第344話 ダブルデートもいいものだ


 ※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。











「あれー…こちらのお姉さんキミの知り合いかな?」


「同じ学校の先輩で向坂愛奈さんです、ってどうしたんだろ…!?」


 東京の街中で岐阜に居るはずの五郎と再会した弥一、五郎と一緒に居る女性の方は何故か輝咲に厳しい目を向けて向き合う。


「失礼だけどお嬢さん、何処かで何か無礼な事をしてしまったのかな?」


 自分を睨んでくる心当たりが特に無く、輝咲は柔らかく笑って穏便な態度で接していた。


「あんた、まさか…」


 輝咲の事を見据えながら愛奈が口を開く。



「クレーンゲームの達人か!?」


「はい?」


 なんの事だと輝咲が思っていると愛奈の視線は輝咲の抱える大きなぬいぐるみへと目を向けていた。


「そのぬいぐるみ、あたしも欲しくて挑戦したけど小遣い使い果たしても取れなかったんだよ!ゲーセンから出て来たし、そうとしか思えないし!」


「あ、いや。これは彼が取ってくれた物でね…」



 愛奈を落ち着かせようと輝咲は説明、自分ではなく弥一が取ったのだと。そして弥一も付け足しとして一発で取れた訳でなく100円玉をいくらか飲まれてしまった事も伝えておく。


「何だ、そういう事ー。どっちにしてもあたしが使った金より少ない挑戦で取ったの凄いし、君クレーンゲーム上手いんだなぁ」


 事情を把握した愛奈は大きなぬいぐるみを取れた弥一を凄いという眼差しで見ていた。


「とりあえず2人は岐阜からデートで東京まで来たって事で良いのかなー?」


「で…!?あ、え、えと…そういう関係という訳では…」


 弥一は五郎と愛奈の2人を見てデートかと思い、明るい笑顔で言えば五郎の方は顔を赤くさせながら慌ててしまう。


「選手権の開催地がどんな場所か土日の休みを利用して遊びも兼ねて下見に来てみたんだ。ゴロちゃんの牙裏、冬に此処へ来るからさ」


「ゴロちゃん…へぇー、牙裏気合い入ってるねー」


 何か面白いものを発見したように、愛奈の言葉を聞いた後に弥一は笑みを浮かべていた。



「じゃあ折角出会った事だし、そこでちょっと遊んでかない?」


 このまま立ち話を続けるより何処か入ってついでに4人で遊ぼうかと、輝咲から言い出す。


「あたしは良いよ、ゴロちゃんどうしたい?」


「え?えーと…神明寺さん?」


 愛奈は誘いに乗り、五郎の方は突然加わって迷惑になるのではと思い弥一へと目を向ける。



「ダブルデート行こっか、ゴロちゃん♪」


 この日から弥一の五郎に対する呼び方が確定した瞬間だった。




「しゃー!ストライクー♪」


 愛奈が放った紫の玉が真っ直ぐ向かえば、10個立つピンを綺麗に倒しストライクを決めれば五郎の元へと向かいタッチを交わす。


 一行はボウリング場へとやってきて、弥一と輝咲。五郎と愛奈がそれぞれ組んでスコアを競い合うスタイルでボウリングを楽しむ。


「弥一君頼んだよー」


「はいはーい♪」


 弥一は軽めの青ボールを選び、左手で助走から投げればボールは鋭い回転を見せていく。


 まるで普段サッカーで弥一が得意とするカミソリのようなカーブを思わせる。



「あ」


 結果はカーブがかかり過ぎてコースを外れ、ガーターとなってしまい0点だった。


 神明寺弥一、ボウリングはあまり得意ではない様子。


「輝咲ちゃんごめんー!」


「大丈夫、カバーしっかりするからさ」


 弥一に代わり輝咲が黒いボールを手にすれば綺麗なフォームと共に放たれ、一直線にコースを進み10ピンを全部残らず倒し、弥一のミスを取り返してスペア獲得だ。


「あー!残っちゃった…!ごめんなさいー!」


 五郎もボウリングは得意ではないようでミスがあったものの弥一と比べればマシな方。



「無問題っとー!」


 勝負は五郎の分までピンを倒しまくり、ボウリング得意な愛奈が五郎とのペアで弥一と輝咲に勝利する。






「ダブルデートも良いもんだねー♪美味し〜♡」


 ボウリングを一通り満喫した4人はケーキが美味しいと評判の喫茶店でティータイムを楽しむ。


 弥一はショコラケーキのセットを注文、上品なチョコレートの甘さが紅茶との相性抜群で上品な香りと共に満足させてくれる。


「だからあの、デートという訳では…」


 顔を赤くさせながらボソボソと言いつつ五郎は甘さ控えめなチーズケーキを食べていた。


「そうだね、こうして皆で遊ぶというのもまた楽しいものだよ」


 輝咲はモンブランを味わいつつ、コーヒーを飲む。彼女の王子のような容姿でコーヒーカップを持つ姿は絵になっていた。


「んじゃ、記念に連絡先交換でもしとくー?」


 ボリュームあるミルクレープを既にぺろっと平らげた愛奈、弥一や輝咲と連絡先交換しようと申し出る。


「良いよ、教えるね」


「僕も良いよー♪あ、ゴロちゃんも交換しようよー」


「え、い…良いんですか?」


 輝咲と愛奈が互いの連絡先をスマホで登録していると弥一から五郎へと交換に誘い、五郎はまさかの申し出に驚いてしまう。


 まさか高校サッカー界の頂点から連絡先を交換しようと言われるとは全く思っていなかったからだ、断る理由は無いので五郎は弥一とスマホで連絡先を交換。



 会計を済ませ、店に出れば愛奈はスマホの時計で今の時刻に気付く。


「あ、ゴロちゃんそろそろ岐阜戻らなきゃ」


「そうですね、神明寺さん、笹川さん、今日はありがとうございました」


 共に遊んでくれた弥一、輝咲へと五郎は礼儀正しく頭を下げて礼を言う。


「うん、次は選手権の方で会おうねー、向こうの狼さんにもよろしく♪」


 次は選手権、その時は互いに敵同士の選手だ。明るく笑う弥一の居る立見を倒さない限り優勝は無い、五郎はキッと弥一の顔を見据えると。



「フィールドで立見と牙裏が会った時は…牙裏が勝ちますから!」


 立見と牙裏の試合、その時は勝つ。五郎はハッキリとそう言い切った。


「では、失礼しますー!」


「あ、おーい待ってよゴロちゃーん!」


 急ぎ足でその場を立ち去る五郎、愛奈も後を追いかけて2人は共に岐阜へと戻って行く。



「格好良いねー、ゴロちゃん。王者に対してあんな啖呵切って行っちゃうなんてさ」


「そんなつもりなかったんですけど…ああ、言っちゃったー…!」


 駅へと向かう途中の道で五郎は弥一に対して大胆な事を言ってしまったと、後悔し始めていた。

 相手は王者立見、その中で天才DFと言われる弥一。その彼に五郎は勝つと言い切る。


「良いじゃん、此処まで来たらハッタリだろうが本当に実現させちゃおうよ。立見ぶっ倒すって現実をさ!」


「は、はい…!」


 五郎の肩を抱き、自分の方へと寄せて歩く愛奈。五郎はこれにまた顔が赤くなってしまう。





「控えめな子かと思えば、結構思い切った所はあるみたいだね」


「良いねー、ゴロちゃん面白いじゃん♪」


 すっかり弥一の中で彼への呼び名が定着し、牙裏のメンバーを思い浮かべると狼騎、春樹と2人の人物が頭の中で浮かぶ。


 牙裏の要で10ー0の立役者となった彼ら、あの強さが選手権でも発揮してきたら立見、八重葉が中心となる事が予想される大会で台風の目となる可能性は充分だ。



 とりあえず今は2人となった輝咲とデートを楽しみたい、弥一は彼女と互いの手を恋人繋ぎすれば2人で並んで歩きデートの続きを楽しむのだった。




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 此処まで見ていただきありがとうございます。


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 弥一「昨日ねー、牙裏のこの前夏に会った控えGKの子と会ったんだよー」


 川田「あー、あの帽子被った?」


 弥一「彼女と一緒に東京来てたよ、あだ名ゴロちゃんって呼ばれてるみたい♪」


 田村「何!?あいつリア充だったのか!相手どんな子だ!?」


 弥一「金髪で身長高くて勝ち気な感じでしたねー」


 川田「人は見かけによらないか…ゴロちゃんやるな」


 田村「ああ、ゴロちゃん恐るべしだな!」


(立見でも広まるあだ名(主に弥一のせいで))

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