第323話 課題が残った練習試合
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「ユンが抜けた途端にこれかよ…!」
待望の1点が取れた事に喜び合う立見イレブンの横で頭を抱える福丸。
「おい、誰も神明寺への注意してなかったのか!?」
「気を付けていたつもりだけど…何か気付いたら居たって感じで…」
得点でもアシストでもないが今の攻撃に弥一が加わり得点されたのは確かだ。
彼らもプロユースの選手、1人の要注意人物を見逃すような真似はしてないつもりだが前線の1年に気を取られ過ぎたせいか誰も弥一には気付いていなかった。
こうなるとユンジェイの徹底マークが効いていたと思わざるを得ない、奇策ではあったが弥一に対してはあれだったのだと。
「攻めろ攻めろ、時間は無いぞ!」
練習試合とはいえ負けで終わりたくはない、横浜は急いでボールをセットしキックオフの時を待つ。
「左来るよ翔馬ー!明右行ってー!」
残り時間が少なく1点を返そうと攻撃に転じる横浜、エースのユンジェイを欠いているとはいえ能力に優れた選手達の集まり。
だがそれでも立見は、弥一は彼らを好きにはさせない。
「( くっそぉ!)」
中々攻め込む事が出来ない宮下は右手を上げ、ボールを要求すると送られたパスを受け取る。
そしてその場から遠い位置、ロングシュートでゴールを狙うも大門がほぼ正面でボールをキャッチした。
「ナイスディフェンス!皆その調子その調子ー!」
後ろから声をかけながら大門はパントキックで高くボールを蹴り上げる。
夕焼けに染まりつつある空へと球が舞った時、審判の笛が鳴った。
試合終了の笛、立見が1ー0で逃げ切り練習試合とはいえプロユースの横浜相手に白星を得られた。
立見1ー0横浜
石田1
「ふー、お疲れー!」
「さっすがプロユースの守備は厚かったなぁー、もっと動いて翻弄すれば良かったかな?」
「あんま釣られず付いてきたからねぇ、難しい相手だけど付け入る隙としては…」
今日の試合について振り返りつつ氷神兄弟の2人は会話し、何処が悪かったかを話し合っていた。
勝利は収められたが1ー0と接戦であり、守りの強い強豪を相手にどう戦うかの課題は残る。
それを秋から始まる選手権予選までにはクリアしたい所だ。
「皆さんお疲れ様でーす!」
鞠奈は選手達へと他のマネージャーと共にタオルやドリンクを配って忙しく動く。
この分だと弥一への密着動画どころではなさそうだった。
「おーい、お前らー」
「あ、タツさんお疲れでーす♪」
「今日はありがとうございました」
弥一、大門、優也の3人がそれぞれ話しているとそこに辰羅川が声をかけて来る。
「いやいや、こっちも良い勉強させてもらったよ。そのお礼って訳じゃねぇがこれから飯でもどうだ?焼肉奢るからさ」
「マジで!?やった焼肉焼肉ー♪」
「食い放題の所だからな!?」
焼肉を奢ってもらえるとなって楽しみな弥一に場所はそこだと辰羅川は念の為伝えておく。
食べ放題でなければ彼の財布が持たない。
試合後の挨拶もそこそこにして解散すると辰羅川は弥一、大門、優也とUー19で共に戦った代表メンバーと焼肉食べ放題の店へとやって来る。
セルフサービスの店であり焼肉以外にもサイドメニューが充実していて様々な味が楽しめる人気のチェーン店だ。
美味しく味わおうと弥一は食べたいと思った肉を取っていき、カルビやハラミにロース等を確保する中でご飯も持っていく事を忘れない。
米と肉は最高に美味しく食べられる組み合わせだ。
肉の焼ける音や匂いが五感を刺激し、食欲は唆られるばかりだが肉が焼けるまでまだ食べられない。
待ち切れないという思いを必死で堪える弥一は焼ける時を待っていた。
その時が来れば弥一は焼けたカルビを素早くトングで取って皿に乗せる、そして焼けた肉を食べてその後に白飯も口にした。
「最高過ぎ〜♡この世の贅沢〜♡」
肉と米が合わさった極上な味、試合後で空腹という最高のスパイスも合わさり弥一を幸福の世界へと誘うのは容易い。
「あの韓国人見てからずっと焼肉食べたかったからねー、試合中も食べたかったし!」
「さっきの試合中そういうの考えてたのかよ?」
「まあそれは噓だけどー」
「ああそうかい…」
相変わらずマイペースな奴だと辰羅川は軽く息を吐きつつ自らも焼けたハラミを味わって食す。
「そういやそっちの、立見の大将さんは大丈夫だったか?」
「まだ連絡は無いですね、自分で病院へ念の為向かっていましたけど…」
肉をレタスで巻いて食べるスタイルで焼肉を味わいつつ、優也は病院へと行った間宮に関する情報はまだないと伝える。
ユンジェイと激しくぶつかり合い頭での接触があって頭を抑え、病院で精密検査を受けているので詳しい事は明日以降に明らかとなるはずだ。
「ユンジェイの方は大丈夫ですか?あっちも担架で運ばれて行きましたけど…」
「あっちは誰かさんに目を回されて気分悪そうにしてたけど、まあ試合後には目を覚ましてそいつへの恨み言が止まらなかったし大丈夫だろ」
この中で一番ご飯の盛りが多く石焼きビビンバやクッパと大量の飯を食う大門、ユンジェイのその後について心配になったか聞いてきた。
辰羅川の視線が弥一へと向けば優也、大門の目も同じように向く。
目を回されたユンジェイは相当弥一に対して敵意を持ち、根に持った様子だったが弥一は気にせず目の前のロースをご飯と共に美味しく味わう。
「しかしまあユンもそうだけど、うちは思ったよりも連携が悪かったな…今回横浜が立見と練習試合をやらせた理由がなんとなく分かった気がするわ」
網に肉を次々と乗せて焼きながら辰羅川は今回の試合について語る。
横浜の守備陣がしっかり連携を取れてくれたおかげで立見の攻撃は途中までほぼ完璧に抑えた、だが攻撃の方がバラバラでカウンターを活かしきれない場面が多い。
攻撃の要であるユンジェイが弥一を抑えに行ってそれで攻撃の枚数が足りず追撃しづらかったというのも大きかったかもしれない。
「ほら、立見は何かと皆仲が良いだろ。あんま喧嘩とかも無いんじゃねぇ?」
「これでも一時はそこの弥一と間宮先輩が喧嘩になりかけた事はありましたけどね」
「弥一があの立見の大将と?何か怒らせるような事でも言ったんじゃねぇか…?無意識でさ」
立見の方で過去に喧嘩が起こりかけたと優也の言葉が気になった辰羅川、仲良さそうな立見が意外だと思える出来事だ。
1年くらい前の春はまだ弥一の事を認めていなかった間宮は弥一に突っかかる事もあった、血の気が多く喧嘩っ早い性格に加えて年下の小さい同じポジションの後輩に舐められたくないというのもあったかもしれない。
「まあ、あの人はツンデレで可愛い所ありますから♪」
「あはは…間宮先輩には絶対聞かせられないなそれ…」
大門が苦笑する横で弥一は優也の食べ方を見て美味しそうに見えたのか、同じように肉をレタスで巻いて食べるスタイルで美味しく味わっていた。
「っくしゅん!!」
同じ頃、都内の病院で精密検査を受ける間宮はその待合室で突然のくしゃみに襲われていた。
「あら、間宮君風邪?念の為に熱の方も測っておきましょうか。体温計持って来るね」
「あ、いえ…大丈夫ス」
「駄目駄目、風邪は万病の元よ?放っておいて手遅れになる前に診ないと」
くしゃみを看護婦に見られ、この後で熱があるかどうか診てもらう事まで上乗せされて間宮は小さくため息をついた。
「(くっそ…誰か噂でもしてんのか?悪口とかじゃねぇだろうな…)」
鼻をすすりつつ間宮は今日の1日の半分ぐらいを病院で過ごす。
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影山「まあ彼が素直じゃない所はあるね、長い付き合いの幼馴染から見ても」
田村「これが女のツンデレだったらすっげー可愛いんだけどなぁ、間宮とか野郎だとそうならねぇわ」
影山「今の彼女もツンデレだったりするのかな?」
田村「いや、そうじゃねぇけど俺の彼女はマジ可愛い、天使、最高」
影山「はいはいごちそうさま〜…」
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