ、鍛えてやるのはお前もだからな?覚悟しろよ天才君」


 真田がそろそろ練習再開しようと言い出す前に察したか峰山は長引きそうと判断し、弥一と鳥羽の話を中断させれば鳥羽は弥一も鍛えてやると不敵に笑った。


 どうやら大学で遊んでいた訳でなく、そこのサッカー部で相当鍛えたようで自信に満ちている。


 鳥羽、峰山の2人は高校卒業後に同じ東京の大学へと入りサッカー部へ所属。大学でも変わらず2人でコンビを組み続けていた。





「んじゃ、見て覚えろよー。しっかり焼き付けとけ!」


 鳥羽の前に置かれたボール、その前には人の壁が数人で作られており奥にはゴールマウスに立つ立見の3年GK安藤の姿があった。


 鳥羽のFKを手本にしようと注目する後輩達、鳥羽は短いステップから右足をセットされたボールへと当てて振り抜く。


「!?」


 ゴールへ向かうボールスピード、急激に曲がるカーブのキレが去年より増した鳥羽のキック。壁の右上を飛び越えてゴール右上隅を捉えたかと思えばそこから左へと変化、安藤はボールへと飛び付くが右手を掠めていきゴールネットは揺らされていた。



「わー、鳥羽さんFKのレベル上げて来ましたねー♪」


「そりゃあね、無回転含めて七色に色々放り込んで来るのが居たら呑気に寝てる場合じゃないだろ」


 周囲が「おー!」と声を上げる中、弥一も鳥羽のキックに注目していたようでスピードや変化に磨きをかけたのが伝わった。



 その影でそれ以上に鳥羽のキックに注目する者が居る。


「そうか……ああやって蹴るのか…」


 弥一と同じくFKのキッカーを務める明、頭の中で鳥羽が蹴った姿を何度も繰り返し再生されていく。







「うお!」


「よーし、真田ナイスクリア!」


 立見との試合形式の実戦練習、左サイドから放り込まれた玲音からの低いクロスを飛び込んで頭から突っ込みクリアしてタッチラインへ逃れる。その姿に真島側へと参加さている峰山が手を叩き久々にキャプテンシーを発揮していた。



「おっとっと!?」


 弥一がボールを後方でキープしていると鳥羽が突っ込んで来て、奪おうと守備に回っていた。

 これには意外だと思いつつも取られないようキープする弥一。


「覚えてる限りだと鳥羽さん、守備で汗かくようなタイプじゃなかったはずなんだけど!」


「データが古すぎるぜチビ君よ!今の大学じゃ通じないからさ!」


 鳥羽はそこまで守備をするタイプじゃない、去年に真島と試合をした印象が今回はそれを上書きするかのように懸命に守備へと参加する鳥羽の姿があった。


 今の時代はFWも攻撃ばかりではない、前線からの守備は当たり前であり昔よりも運動量やプレッシャーのかけ方に守備の技術が攻撃選手にも求められる。


「進歩してますねー、それで良い所見せて華は持たせませんけど♪」


「っ!」


 大学で自分の長所を磨いただけでなく改めて守備を覚えた鳥羽、だが鍛えたその力に対して弥一は楽しげに笑いつつ鳥羽を躱し続けていた。


「(あまり調子に乗り過ぎるなよ神明寺!)」


 そこに弥一の死角から峰山が突っ込んで行く、弥一は今鳥羽の相手をしていてそれで手一杯。これで取れると判断しての突進だ。



 だがそこは心の読める弥一、峰山の狙いは最初からお見通しだった。


「(な!?)」


 峰山が突っ込んで来てボールを取ろうとした時、鳥羽と競っていた弥一はトンッと爪先で球を浮かせて峰山の頭上を超えさせれば、ターンでくるっと回り峰山を右から抜き去り前を向いてボールに弥一は追い付く。


 結果として鳥羽、峰山の真島OBコンビを躱し弥一は右足で強くボールを蹴っていった。


 センターサークルからシュートを狙ったのかと思われる弥一の速いボールだが、狙いは明へのスルーパスだ。


 弥一からのロングスルーパスに明は反応し走る、そこに真田が体をぶつけて来ていた。


「っ!」


 それを明はいなし、逆に真田がバランスを崩しかけてしまい明はその間に単独となる。


 一瞬フリーとなり明の右足のシュートが炸裂すると、ゴールネットを大きく揺らしていた。



「こいつはまた…」


「はっ…伊達に海外でやり合っちゃいねぇってやつかい」


 鳥羽の相手をする中で峰山を躱し、更に明へと正確無比にしてシュート並の弾丸パス。


 今更ながら改めて弥一のレベルの高さをその身で知った鳥羽と峰山だった。



「明ナイスゴールー♪その調子でもう2点行ってみようー!」


「ハットトリックですか…!?いや、まあ…出来そうなら狙いますけど…」


 ゴールを決めた明にその調子でハットトリック行こうと無茶振りする弥一。



 真島やOBと練習し、選手権に向けて備えて行く立見と弥一。


 もうすぐ行われる抽選会、開幕戦のカードや立見の初戦の相手などそこで明らかとなる。




 そして抽選会当日を迎えた。






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 大門「峰山さん、坊主頭寄りだったけどあの時より髪伸びたなぁ」


 川田「大学入ってオシャレに目覚めたとか?」


 翔馬「彼女が出来て伸ばした方が格好良いと言われたから?」


 弥一「さあさあそこん所どうなんですか峰山さーん?彼女出来たんですかー?」


 峰山「独り身だよ!ただのオシャレだよ畜生ー!」


 鳥羽「可愛い子集めて合コンセッティングしてやるから元気出せって」

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