第313話 動画配信者との出会い
※登場する人物や学校やクラブなどは全て架空であり実在とは一切関係ありません。
「皆ー、元気にレベルアップしてるぅ〜?今日も始まったよレベルアゲアゲチャンネルー☆皆のアイドルマリーが今日もレベル上げちゃうねー!」
PC画面の動画でテンション高い茶髪で巻き髪の女子がウインクしてギャルピースで挨拶、年齢は高校生ぐらいだ。
流行り物のブランドの服、肩出しのちょっとした露出で自らの魅力を活かしつつ動画向けのファッションで身を包み世の中へとこの姿を見せていく。
彼女は人気の動画サイト、JTube(ジェイチューブ)の女性動画クリエイターであり若いながらファンを獲得していき徐々に知名度を上げていた。
動画クリエイター、またの名をJTuberだ。
「皆のおかげでまた1つレベルアップー♪この動画が面白いとなったらチャンネル登録と☆を送って高評価よろしくぅ!皆の手でこのチャンネルをレベルアップさせてねー♪」
「はあ…」
溜息をつきながら自宅のPCでJTuberマリーの動画を編集、自室にPCでの作業音が響いてそれが自然とBGMを奏でていく。
動画の時とはテンションがまるで違うマリー本人、普段からハイテンションではなく彼女は浮かない顔で何時もの動画編集をしていた。
「再生回数伸びないなぁ…チャンネル登録や高評価も何か伸び悩んでるし…」
最近マリーが出す動画は今ひとつ伸びていない、オリジナルゲームを考案してそれを動画に出しているのだがあまりウケてはいなかったらしい。
「また大食いした方が良いのか、でもあんま連発したら太る…いっそ激辛?それで苦しむ姿お届け…いや、あたし激辛大の苦手だしなぁ…」
マリーはどういう企画が再生回数伸びるのか必死に頭を働かせていた。
どういうのなら皆見てくれるのか、その時1つのアイデアが出て来る。
「あ、そうそう…あの子が居たっけ。確か結構今サッカー界でアツい子だよねぇ…?」
マリーは現役の高校生、そして普段はその姿を変えて登校していた。
眼鏡をかけて髪もブラシで入念にとかし長い髪を後ろで1つに纏めて地味めにセットし、自らを目立たない女子生徒へとカスタマイズさせる。
これでも自分はそれなりに人気のあるJTuber、変装は欠かさない。
彼女は同じ学校に通うターゲットへの接触を図ろうとしている、その為に此処最近の行動は欠かさずチェック。
幸運な事にターゲットとは同じ学年でクラスメイト、勉強しつつも普段の姿を観察出来る。
とりあえず分かった事は外国語の授業だけ独壇場であり他の科目はほとんど苦手、特に歴史や古典が駄目そうだった。
そして昼休み、ターゲットは真っ先に購買部へと真っ先に駆け込んでじっくり品定めしてから今日食べるパンかおにぎり、または弁当を決めて買う。
その後に同じサッカー部の仲間と外の大きな樹の下で一緒に昼を食べるのが昼のルーティンらしい。
この時幸せそうにご飯を食べる姿は今高校サッカー界で注目されている者にはとても見えなかった。
「(よし、話せるタイミングは購買部を行き来する時)」
観察していたマリー、変装でかけていた眼鏡の奥の瞳が光る。
決行は早い方が良い、翌日に彼女は普段通りに学校で過ごしチャンスを待つ。
そして迎えた昼休憩を知らせるチャイム、それが鳴ってターゲットが席を立った時にマリーも動き出した。
「神明寺君、歩きながら話良いかな?」
「え?うん、良いよー」
弥一が何時も通り昼休憩で購買部へと向かうと同じクラスの眼鏡をかけた女子が話しかけて来た。
確かクラスで1、2を争う優秀な成績を誇っていて名前が姉坂鞠奈(あねさか まりな)と弥一の中でそう記憶している。
並んで歩く弥一より背が高く身長は165ぐらいといった所だ。
「あのね、神明寺君は…えっと、JTubeって観てる?」
「JTube?勿論だよー、シューターズとか大好きでチャンネル登録してるし♪」
「へえ…シューターズ大好きなんだね、うん分かる。彼ら面白いからね」
自分の好きなJTuberについて答えて行けば鞠奈は頷き彼の話を聞いていた。
上手く動画の話へと持っていく事が出来てから彼女の方からそれはいきなり切り出される。
「実は私も…JTuberなんだよね」
「え?」
鞠奈がそうだと聞かされると弥一は思わず立ち止まり彼女の方を見た。
これで関心を引き寄せたと鞠奈は内心でニヤリと笑う、こんな地味な外見した自分が実は動画配信者となれば誰だって驚く。
学校では姉坂鞠奈として、動画ではマリーとして彼女はそれぞれ2つの顔を持つ。
「ほら…レベルアゲアゲチャンネルでマリーの名をやっててね…知らない?」
鞠奈は弥一の前で少し眼鏡を上へとずらし自分の顔を見せる。
彼女のファンならば推しのアイドルが急に来たと驚いてしまうだろうが、弥一は彼女の素顔を見ると。
「レベルアゲアゲチャンネル?ごめん、見た事無い〜」
弥一の記憶の中でその名前のチャンネルは無いらしく、知らないと言われれば鞠奈は苦笑。
「あははは…シューターズと比べたら私なんて天と地だからね…」
弥一と話しつつ鞠奈の中に居るマリーはこれを聞いて穏やかではいられなかった。
「(そりゃ天下のシューターズと比べてうちのチャンネルまだまだだけど、それなりに人気あるっての!名前ぐらい聞いてて良いじゃん!シューターズしか眼中無いタイプなの目の前のショタっ子は!?)」
マリーの方で一通り不満を吐き終えて改めて鞠奈は弥一へと向き直る。
「あの、それで神明寺君。今回はそのマリーとして君に頼みたい事があるんだけど…」
本来の目的、それを果たそうと鞠奈は弥一の目を見て言葉を続けた。
「君の密着動画を撮らせてほしいの!」
「密着動画?」
鞠奈の頼みたい事が密着動画、弥一はそれを聞いて首を傾げる。
「私も動画一応やってるし、折角同じ立見に居るから神明寺君の魅力だったり立見の良さをもっと世の中に伝えて行ければなぁって」
「つまり部活とかそういう所も一緒に来るって事ー?」
「流石に家の前とかそこまでは密着しないよ!あくまで学校内だけだから…!」
24時間密着する訳では無い、プライベートな空間まで入るつもりは無いと安心させるように鞠奈は伝えていく。
「良いよ、分かったー」
「本当!?ありがとう…!」
弥一からOKの返事を貰い、鞠奈はパァっと顔を明るくさせて笑顔になる。
内心のマリーは「(イエー!これでチャンネル登録増えまくり高評価貰いまくり超レベルアゲアゲチャンスキター!)」と大騒ぎしていたが。
「じゃ、マネージャーとしての体験入部あるかどうか聞いておくからー♪」
「…へ?」
「だって部外者は部活の密着とか出来ないからねー」
弥一の次の言葉に鞠奈は喜びから呆気にとられていた。
部活の密着はすると言ったがマネージャーとしての仕事をするとは言っていない。
(「あれ?何か…密着レポーター系のはずが体を張る系になりそう…!?)」
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鞠奈「何か変な事になりつつあるけど密着動画撮れるんだったらマネージャーの仕事やってみせるから!」
マリー「(そんでもって動画人気鰻登りってねー!)」
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